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「停電のため運休します」2015年10月(パリ~コルマール往復):「TGV(フランス高速鉄道)乗車記録」第11話

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見出し画像:コルマール駅。これを撮影しているとき、まったく予期せぬ事態が起きていた。

*本文中に、写真はありません。
*駅や列車の設備、システムなどは、ひんぱんに変更されます。
記述内容は、あくまでも乗車当時のものであることをご理解ください。
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冬のような寒さだった。

私は上着の襟を手で合わせながら、コルマール駅前の公園を急ぎ足で歩いていた。
これから『イーゼンハイムの祭壇画』に会いに行くのだ。

16世紀ドイツの画家グリューネヴァルトの傑作であるこの祭壇画は、フランス北東部の町コルマールのウンターリンデン美術館にある。

しかし、現在この美術館は改修工事のために休館中だ。
そのあいだ、『イーゼンハイムの祭壇画』は、近くのドミニカン教会で展示されているという。

美術館に入れないのは残念だが、おもな目的はこの祭壇画なので構わない。
いずれまた、美術館には来ることができるだろう。

コルマールは、第3話で語ったストラスブールの南に位置する町で、ストラスブールからTER(在来線)で約40分の場所にある。
だが、私は乗りかえが好きではない。列車1本で行けるなら、それで行きたいのだ。

フランス国鉄のサイトで検索すると、わずかながらパリとコルマールを結ぶTGVがあった。
所要時間は、2時間50分である。

行きは、パリ東駅6時55分発。コルマール駅9時45分着。
帰りは、コルマール駅16時14分発。パリ東駅19時05分着。

日帰りで行くには、この列車しかない。
だから私は、この列車の乗車券を買った。

ところが、帰りの列車が停電で運休してしまったのである。

***

パリ東駅6時55分発の列車に乗るには、かなり気合がいる。
私は、パリ東駅があるエリアから離れた場所のホテルに泊まっていた。
余裕をもって駅に到着したかったので、ホテルを5時半過ぎに出た。

駅に着いたとき、構内のパン屋はまだ開いていなかった。
発車案内板で、これから乗るTGVが定刻どおりに出発する予定であることを確認する。
しばらくするとパン屋が開いたので、列車のなかで食べるためのチョコレートパンを買った。

発車案内板の前で、コルマール行きの列車が出るホーム番号が表示されるのを待つ。
通常どおり、出発時刻まであと20分というときに、番号が表示された。

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