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6-17 本「さよならの儀式」宮部 みゆき

小さな漁村に、海の向こうから「屍者」のトムさんがやってきて…。「海神の裔」をはじめ、親子の救済、老人の覚醒、別の人生の模索などを描いた作品全8編を収録。『小説すばる』「NOVA」ほか掲載を書籍化。                     1 母の法律
2 戦闘員
3 わたしとワタシ
4 さよならの儀式
5 星に願いを
6 聖痕
7 海神の裔
8 保安官の明日

宮部みゆきの小説はミステリー系はほとんどすべて読んでいるため、この本も無条件で読むことになったのだけれど、最初は「杉村三郎シリーズ」の作品だと思っていたため、最初の内容がかなり違っていて、驚いた。なんというか、「杉村三郎シリーズ」には独特の空気があって、その空気は結構好きな感じなので、少しがっかりはしたのだけれど、それでも宮部みゆき作品なので、かなり楽しめた。

本は、8編の短編小説で、SF小説だった。思いがけずSF小説を読むことになったため、韓国の作家チョン・ソヨン(정소연)の「となりのヨンヒさん」を思い浮かべてしまった。SFは昔は好きだったけれど、今はあまり手に取らないので、少し新鮮だった。ほかの作品も読んでみようかな。

チョン・ソヨンについては、このようなブログも見つけた。

この短編集は好きな作品と、全く理解できない作品と分かれて、理解できない作品は読むのが苦痛だった。SFにありがちだけれど、映画などでも理解できない世界観がある。だから、あまり手に取らないこともあるのかもしれない。この中では、タイトルにもなった「さよならの儀式」が一番好きだった。あとは「海神の裔」と「保安官の明日」。「海神の裔」は未来の話のようなイメージのSFと歴史の一部のようなイメージのものとを組み合わせた作品で、いろいろと想像を巡らせて楽しかった。「保安官の明日」はまるで西部劇のような設定なのに、実はすごい近未来の話で、そのギャップが面白かった。この作品を読んで、自分が今、生きている世界が現実のものなのか、少し考えたりした。
あまり感情移入ができなかった作品が「わたしとワタシ」。私に一番近い主人公の設定なのだけれど、いまいちピンとこなかった。もう少し作りが違っていると、ものすごく共感できそうなだけに少し消化不良を感じた。一番、理解不能だったのが「聖痕」。途中まで面白かったのにがっかりだった。イメージができなかったからかもしれない。私は物語をイメージしながら読むので、イメージできない作品は本当に苦痛だ。

全編を通して、日常の外側に外れた世界観がSFだとしたら、そういう世界を楽しめてよかったかもしれない。AIやロボットなどは今後、向き合っていかないといけない題材かもしれないし、ほんわかしたSFとしてでなく、もっと現実的な世界として近づいてくるのかもしれない。また、日常の中の非日常、現実の中の幻想のような、相反するものの共存性みたいなものを考えたりして、なかなか楽しめた。

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