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中小企業診断士登録までの道〜実務従事で残り10ポイント稼ぐ《第4話》

2023年2月に中小企業診断士 実務補習を受け、資格登録に必要な15ポイントのうち5ポイントを獲得したところまでが本連載の第3話までの話です。

本記事では、残り10ポイントを実務補習ではなく実務従事でゲットした取り組みについて振り返ります。

実務従事には大きく3種類ある

そもそも、実務従事とはなんぞやというところについて触れておきます。
詳細は、中小企業庁が出している『Q&A 申請書、証明書等の作成要領』(PDFファイル)のQ3〜Q6 をお読みください。これが公式情報になります。

もう少しかいつまんでまとめると、実務従事は大きく以下の3つに分類できます。

1) 自分が勤める会社の業務として、中小企業の診断を行う

これは、会社員の方が対象です。本業の中で実務従事を兼ねてしまうという、自腹での金銭負担なく、仕事を休むこともなくポイントゲット可能な、実現できれば一番楽(かもしれない)パターンになります。

⑧中小企業に勤務し経営者からの指示で行う自社に対する診断助言業務、ただし所属部門のルーティンワークを除く
⑨金融機関や大企業等に所属し、取引先等中小企業者に対して行う診断助言業務

https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/qanndasakusei.pdf

⑧のとおり、勤務先自体が中小企業であり、自社に対して経営診断・助言を行った場合は、社長さんに「様式第19:診断助言業務実績証明書」に記入・捺印してもらうことになります。ただし、自分自身が経営者の場合はこの方法は使えません。

⑨にあるように、勤務先のお取引先が中小企業の場合は、仕事として診断・助言したことを実務従事とすることができます。この場合は、お取引先ではなく、勤務先の社長さんや支店長さんに「様式第18:診断助言業務実績証明書」に記入・捺印してもらうことで証明となります。ただし、自分自身が社長や支店長などの場合は、自分自身での証明は不可なので、⑧同様お取引先に「様式第19」を書いてもらうことになります。

文面に記載の通り、たしかに金融機関やコンサルティング会社にお勤めの方がこの方法でポイントを得ている印象が強いです。特に、金融機関は中小企業診断士取得を奨励しているところが多く、上長の協力も得やすいと思われます。

理論政策更新研修を受けた時にもらった書類に企業内での診断活動例が記載されていました。

2) 民間企業が開催している実務従事に参加する(有償)

2つ目は、民間企業が開催する実務従事に申し込むという方法です。診断協会開催の実務補習の受け入れ可能人数が少ないので、最近は民間主催の実務従事を利用する人も多いようです。

ちょうど2次試験の合格発表があるくらいのタイミングで、中小企業診断士を抱える民間のコンサルティング事務所などが独自で実務従事の募集を行ったりしています。こういった情報は自分から取りに行かないとなかなか勝手には入ってこないので、敏感にアンテナを張っておく必要があります。SNSで告知されていたり、受験支援団体・コミュニティで情報発信されていることもありますが、「中小企業診断士 実務従事 (地域名)」でGoogle検索するのが手っ取り早いと思います。

金額・開催日・内容は主催者により様々なようです。平日を含むものもありますが、土日だけで対応できるコースもあるようなので、お仕事を休みづらい方はこのパターンを検討してみてはいかがでしょう。
また、2023年2月時点で私が調べた限りでは、Zoomなどを利用しオンラインでの参加ができるコースを提供している企業もありました。育児介護その他で長時間の外出が難しい方や、地方在住の方にはありがたい取り組みだと思いますので、ぜひ探してみてください。

デメリットとしては、

  • 開催している企業・地域がそれほど多くなく、開催情報のキャッチアップが難しい

  • 実務補習より金額が高いものもある

  • 満足度の当たり外れが多いらしい

といったところです。私は利用していないので噂レベルで耳にした程度のふわっとした情報しか提供できず申し訳ないのですが、気になる方はいろいろ調べてみてください。

3) 自分で診断先中小企業を見つけて診断・助言を行う

これは、既に中小企業の経営者さんと何らかの形でコネクションがある方におすすめです。とにかくいろんな方に声をかけて、「経営診断させてください、それで書類にハンコ押してください」とお願いするという、一番泥くさい方法です。

