どうしたら「アンリコは強過ぎる」と理解してもらえるか?

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⓪はじめに

 事の起こりは「ヒストリックのブレストって本当にそんなに強いの?」という久代様の記事だった。私は記事を読んで尚、「いやいや、ブレストは禁止したほうが良いくらい強いよ」と思っており、どうやったらブレストは禁止級の強さを有しているかを理解してもらえるか、思案してみた。

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 しかし、ブレストではパンチが弱かったので、ここは分かりやすく、ブレストの代わりに、MTG歴代最強カードの一角である《Ancestral Recall》にお越しいただいた。

 公式がドラッグをキメながらヒストリック・アンソロジーを作成したら、うっかりアンリコが収録されてしまい、なぜかそのままヒストリックで使用できてしまっている、というハチャメチャな世界を想像してほしい。
 Welcome to this crazy world, イカレた世界にようこそ!!

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 初心者が1ターン目にアンリコを打って、エンドに悲しそうな顔で溢れた手札を捨てているような世界だ。もちろん環境はアンリコに支配されている。採用率は全カードトップの5割越えだ。(ちなみに、《稲妻》は使えないし、《Time Warp》は数日前に禁止されたよ)

 当然プロも「アンリコは強過ぎる」と言っており、大半のプレイヤーは「どうしてアンリコを禁止しないんだ?」と嘆いている。もちろん、みんなのデッキは青い。


 しかし、そんな状況であっても、一部の人々は「アンリコは禁止するほど強くない」と主張している。さて、どうしたら彼らにアンリコの強さを理解してもらえるだろうか?



①どうして「アンリコは禁止されるほど強くない」と言いたいのか?

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 その昔、《王冠泥棒、オーコ》というカードがあった。

 圧倒的なカードパワーにより、今では様々なフォーマットで禁止されているが、驚くべきことに、オーコが禁止される直前でも「オーコは禁止されるほど圧倒的に強いわけではない。むしろ、ゲームを不当に加速させる《金のガチョウ》を禁止すべきだ」という主張も存在していた。

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 このとき、興味深いことがひとつあった。

 「オーコは禁止するほど強くない」と主張するプレイヤーの多くは、自分でオーコをプレイする側に回っていたのだ。「オーコなんてザコだ。オーコは弱いのにみんなが使うから、俺は簡単に勝利できる。せっかくカモばかりの環境なのに、変えないでくれよ」という意図の発言ではなく、「俺のオーコは強くない。だから、見逃してくれないか?」という意味が込められていた。

 要するに、誰も「オーコは弱い」と思ってはいなかったのだ。

 オーコは強い。

 ここまでは共通認識で、そこから先の「禁止するほどか?」という部分が問題になっていた。


 アンリコは強い。

 しかし、禁止するほど強いのか?



②弱さの証明

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 通常の記事であれば、問題のカードがいかに強いか、どれだけ勝利に貢献しているか、滔々と語るところだ。しかし、今回はアンリコである。わざわざ語る必要もあるまい。

 逆に、どうすれば「アンリコは弱い」と言えるだろうか?

 実はアンリコを弱いというのは難しいことではない。

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・ナーセットが出てると0~1枚しか引けないから弱い
・デッキトップ3枚しか触れられないから《思案》のほうが強い

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・墓地を肥やせないから《信仰無き物漁り》のほうが強い

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・カードを3枚しか引けないから《物語への没入》のほうが強い

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・手札をデッキトップに仕込めないので、ブレストのほうが強い

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 どれも完全に間違ったことを言っているわけではない。

 いかにアンリコといえども、完全無欠ではない。ドローできない状況では無価値なカードになるし、墓地を肥やせないし、デッキトップを弄ることもできない。ただ、ちょこっと、1マナでカードを3枚だけ引くだけ(?)。弱くはないけど、ヒストリックで禁止するほど強くはないよね! ね! だから、これからもアンリコを使せてよ!!

 とスピーディに畳みかけても、上記の理論が正論ではないことは理解してもらえるだろう。「陸に上げられたクジラは弱い」というのは正しいが、「よって、クジラはザコである」という結論にはならないのだ。


 そもそも、カードパワーを理由に禁止されるカードは「そのカードの真価が発揮されるフィールド(特定の組み合わせや限定的条件下)」で強いから禁止されるので、特別な状況下で弱いから禁止されないという理論は苦しい。

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(追記)

 個人的には特定のカードの採用率が5割を超えた時点で「禁止の領域」に足を踏み入れているように感じるが、「採用率のみで禁止を決定しているわけではない」という意見も正しいので、採用率のみを基準にカードの強さを語ることはできない。面倒くさいね。



③「悪魔の証明」

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 勘の良い読者の方々はすでに気づいているだろう。

 私は、最初からアンリコが禁止級の強さだと証明する気はない。

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 カードの強さが禁止級であることを証明するのは非常に困難なのだ。私の技量を考慮すれば不可能と言っても良いだろう。例えそれが歴代最強カードの一角であるアンリコですら、状況や目的によっては他のカードに後れを取るし、アンリコは直接プレイヤーを殺さない。アンリコ4積みのデッキが大会上位を席巻していても、「アンリコじゃなくて〇〇が強い」と主張することも可能であり、採用率も禁止級カードであることの証明にはならない。(ましてや、ハンドアドを稼がないブレストが元々の問題なのだ。無理過ぎる)

 結論だけ言えば、どうしようもない。

 現状で「ブレストは禁止されるほど強くない」と主張する方々が、どこかの時点で自発的に「ブレスト、めっちゃ強くない?」と気づいてくれることを祈るだけだ。外部の人間がどうこう言ったところで何にもならない。非生産的だ。そもそも思想は個人の自由なのだ。

 もちろん、私の思考が間違っている可能性もある。

 ひょっとしたら、アンリコが解禁されてもヒストリック環境は破壊されず、アンリコがヒストリック環境に最高にマッチした1枚になるのかも知れない。(……私はそうは思えないが……)

 不毛な結論になってしまいましたが、記事を最後までお読みくださり、ありがとうございました。感想を頂けると幸いです。

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