ワーケーションがはじめての私が見た・感じた妙高市
小栗と申します。石川県で学習塾を経営しています。今回、妙高市が主催するワーケーションのモニターに参加しました。体験を通じて見た・感じた妙高市の「ありのまま」を私なりの視点からお伝えできればと思います。
なお、私は自営業者です。そのため、当記事はどちらかというとフリーランスの方や経営者といった方々の目から見たワーケーションの体験談を、あれやこれやと語っていきたいと思います。
妙高市は何県にある?
私がこのモニターを知ったのは、とあるクラウドソーシングのマッチングサイトでした。モニターに参加する前、私は妙高市がどの県にあるのかすら知りませんでした。岐阜県? 長野県? 新潟県? くらいの感覚しかなかったのです。
また、妙高市は世間にどの程度認知されているのだろう? という素朴な疑問もありました。ちなみに私の塾の生徒さんは妙高市をご存じで、「良いところだよ」というお話は事前に伺っていました。
さらに、世間一般でワーケーションへ注目が集まるようになったのはここ数年来とのことです。しかし、ワーケーションが世間で注目され始めてきたという一般常識も知らず、ましてやその内容もよくわからず、そして妙高市が力を入れて取り組んでいることだというのも知りませんでした。
つまり一番最初に私が感じていたことは「自分の知らないどこか遠い地方の自治体が、なにやら新しいことを町おこし的に取り組み始めているのか?」といった、本当にアバウトな理解でしかなかったのです。
ワーケーションとは?
読者の皆様は「ワーケーション」という単語について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
「ワーケーション」という単語は、「work(働く)+vacation(休暇)」という単語の造語です。「普段のオフィスとは異なる場所(多くは観光地、リゾート地)で、働きながら休暇を取る」もしくは「休暇を取りながら働く」というワークスタイルとして一般的には認知されているようです。
ここから想像されるのは「そうしたリゾート地、観光地でまったり休暇を取りつつ、気が向いたときにたまに働く」というワークスタイル(もしくはライフスタイル)であり、ややもすれば「観光」や「遊び」といった要素ばかりが誇張されているようにも思えます。
ワーケーション初心者の私も、色々な記事を調べて勉強はするものの、どうしても「遊び」や「観光」というネガティブなイメージを払しょくできず、モヤモヤしたまま妙高市にやってきた、というのが実のところでした。
ですが、結論から申し上げると、ワーケーションはいわゆる「観光」「遊び」メインのワークスタイルではなく、メインはあくまで「仕事」だということです。観光地やリゾート地で美味しいものを食べたり、温泉に入ったり、観光やアクティビティで楽しんだりしながら「たまに」仕事する、といったワークスタイルでは全くありません。文字通り「通常業務」なのです。
会社勤めの方であれば、例えば朝9時から夕方18時まで仕事する、というのは自社で行う業務もワーケーションで行うのも何ら変わりはありません。あくまで「仕事をするために妙高市に来る」のがこのワーケーションの趣旨であり目的です。ですので様々な期待をされた方は、少々がっかりされるかもしれません(笑)
では、果たしてリゾート地に来てまで何で仕事をするの? と思われる方も多いかもしれません。今回の私のモニター体験は、わざわざ妙高市にまで足を運んでワーケーションを行うこと、そのメリットや醍醐味をお伝えすることが目的です。
3週間という短い期間ながら、私なりに考えたワーケーション体験のあれこれ、そしてワーケーションだからこそ得られるもの、その醍醐味についてあますところなくお伝えしていきたいと思います。
アンラッキーなスタート
私が妙高市にやってきたタイミングは、実はかなりアンラッキーな日でした。
2021年2月4日の夜から5日の朝にかけて、日本海側で猛烈な低気圧が発生しました。私の住んでいる石川県も朝目覚めると外がうっすら白くなっていたので、少し嫌な予感はしていました。
北陸道を北上。糸魚川から上越JCT辺りまではまだ大丈夫だったのですが、そこから先の路面は完全に真っ白で、除雪が追いついていない状況。高速道路から一般道に出る途中のジャンクションのカーブで何とスリップしてしまい、初日からヒヤヒヤする経験をしました。
妙高市内の一般道は、国道は除雪がなされており交通に支障はなかったものの、国道から少し入ると山道で、一気に雪深くなりました。坂道も多く、スタックしないか相当神経質になりながら車を走らせること30分ほど、やっと待ち合わせ場所に辿り着くことができました。
灯油ストーブ1台でも十分快適!