私は、10ポイントをこの方法でゲットしました。私はフリーランスでWeb制作事務所をやっている身です。お取引先様はほぼ100%が中小企業。Webサイトの保守や運用等の顧問契約も数社ありますので、そのお客様を中心に、5社程度に協力をいただきました。
私は「お金はいらないので協力してください」とお願いしたので、全て無報酬でした。ただし、実務従事の報酬についての規定はとくにありませんので、診断先から報酬をいただくも自由、逆に謝礼をお支払いして診断させてもらうのも自由です。金銭トラブルにならないようにだけご注意ください。

自前で実務従事を行う場合、実際に何を行うかという決まったカリキュラムは一切ありません。極端な話、中小企業庁的には当然NGではありますが、ただ書類に署名捺印さえいただければポイントはゲットできてしまいます。何をするかは自分で考える必要があります。

デメリットとしては

  • 経営者さんとお話をする経験がこれまで全く無かったという方には正直おすすめはできない

  • 指導を受けるわけではないので、学びとしては少ないかもしれない

  • 診断士のコネクションとしては広がらない

  • そもそも診断先のあてがないと無理

といったところです。私も本当は時間的な余裕があれば、実務補習や民間企業の実務従事に参加したかったですね。ただ、育児中ですと長時間・複数日程拘束されるのがかなり厳しいので、そこは割り切って無理せずさっさと資格登録を優先する方を選びました。

一般的にイメージされるような会社社長に限らず、町の小さなお店をやっているような個人事業主やフリーランスも中小企業に含まれますので(※1次試験受けた方なら、中小企業の定義答えられますよね??)、お知り合いにそういう方がいるよって方は検討してみてください。

以上、1〜3のパターンをご紹介しました。
これから資格取得を目指す方は、

  • 開催地域(特に地方在住の方)

  • かかるお金

  • どの程度平日仕事を休めるか、土日に家を空けられるか

  • 診断先のあてがあるか

を総合的に判断して、どういう組み合わせで15ポイントを取るのかを検討してください。2次試験合格直後はバタバタしますので、可能であれば早めにイメージしておくとよいです。私は、そもそも中小企業診断士試験に興味を持った時に、合格後のことも少しだけですが調べてから勉強をスタートしました。まだ勉強を始めてない方や、学習開始して間もない方は、あえてまだ試験まで余裕のある時期にこういった情報収集もしておくことをおすすめします。2次試験を受けられた方も、長い長い結果待ちの期間に合格後の動きについて調べておくのはただ無駄にやきもきするよりは有益で、今年の合否にかかわらず必ず役に立つと思います!

私が実務従事でやったこと

経営者さんにアポを取る

試験合格後、何社かのお取引先さんに「実は中小企業診断士試験に受かりました」というメールをしました。特に、顧問契約を結んでいるお客様と、付き合いは長いけど最近はあまり案件としては動きがなくて、しばしご無沙汰になっているような方を中心にお声掛けしました。

お客様とのアポは、すべて平日昼間、通常の業務時間の中で取りました。これはフリーランスの特権ですね。子供が保育園に行っている平日の日中が一番自由に動けますので。

顧問契約のお客様は、通常のサポートの延長として訪問し、Web以外の経営上のお話を伺いました。
最近ご無沙汰のお客様とは、どっちかというと診断を理由に「久しぶりに会いましょうー」っていうようなノリですね。令和元年に第1子妊娠→出産後すぐコロナ禍で私自身もまる4年全然外に出ていなかったので、お互いの生存確認みたいになったお客様もいらっしゃいました。

経営全般のお悩みを自由に話してもらう

どちらの場合も、特に事前に何をするかは決めずに、その場で出てきた経営上のお悩みにフリーでお答えする、その場で答えが出ないものは持ち帰って後日回答する、というような形で対応しました。
あらかじめ、当日は以下をお持ちいただくようにだけはお伝えしました。

