大衆浴場

大衆浴場の外気浴をするために設置された中庭。ウッドデッキの上に白い椅子が2脚と、寝そべることのできる作りのベッドが4台置かれている。ベッドは4台とも使われていて、それぞれがぼんやりと外気に身を晒している。私は壁際の椅子に腰掛けてどこでもない空間をぼんやりと見ている。ウッドデッキの目の前には石と砂利が無造作に置かれた庭が作られており、一本の樹木が植えられている。また、空間の隅に数台の証明設備用の機材が置かれている。今は午後2時過ぎであるので、照明は消えている。昼過ぎではあるが、空は一面真っ白い雲に覆われているため眩しくはなく、日差しが暑いこともない。秋の風がむしろ若干肌寒く感じるほどである。
私の右側のベッドには50、60歳くらいの白髪混じりの男性が横になっており、ベッドの上で単行本を読んでいる。男性は足の先まで全身がよく日に焼けている。いつもこうして大衆浴場の外気浴スペースで読書をしているのだろうか。いくら外気浴とは言え、一度は室内の大浴場を横切らなければならないため、本を持ち込んで読む人はそう多くないだろう。よほど本が好きだとも言えるが、本を大事にするタイプではないのかもしれない。本のタイトルを横目で伺うと、経済か、自己啓発系の本のようだった。後はどこかの図書館のものであることを示す蔵書シールのようなものが見えた。

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