美容室

コミュニケーション能力がない人間のことをコミュ障というのだと知ったのはいつのことだったろうか。
もともとはネットスラングだったと思う。私は高校生の頃にvipだのをガラケーでポチポチみる習慣があったので、その頃にはコミュ障という人種がいることを言葉では認識していた。
大学生になった頃に学科の友人とのふとした会話で「コミュ障ww」みたいな感じで自然に会話に登場してきて、私も「お、一般人(笑)もネットスラングを使う時代ですかwww」(激寒スマイル)と思ったのをなんとなく覚えている。
ところで、他人事のように述べたが、私はコミュニケーションがあまり上手ではない。前述のようにコミュ障を小馬鹿にする側にいたはずが、なんのことはない。そもそも当時2ちゃんねるにアクセスするような高校生にリアル生活のまともなコミュニケーション能力などあるはずがないのであった。そうとは知らず、仮想の下層を見て「コミュ障哀れなり」と嘲笑う誰が本当に哀れだったのだろうか。
大学生になって、友人こそできたものの、あれ?俺って普通にコミュニケーション苦手やね?と気付きはじめた。友人ができる時点でコミュ障じゃないだろ馬鹿にすんな。というコミュ障の声もあるかもしれないが、ひとりふたり友人がいるところで正直世の中の陽キャの目から見たら五十歩百歩である。仲良くしようね。不思議なもので、自覚し始めると余計に行動力が低下するものである。自己肯定感も一緒に奈落に持っていかれるからである。
どうせ俺が話しかけても上手にお喋りできないし・・・。とか、話しかけるの自体怖いわ。話題ないわ・・・。とかね。思いますよね。
さて、美容室である。
大学生の頃、私は美容室が苦手だった。理由の1つは体温調整がへたくそで、美容室に行ってあのポンチョみたいなやつを被せられると熱くて汗が止まらないからである。理由の2つ目は当然、コミュ障だからである。
しかも理由1と理由2のシナジーが良すぎて、悪魔のコンボが発動。俺汗だくじゃん?恥ずかしっ!となって余計に気まずさを感じて、それにより余計に汗が滲み、「お客さん、暑い?」と美容師さんに言われてしまう。余計に気まずさを感じ・・・というループにハメ殺されるわけである。実際に3回くらい死んでいる。
だから極力美容室に行きたくはなかったが、人並みに美容室に行ってみたいという思いで悲しきモンスターとなって髪が伸びてきては結局行くのである。
その頃の自分を思い返すと美容師さんに対しても必要以上にヘイトを向けていた。
あいつらは大学生が話題の宝庫だと思っていやがる。「最近どうですか。何かありました」とか聞くなよ。なんもねえわ。そっちがうまく話題ふれよ。
とか言っていた。実際に口に出して。
結局そういうふうに内弁慶的に仲間内で息巻いていたことを、同じ美容室に行った友人(敵)から美容師さんに伝えられてしまい、二度と行けなくなった美容室もできた。
今思うと全てが滑稽に思える。ポンチョで汗は相変わらず止まらんけども、俺は代謝がええねんな~。と考えられるようになったし、美容室で適当に天気と仕事の話をしておけばいいと知った。
当時の私に言いたいことは、美容室が嫌だからと言って友人に切ってもらうな。ですね。大学の頃の写真を見て思う。1000円カットでいいからプロにきってもらえってね。

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