  • 法人代表者印

  • 会社経営に関する課題、お悩みごと

  • 財務関係の話が絡む場合は、直近3期分程度の財務諸表、税務申告書

普段、私はあくまでWebの専門家という立場で接しているので、お客様からいただくご相談もその範囲に限られたものがほとんどでした。しかし今回、経営全般の相談を受け付けるという立場でお話しをしたところ、いままでのお付き合いではなかなか出てこなかったような深い話がいろいろと出てきました。具体的なことはあまり書けませんが、例えば事業承継の話とか、会社が抱える負債の話とか、税理士や金融機関との付き合いの難しさの話とか、Web制作会社として接しているだけではおよそ出てくることはないような話題が多かったです。
10年以上お付き合いをしていて、決算書を初めて見せていただいたお客様もいます。意外と儲かっているとか、思ってた以上に儲かってないとか、そのあたりは様々ではありますが、「Web屋」としてのお付き合いからひとつ壁を破れた実感があります。改めて中小企業診断士に受かってよかったなと感じたのでした。

なお、実務補習のように「経営診断書」を作って提出する、というようなところまではしていません。もちろんそこまでやれればベストではありますが、要件としては必須ではないので、そのあたりは自己判断で。

今後につなげる

今回の訪問で一番意識したのは、「今後につなげる」ということです。今までは、「野村さんにはWebのことしか相談できない」とか「関係ないこと相談したら申し訳ない」と思われていたかもしれませんが、今後は「経営全般のことも相談していいんだ」と社長さんに思ってもらえればいいな、という想いがありました。

これまでの経験で、お客様企業で何らかの施策をやる際に、私でも分かることなのに専門外だと思って相談してもらえなかったこととか、そもそも対応できる人材として私のことが思い浮かばず他社に入られ、知らない間に施策が進んでいて、後出しでWebの方にも反映してほしいと言われて困ったことがありました。今後、何でも「とりあえず野村さんに聞いとくか」って思ってもらえるように、資格取得したことをなるべく公言するつもりでいます。

「様式第19」に押印を受ける

最後に、中小企業庁のWebサイトからダウンロードできる「様式第19:診断助言業務実績証明書」に、代表者さんから捺印をいただきます。
この書式、実は前述した『Q&A 申請書、証明書等の作成要領』(PDFファイル)内に書き方の説明があるのですが、とても分かりづらいです…。

「様式第19」の書き方については、東京都中小企業診断士協会 中央支部が公開している『実務従事ポイント獲得虎の巻2022』内の図が参考になりました。

診断実施日が複数にまたがる場合、実際に従事した日を余白に記入するというのはわかりづらかったので、図があるのはとても参考になりました。

Q5.診断助言業務績証明書等の作成方法等について教えてください。
(中略)
実績証明書作成にあたっては、証明書の実施年月日欄に、登録の有効期間内で最初に診断助言した日を開始日欄に、最後に診断助言した日を終了日欄に記入し、実施日数の合計を実施日数欄に記入してください。
そして、証明書の余白等に全ての実施日を記入し、実績証明書の証明日が「終了日」以降であることを確認してください。

https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/qanndasakusei.pdf

特に複数の企業を診断し、実施年月日の「開始日」と「終了日」がかぶっている場合、同じ日に2社に対して診断を行った場合はどちらか片方しかポイントになりません。中小企業庁では、この欄外の実施日をもとに診断日が重複していないことを確認しているっぽいので、忘れずに記入するようにしましょう。

また、代表者さんに押してもらう印鑑は、社名の角印ではなく「代表者の個人印」にするようにとのことです。

Q6.診断助言業務績証明書等の証明は、誰がすれば良いか教えてください。
A6-1.診断助言業務実績証明書(様式第18)を発行する者が、企業等の場合は代表者の代表印(朱印)、公的機関の場合はその長の公印(朱印)による証明としてください。
(中略)
A6-2.診断助言業務実績証明書(様式第19)を診断助言先中小企業等から発行してもらう場合は、基本的にその企業等の代表者印(朱印)とし、個人事業主の場合は実印、銀行印、または認印(浸透印を含むゴム印を除く)の朱印としてください。

https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/qanndasakusei.pdf

法人の場合、社長さんに「ハンコを持ってきてください」とだけお願いしておくと、角印とゴム印しか持ってないというケースも結構あるので、個人印も必要ですというのを事前に伝えておくと良いと思います。
※ただし、これを知らずに角印で提出したものも1枚あるのですが、特に差し戻しなく受理されました。

