天使

一歳半前に姉が、あかちゃんを授かり、とうとうおばさんと言われる立場を迎えてしまった。
その頃から家族の様子がおかしい。
寡黙だった祖父は、姪の顔を見るたびに鼻の下を伸ばす。
お節介な祖母も、すぐにニタニタする。
私の母も、久々に会った恋人を抱きしめるようにもの凄い引力でだきしめている。

私の知っていた家族はどこにいったのだろうか。
さてはて、うちの家族はこんな気持ち悪い笑みを浮かべたことがあっただろうか?
鼻の下を2倍にも3倍にも伸ばして、
デレンデレンになったことが今まであっただろうか?
当たり前のようにあかちゃん言葉を使って会話したことがあっただろうか?
…どうやら、うちの家族は変態と化したようだ。
姪っ子に変態にさせる何かがあるのかもしれない。この姪っ子は小悪魔あかちゃんのようだ。

今年の3月頃まで地元ではないところで過ごしていた。ひょんなことで、私も地元に出戻りをした。
案の定姪っ子と会う機会も増えた。
姪はよく笑うし、よく食べるし、よく寝る。
お風呂にも嬉しそうに入るし、うんちをしたら教えてくれることもある。
気づけば週のほとんど、姪のいる家に遊びに行った。
本が大好きで、アンパンマンが大好き。
NHKの教育番組を見ながら、見様見真似で下手なダンスを踊る。
「か、か、か、可愛い…なんだこの生き物は?!?!?!」
気づけば姪の虜になっていた。
だが、変態にはなるまい。あかちゃん言葉を使うまい。しょーもないことを話しかけるまい。
そんなふうに思い、変態とは一線を越えずにいた。
最近、お昼寝の寝かしつけで寝てくれる。
抱っこをするととても嬉しそう。
「姪っ子ってこんな可愛いんだね」
そう、姉に言うと、
「名無しも話しかけてるもんねずっと」
と言われた。
…どうやら無意識に、あかちゃん言葉を使っていたようだ。
ようこそ変態の街へ。

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