今回、私が滞在したのは「クラインガルテン妙高」という施設です。妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会が管理しており、事務所があるハートランド妙高から歩いて数分の、コテージタイプの住居です。建物は全体で三階あり、居住部分は二階がリビング・三階がロフト(主に寝室)、そして一階部分(地上階)に車庫があるという構造になっています。
雑談ながら、生まれて初めて車庫付きの住居に滞在することになったのも少なからず嬉しかったですね。マイホームを買ったときってこういう気持ちがするのかな、と想像したりもしました。
妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会のスタッフの方から生活の手引きをレクチャーしていただきました。この時期に大変重要なアイテムとなる灯油ストーブの使い方、灯油の買い方も教えてもらって、いよいよ生活スタートです!
灯油ストーブなんて、何十年かぶりに見たのでとても懐かしくなってしまいました。都内の集合住宅で20年以上も過ごしてきた私にとっては、まず最初の異文化体験がこの灯油ストーブです。
雪国にあまり慣れていない関東出身の私が、ワーケーションの開始当初からもっとも不安だったのは、雪国の猛烈な雪と寒さ。エアコンもなく灯油ストーブのみで過ごす住環境は、昼間は何とかなっても夜は寒さが厳しいのではないか、そんな不安がありました。
ですが、実際に居住を始めると、天井が高く、断熱もしっかりしているため寒さはそれほど気にならない。早40歳を迎えてすっかり寒がりになってしまった私でも、それほど厳しい寒さにはならなかったのは意外でした。
住居はロフト形式になっており、上階で就寝することにしました。これが正解。実は2階のほうが暖かいのです!そう、暖気は上昇しますね、だから屋根に近い方がより暖かいのです。
その他、驚くことに室内は普段の生活と何ら変わらない服装で過ごせるので、寒さによって仕事や日常生活に支障が出るということはほとんどありませんでした。
灯油ストーブもかなり部屋を温めてくれますし、エアコンよりもこうした機器の方が暖をとるにはちょうどよい。そう、囲炉裏や火鉢と同じ発想ですね。まさに雪国の知恵を感じた瞬間でした。
布団類は貸出必要ですが、その他の食器類、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機など必要最低限の機材は一通りそろっており、数日分のルーティーンの回せる衣類があれば即生活がスタートできてしまう恵まれた環境です。
移動後にすぐに仕事を始めたい、という方にとっても好都合な環境ではないかと思います。
程よく快適な立地で、買い物にも困らない
滞在を通じて私が感じた妙高市の特徴は、言うまでもなく「自然が豊富な土地」だということです。夏山登山や冬山スキーなどアウトドア好きにはたまらない環境ですので、是非来ていただきたいと思います。
そして、妙高市は軽井沢や草津といった、いわゆる全国区で有名な観光地とは異なり、観光バスが市内を一日中往復していたりといった、有名な観光地・景勝地によくあるオーバーツーリズム(環境公害)も見られず、程よく地元に溶け込んだ生活が送れるなと感じます。そのため、仕事に集中するにはかえってよい環境かもしれません。
大都市からお越しになる方が気になる交通手段ですが、自家用車をお持ちの方であれば道も広く、一部の山間部を除けば狭い山道もほとんどないので、移動には困らず快適に過ごせると思います。
また企業単位でのご参加など、自家用車でお越しにならない方でも、ハートランド妙高にはレンタルサイクルがありますので、雪のない季節ならちょっとした遠出も可能です。国道沿いは歩道もしっかり整備されていますので、移動の心配はないかと思います。
気になる買い物スポットですが、もっとも近いお店は、クラインガルテンから車で10分弱の距離にあるホームセンター、そしてその向かいの野菜の販売所です。
この販売所は地元の農家の方々が共同で運営しているお店で、食堂も併設されているため、お昼どきはにぎわっています。ここでお昼をとるのもよいでしょう。自転車でも10~15分の距離です(往路は下り坂なので楽ですが、復路はずっと登りなのでご注意ください!)