個人事業の場合、屋号のない方もいらっしゃると思います。この場合は個人名+業種を併記するようにとのことです。

A5-3.個人事業主を対象に診断助言を行い、様式18や様式19に記載する場合は、屋号を記載するか個人名を記載する場合は業種を併せて記載してください。

https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/download/qanndasakusei.pdf

以上、社長さんに書類を書いてもらう際にはご注意ください。

最後に、「5年後にもまたこれと同じの書いてくださいねー」とお願いして締めくくりです。おそらく、「5年後までつぶれてなかったらねー」というジョークだかリアルだか分からない返しをしてくる社長さんが複数いらっしゃることでしょう(笑)

中小企業庁に新規登録申請!

そんなこんなで、2月下旬〜6月上旬の間に5社×2日(平均)=10ポイントをかき集め、6/13に中小企業庁宛に登録申請を提出しました。

新規登録申請に必要なもの

  • 中小企業診断士登録申請書(様式第1、原本)
    中小企業庁のサイトからダウンロード・印刷して記入します。特に難しいことはありません。

  • 1次試験と2次試験の合格証書(原本)
    とてもとても手放すのが惜しいですね…。でも原本の提出が必須なので、コピーを取りました。

  • 実務補習修了証書、実務従事の実績証明書(原本)
    前回・今回の記事でゲットしたものです。さすがにこれらはまいっかーと思ってコピーを取っていません。

  • 住民票の写し
    意外とこれ忘れがちで、用意するのが面倒なんですね。コンビニで取得できる自治体もありますが、名古屋市はまだ対応していません…(ただ、地下鉄の駅で対応できたりはします)。なので早めに手配しておくと良いです。

詳細は中小企業庁のページを確認してください。

上記の書類を、耳を揃えて封筒につめつめし、特定記録で中小企業庁宛に送付しました。

提出後、特に不備がなければ翌々月の頭に登録されます。私は6月に提出したので、8月1日付けでの登録となりました。

登録の第一報は、たいてい毎月1日(1日が土日の場合は月曜日)に中小企業庁のサイトに掲載されます。ここで、まずは無事登録された旨と登録番号を知ることになります。

登録証は、その数日後に簡易書留で送られてきます。なくさないように大切にしましょう。

以上、実務従事を経て中小企業診断士登録完了までの振り返りでした。

まとめ: 合格後は主体的に動こう

実務補習・自力での実務従事の両方を経験しての感想として、他の方もよく言われていると思いますが、「5日間を1回でいいから、実務補習は受けたほうがよい」ということです。難しければ民間の実務従事でもやむなしですが、現役の中小企業診断士とのコネクションがまったく無い場合、15日全部を自力での実務従事で済ませてしまうのは今後の活動を考えるとかなりもったいない気がします。

実務補習のメリットとして、同期とのつながりができるのももちろんですが、指導員の先生とのコネクションができるのが一番大きいと個人的には思っています。
中小企業診断士資格保有者の中には、協会に入らず、特に目立った診断士活動をしていない人もいます。しかし指導員をやっているような方は、少なくとも協会に数年以上所属していて活動実績もあり、診断先企業を用意できる程度の顧客や人脈を確実に持っており、さらに後進の育成に意欲を持っている方です。今後ぜひ頼りたい存在です。

試験合格しても、資格登録しても、ただ待っているだけではどこかから声がかかったり、案件を紹介されたりということは一切ありません。自分からコネクションを作ったり、情報を入手するための動きを取らなければ、何も起こりません。
受験生時代に資格予備校や受験支援コミュニティ等で既に人脈を構築できている人もいるかもしれませんが、私のように書籍や通信講座のみで独学していた場合は、そういうのが全くない状態でのスタートになります。せっかく取得した資格を活かしたいなら、どう動くかを常に自分で考えていかないといけないな、というのは現在進行系で痛感しています。

ここまでで、マガジンのタイトルである「中小企業診断士試験合格から登録まで振り返り」については終わりになりますが、あと1本、資格登録後に県の中小企業診断士協会に入会した話を付け加えて、連載の締めとしたいと思います。

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