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「(番外編3)アンテルシテ」2019年10月(パリ~ルーアン往復・パリ~ドーヴィル往復):「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」第18話

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見出し画像:ルーアン=リヴ=ドロワ駅構内。

*本文中に、写真はありません。
*駅や列車の設備、システムなどは、ひんぱんに変更されます。
記述内容は、あくまでも乗車当時のものであることをご理解ください。
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この年、バスク地方からパリに戻ったあと、私はふたつの都市を日帰り旅行した。
ルーアンとドーヴィルである。

フランス北部の都市ルーアンは、ご存じの方も多いだろう。
印象派の画家モネが連作を描いたことで知られるルーアン大聖堂をはじめとする、見どころいっぱいの町だ。

ドーヴィルは、フランス北西部の海岸沿いにある高級リゾート地で、クロード・ルルーシュ監督のフランス映画『男と女』の舞台になった町である。

どちらも、以前からずっと行きたい都市だった。
それにもかかわらず、あとまわしにしていたのには理由がある。
ルーアンにもドーヴィルにも、TGVが通っていないのだ。

だが、これらの町にも特急列車は止まる。
アンテルシテと呼ばれる列車で、英語ではインターシティ、つまり都市間列車という意味だ。

このアンテルシテにぜひとも乗ってみたい、という気持ちはなかった。
1等席はあるものの、列車の位置づけからして、TGVほど快適でないことはあきらかだからだ。

しかし、何事も経験である。

ところが実際に、私はアンテルシテに乗らなければできなかったであろう経験をした。
それは、おそらくTGVではできない貴重な経験だった。

率直にいおう。

どうやら私は、アンテルシテと相性が悪いらしい。
いまのところ、もう一度乗りたいという気分にならないのだ。

ルーアンとドーヴィルへ行ったとき、それぞれ行きの列車で、私は驚くような出来事に遭遇した。

しかし、驚いていたのはどうやら私だけのようで、ほかの乗客たちはみな平然としていたのである。

そのことも、私には不可解だった。

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