その他、国道沿いに車を10分ほど走らせれば地元のスーパーやドラッグストアもあり、日々の買い物には困りません。当然ですがクレジットカードも普通に使えますので、決済関連のストレスもありません。
基本的は国道沿いにすべてそろっていますね。コンビニも国道沿いにセブンイレブンが1件あり、ちょっとした買い物やお金の引き出しはここで対応が可能。そして、ラーメン屋や定食屋などもあり、食に困る環境ではないなと感じます(味噌ラーメン店「ミサ」はお薦めです!)
全体的な印象としては、東京の郊外に住んでいるような感覚と何ら変わりなく過ごせますね。妙高市は生活必需品の調達に困ることもなく、色々なお店が適度にまとまっており、仕事をする上でのわずらわしさはほぼ無く快適に過ごせる環境だと思います。
気分は格安レンタルオフィス!
住環境にストレスをほぼ感じない環境ですので、仕事をする上でも集中して取り組む環境が整っています。冒頭で申し上げたように、独立した住居を1棟まるまる1人で贅沢に利用できる環境は、都内や大都市のオフィスではまず考えられません。
私が居住したクラインガルテンの15号棟は、賃料が短期利用(1ヶ月)のモニター価格で33,400円/月(保証金10,000円含む)、実質的には25,000円そこそこの値段ですから、現在お住まいの住居費に3万弱の出費を追加するだけで貸し別荘を利用することができるという、何ともお手頃な値段だと思います。
この値段、例えば都内のレンタルオフィスと比べても破格の値段だと感じました。
Google検索で新宿エリアのレンタルオフィス賃料を調べると、最安であれば25,000円~30,000円台から見つかります。なんだ、クラインガルテン妙高の賃料が割高なんじゃない? そう思うのは大きな間違いです。
これらの価格は「月間利用料」のみの話なんですね。管理費や初期費用(敷金等)など諸々の出費を考えれば、簡単に数十万単位の出費です。しかもオフィスはデスク一つと10平米にも満たない空間。
これに対してクラインガルテン妙高の滞在なら、一か月の賃料(25,000円)のみでOK。かつ駐車場・ロフト付き。朝日と共に気持ちよく目覚める生活、一歩外を出れば大自然・・・もはや比べるべくもない理想的な環境だと思います。
「職・住・遊」が接近している環境
仕事を行う上でもクラインガルテン妙高、またハートランド妙高は普段のオフィスと全く変わらない環境で業務を継続することができます。
私は仕事柄、動画作成を行う機会が多いのですが、録画・録音する際には独立した住居なので周囲を気にする必要がなく、クリエイティブな作業には理想的な環境だと思っています。実際、普段の制作クオリティよりも明らかに高いものを得られているな、と感じています。
そして、動画作成を行う上で気になる通信環境も、ハートランド妙高ではWifiを利用することができ、画像や動画など多少容量の大きいコンテンツのアップロード・ダウンロードもストレスなく行えました。毎日数ギガ単位のファイルをアップ/ダウンロードする必要があったので、これは大変助かりました。
また、リモート会議も何の問題もなく対応できました。私は今、京都に在住の専属のマーケティングコンサルタントと定期的にやり取りをしておりますが、全くストレスも不自由もなく業務ができました。
このように、仕事に集中できる環境も整い、周囲の邪魔も入らないので、日常の中でオン/オフを切り替えるストレスが一切ありません。
クラインガルテン妙高からハートランド妙高までは徒歩5分という近距離なので、ハートランドで終わらなかった分をクラインガルテンで行ったり、逆にクラインガルテンで撮りだめた写真や動画をハートランドで一気にアップロードして作業に取り組んだり、とメリハリがつけられますね。
最後に、ワーケーションで重要だと考えている点が「職・住・遊接近」の環境です。
まず「職・住」の点では、ハートランド妙高で仕事をするもよし、クラインガルテンで仕事をするもよし、そしてお昼は自宅に戻って休んでもよし、10分程度車を飛ばせば市内の飲食店にアクセスも簡単にできます。
職住が近接しているので、色々な生活パターンが可能で、私の場合はお昼を自宅で作ってほっと一息つくのが何よりの楽しみです。
通常の生活であれば必ず「通勤時間」や「通勤のストレス」が付きまとうと思いますが、徒歩5分の通勤ではそうした不安はゼロですね! それだけでなくスケジューリング次第で如何様にも仕事の柔軟性が得られるところがとても気に入っています。
そして、読者の方が気になる「遊」について(笑)。こちらも大変恵まれた環境にあると言えます。仕事で缶詰となる生活ももちろんいいのですが、折角、雪国の妙高市に滞在するからには、大自然を味わわない手はありません!
