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誰に何をどのように+売上高分解【診断士2次事例Ⅱ】1年目受験生の取り組み例《第15話》

中小企業診断士試験 2次試験の事例1〜3をギリギリ60点ちょいで合格した、時間のない1年目受験生の取り組み例、今回は事例Ⅱのお話です。
高得点合格者の体験談もそれはそれで有益ですが、もっと当落線上に近い位置にいた、手の届きやすいロールモデルとしてご活用ください。

事例Ⅱは主にマーケティングが軸になります。
事例ⅢとかⅣに苦手意識を持つ人は結構いる印象ですが、私の観測範囲では「事例Ⅱ、苦手なんですよね〜」って言う人を見かけたことがありません。
ほかの事例に比べて比較的イメージしやすい領域で、解答も書くだけなら「なんとなく書けてしまう」ので、苦手意識が出にくいのだと思います。

しかし!
書けたつもりで、手ごたえはあったのに意外と点数が伸びなかった!というのも「事例Ⅱあるある」なのです。

私自身も何度か過去問を解いてみて、事例Ⅱについては枝葉の知識でなんとかしようとする傾向があることに気付き、もっと幹となる考え方をちゃんと整理しておいた方がよいな…と感じた経験があります。

この記事では、具体的にどういう形で考え方を整理したのかを紹介します。

「戦略的マーケティング」の全体像を整理する

知識の整理のために、事例Ⅱはファイナルペーパーを作りました。

最終的にこんな感じになりました。

誰に・何を・どのように の三角形は全事例で必須の考え方ですが、特に事例Ⅱでは肝になります

詳細については後述しますが、おおまかに

  • ドメインを軸として

  • 4Pを考えて

  • 具体的な実現方法を考える

そのために必要なキーワードを整理しました。

さらに、与件文を読む・解答作成の際、特に意識する点を箇条書きのチェックリストにしました。

事例Ⅱ 与件文を読む際のチェックリスト

  • 企業/事業ドメインの確認(誰に・何を・どのように)

  • 業種は何か(製造業・小売業・サービス業)

  • 標的顧客を絞り込んだか

  • 内部経営資源には何があるか(人的資源・設備資源・情報ノウハウ資源)

  • 外部経営資源には何があるか(※特に未利用資源をチェック)

  • 製品ライフサイクルモデルのどの段階か

  • アンゾフの成長ベクトルのどの戦略か

  • ポーターの競争戦略のどの戦略か(基本は差別化集中)

  • イベント・体験・口コミ誘発できそうか

過去問で練習する際、とくに抜け落ちやすかった項目を中心に、自分なりにこの9つに整理しました。(それぞれの項目についての詳細はプロの講師によるテキスト・問題集・講義などをあたってください。

「誰に・何を・どのように」を考える

これは中小企業診断士試験のみならず、「マーケティングとは何か?」っていう話になるとほぼ必ず登場するフレーズです。
診断士用語だと、ふぞろいあたりで言われている「だなどこ(誰に・何を・どのように+効果)」というフレーズも有名です。(※私は受験後に知った言葉なのですが)

解答作成の際には、誰に・何を・どのように という視点をもれなくカバーできているかどうかを意識していました。

「誰に」→標的顧客は深く絞り込む

事例Ⅱの設問では「ターゲットを明確にして」というような制約条件が付くことがよくあります。過去問演習の中で、自分はターゲットを書くときに絞り込みが甘くなってしまうことが多く、毎回反省していました。

ターゲティングの基準には「ジオグラフィック」「デモグラフィック」「サイコグラフィック」「行動変数」があるというのは1次試験基本レベルです(2次試験上はサイコと行動変数をまとめて「サイコ」って考えちゃってもいいと思います)が、油断すると「サイコ」の軸が漏れがちなのが自分の癖でした。

たとえば
「首都圏在住の子育て世代主婦」
 ↓
「首都圏在住の食にこだわる子育て世代主婦」
というように、絞り込みが甘くないか?というチェックは必須です。

「何を」「どのように」→ マーケティングの4Pで整理する

「だなどこ」の「何を」「どのように」を考えるときには、「マーケティングの4P」を使って考えるのが基本です。

事例Ⅱでは、扱う商材から提案を求められたり、販路を考えろと指示があったりします。このとき、用紙の余白に「製品・価格・チャネル・プロモーション」の4象限を描いて、与件文や設問の制約条件に記載がある内容をまず埋めます。
解答では、残りの空いている象限の内容を中心に作成する可能性が高いです。