ということで、私も初心者ながらスキーに挑戦してみました。さすが妙高市のスキー場周辺にはスキーレンタル店が多く、お手軽な価格でレンタルできるのも魅力です。
私はクロスカントリースキーにチャレンジしてみたいと思い、用具をレンタルして「池の平スポーツ広場」という場所にあるクロカン場でクロスカントリースキーを試そう、と思いきやなんと・・・。
スキーの知識がゼロの私は、間違ってアルペンスキーを借りてしまったのです(笑)。結局コースに出ることはできず、また、そんな実力もあるわけはないので、平らな場所をグルグル周回するだけでしたが、天候にも恵まれ、白銀の世界の中とても気持ちのいい午前を過ごすことができました。
「整えられて」日常に戻る
ワーケーションの魅力を感じたのは、ことさらこうした「自由な時間の使い方」ができるということです。
「今日は天気がいいから、気分転換を兼ねて、午前中だけどこか気色のいいところに出かけよう」と思い立ったら、30分後にはもうそこに居ることができます。それくらいレジャーや自然から近いという好条件なんですね。
人によっては、例えば「午前中だけ」「午後の2時間だけ」といった形で時間を区切ってアクティビティを1日の中にさしはさむことが可能です。「午前は遊んで午後から仕事」、もしくは、「午前中は集中して仕事、午後から遊ぶ」みたいなワークスタイルも全く可能です。
まさに「職・住・遊」が近接している妙高市の環境だからこそ可能となるワーケーションではないかと思います。これが妙高市のワーケーションの醍醐味の1つです。
これが「観光」だった場合は、ほぼ1日観光に時間を取られてしまい、集中して仕事をしたくて来た人にとっては、1日時間をとられてしまうことが逆に煩わしく思うこともあるのではないでしょうか?
そうではなくて「オンの頭」を保ったまま、気分転換や遊びで適度に癒され、それが程よいフィードバックとなって仕事や日常生活に還元される。まさに非日常により研ぎ澄まされた、もしくは解放された五感がしっかりと最後には「整えられて」日常に戻る……という理想的な生活を可能にしてくれるものが、ワーケーションという働き方の醍醐味の一つなのでは、と思っています。
まとめ
ワーケーションは従来型の定義のような「観光メイン、仕事はオマケ」というものでも、また「ビジネス旅行」でもなく、「地元に溶け込んで生活・仕事をする」というワークスタイルとしての理解が正しいかな、と考えています。
そして何より「オンの頭」をキープし続けたい、それこそ仕事だけに集中したいという方には、観光地特有の誘惑や邪念も少なく、かつ積極的に羽を伸ばし、仕事のモチベーションや集中力を高める手段としても、このワーケーションというスタイルは最高だと思います。
そういう意味では是非フリーランスの方、自営業者の方などはリフレッシュも兼ねて大いに活用していただけたら、ワーケーションの良さを体感していただけるのではと思います。
ですが、やはりワーケーションを理解していただく一番いい方法は、実際に妙高市に来ていただき、生活を通じてワーケーションとは何ぞや? を体験(体感)していただくことが一番早いのか、と思います。とても充実した一月を過ごせるはずです!
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