ファイナルシートにも書きましたが、それぞれの象限の内容を考える際、さらに1次試験の論点を使って解答を具体化していきます。

  • Product(製品): ブランドの知識、プロダクトミックス など

  • Price(価格): 高付加価値化、プライシング、プレミアム施策 など

  • Place(チャネル): 店舗出店、垂直統合、ネット販売 など

  • Promotion(プロモーション): コミュニケーション・口コミ創出・価値共創 など

ドメインと4Pをもとにしたメモ作成

「どのように」→強みと機会を活かす

「だなどこ」の「どのように」では、どの経営資源を活用するかを考えます。全事例に共通することではありますが、特に事例Ⅱでは「内部経営資源」と「外部経営資源」を適切に組み合わせることが重要となります。

使う経営資源は、たいていSWOT分析をした際のSとO、VRIO分析のIOにあたるものが該当します。

・・・と、こんなことはどのテキストでも講義でも出てくるであろう内容です。しかし実際に設問と向き合うと、意外とその瞬間は忘れてしまっていたりするものです。

「わかっていても書くときについ忘れちゃう」という状態から、練習して漏れを防けるようにもっていくには、何だかんだで2ヶ月くらいはかかりました。本番でも、100%すべて漏れなくというのはさすがに無理だったのですが、それでも最小限に抑えたことがギリギリ逃げ切りにつながったと思います。

売上高の分解式を使う

一言で「売上を伸ばしたい」といっても、具体的にどうすればよいのでしょうか?

それを考えるには、売上高を要素分解しましょう。
それが上掲ファイナルペーパーの右のほうに書いた内容です。

  • 売上高 = 客数 × 客単価

  • 客数 = 新規顧客 + 既存顧客

  • 客単価 = 買上点数 × 商品単価  など。

そして、たいてい与件文か設問文の中に、この中のどれかの要素は増えませんよー、という制約条件が隠れています。

例えば、「駅から遠い」とか「近隣に安い競合店ができる」って書いてあったら、「残念、客数は増えませんよー」って意味なので、客単価を増やす施策を書かなくてはいけません。
さらに客単価は「買上点数」と「商品単価」から構成されているので、この両方の切り口を考える必要があります。または、制約条件で例えば「値上げはできない」と書いてあれば、いかにたくさん買ってもらえるかに全振りして考えることになります。

既存顧客を対象にする場合は、

  • 既存顧客 = リピート人数 × 来店回数

の2つにさらに分解し、より多くの人にリピートしてもらうための施策と、1人の顧客との接触頻度を上げる施策をそれぞれ検討します。
キーワードにすれば「One to Oneマーケティング」になるのでしょうが、それぞれのお客さんの頭の中で、自社のサービスや製品をより多く思い出してもらえるには何をしたらよいか?を考えます。

この考え方は、実務でもかなり使うようになりました。枝葉のマーケティングテクニックやツールを先に考えるのではなく、だなどこを先に考えることで、考え方がシンプルになって一本芯の通った提案ができるようになった気がします。

加えて、より提案(解答)に説得力を持たせるため、1次試験レベルの知識を深めていきました。

  • 小売業、製造業、サービス業 それぞれの知識

  • 製品ライフサイクルの知識

  • ブランドの知識

  • チャネル戦略の知識

  • 価値共創の考え方

などなど。過去問でよく出てきたものをペーパーにまとめました。

みなさんも、ファイナルペーパーという形じゃなくとも、1次試験終了後にもう一度知識を整理し直してみるというのは是非やってみてください。

マーケティングというのは大変に奥が深いものですし、実際にやってみると全く思い通りにいかないものです。しかし、これはあくまでペーパーテストなので、邪念を捨ててセオリー通りに提案を組み立てていくのみです。いくらあなたがWeb業界に身を置く人間であっても、ECサイトの実装工数とかは考えないようにしましょう(苦笑)

次回は、事例Ⅲへの取り組みについて書きます。
質問があれば、コメントかTwitter、マシュマロにてお寄せください。

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