「モルトシュゲ」のグレンモルトとシューゲイザーの間のシナジーを説明できますか?

はじめに

【事実】:デュエプレではかつて「モルトシュゲ」(あるいは「シュゲモルト」)と呼ばれるデッキが環境レベルで存在していた。
デッキの構造としては、従来からあった光火自然あるいは闇火自然基盤の「シューゲイザービート」に、新弾で登場した龍覇 グレンモルトが投入された形となる。
参考:https://x.com/rai37nydm/status/1724810414117286305

【疑問】:どのような利点があって、「シューゲイザービート」にグレンモルトが搭載されるようになったのか。
シューゲイザーとグレンモルトは、一見すると一切のシナジーを持たないカード達である。シューゲイザーの5コスト範囲の踏み倒し効果ではグレンモルトを出すことはできない。ただ独立した強いカードを2種類デッキに突っ込んだだけのように思えるかもしれない。

 本コラムでは、2つの視点からシューゲイザーとグレンモルトの間のシナジーを考察する。
ここでシナジーという言葉をきちんと定義しておこう。様々な言い方があると思うが、本コラムでは「デッキに同居させることで利点が生まれること」であるとする。


※参考までに、「シナジーとは何か」という課題に取り組んだ過去の拙著をリンクしておく。この記事では、カード間のシナジーを
①共通の勝ち筋を目指す中で使われるカード達
②「挟撃」≒挟み撃ち、「追撃」≒コンボ
③デッキ単位での噛み合い
といった風に分類して解説している。
やや抽象的な内容となっているが、興味があれば併せて読んでみてほしい。


視点①:デッキ全体を媒介したシナジー

シューゲイザーの性質の一つに、キリュージルヴェスをマナから踏み倒すことで即時にSA3打点(またはそれ以上)を形成できることが挙げられる。
このことからシューゲイザーを強く使う方法の一つは、
「自然基盤でマナブーストしながら場に打点となるクリーチャーをいくつか並べておき、5ターン程度でシューゲイザーを投げて試合を決めに行く」
というものである。
シューゲイザーが登場した当初から、このタイプのビートダウンが主流となる使われ方であった。

ではグレンモルトの性質はどうか。
グレンモルトも同様に、場にアタッカーが既にいるときにガイハートを装備して場に出すことで、ガイギンガと併せて即時にSA3打点を形成できる。
すなわち同様に、マナブーストしながら場にクリーチャーを貯めておいてぶっ放すのが強い使い方の一つだ。

 両者は類似した強みを持っているカード達である。つまり、シューゲイザーを活かすように組まれたデッキでは、グレンモルトも活かされる。「テンポ重視で展開していき、ミッドレンジ帯のエースカードを投げつけることを太い筋として持つデッキ」と両カードはそれぞれデッキ単位で噛み合っている(※ここで言っているのは「デッキ全体」と「カード1枚」の間の関係である)。

 一般的な考え方として、デッキの中のフィニッシャー4枚の素引きに期待するのは不安定であり、代替カードやサーチ等を含めて実質的に6枚~8枚程度フィニッシャーを入れられた方がデッキは安定する。
共通したゲーム展開の中で互いに互いのサブプランとなりうるシューゲイザーとグレンモルトは、この意味でシナジーしていると言えよう。
繰り返すが、本コラムでのシナジーの定義は「デッキに同居させることで利点が生まれること」である。

視点②:挟撃性シナジー

 筆者ミョガちゃんがたびたび口にする「挟撃」という言葉がある。これは文字通り挟み撃ちのことで、対戦相手に対してどちらに転んでも喜ばしくない二択を迫る状況・戦術などを指している。
筆者が最もわかりやすいと思っている例が、ロスト・ソウルとサウザンド・スピアによる挟撃だ。自分がこれら両者を手札に構えているとき、相手が手札のクリーチャーを沢山並べてきた場合はサウザンド・スピアが刺さり、逆にそれを警戒して手札を温存してきた場合はロスト・ソウルが刺さる。

 このような挟撃性は、様々なカードの間に見出すことができる。
(勿論カードの間に限らず、1枚のカード中の複数効果の間や、マクロな戦術と戦術の間にも成立しうる。)
シューゲイザーとグレンモルトの間にはどのような挟撃性シナジーがあるだろうか。前章で述べた通り、両カードは類似した攻撃性能を持つが、異なっている点も沢山ある。

★シューゲイザーに固有の性能(一部)
7マナ
・逆転王女プリンを絡めることで大量の打点形成が可能
・好きな5マナ以下のクリーチャーのcip能力を利用できる
・キリュージルヴェスのスレイヤー付与によるバトル性能
即時に殴らず、ヨーデルワイス等を出して貯めるプランをとりやすい

★グレンモルトに固有の性能(一部)
6マナ
・ガイハート以外に、ガイアールによる7000火力を選択できる
・場にガイギンガ(実質的に選ばれない怪物)を残せる
・盾を詰めながらガイハート龍解時効果で7000火力を放てる
クリーチャーを1面でも残すと龍解されうるという圧力がかけられる

各カードの固有の性能の中から、例えば以下のような挟撃性を見出すことができる。
相手がグレンモルト+ガイギンガの龍解を恐れて、リソース補充の機会を消費しながらこちらのクリーチャーの処理に徹してきた場合に、シューゲイザーによる貯めプランが刺さりやすい。このとき、相手はリソースを失っているが、こちらの盤面にはクリーチャーが沢山並んでいるという状況が作られる。逆に相手が序盤から場のクリーチャーを放置してきた場合は、グレンモルトからガイギンガを早期着地させることで展開の主導権をこちらが握ることができる。

 グレンモルトが6マナと軽めであることもありテンポに秀でたカードであるなら、シューゲイザーは1枚で生み出せるバリューに秀でたカードであり、この差が挟撃性のシナジーを生み出していると言えよう。

●おまけの小噺
 ところで、「カードゲームのデッキは究極的にはハイランダーが最も強い」という論をご存じだろうか。手札に同じカードが2枚かさばっている状態より、違う2枚のカードがある方が行動の選択肢が広いため強い、という理屈である。
 例えば魂と記憶の盾・陰謀と計略の手は、性能が類似しているカードだが有効な場面がそれぞれ微妙に異なっている。次ターンの出し直しを許したくない場合は魂と記憶の盾が強く、サイキック・クリーチャーを除去するなら陰謀と計略の手が強い。手札にどちらかのカードが2枚ある状況よりも、両方のカードが1枚ずつあった方が相手の行動や状況に合わせてドンピシャの解答を出せることが多い(これも挟撃性の一つの例である)。
実際のデッキ構築でも、1種類のカードを4枚積むよりも2種類の類似したカードを2枚・2枚で散らすと強い可能性があり、常に検討されるべきだと筆者は考えている。
 デュエプレでは慣例的に4×10構築に近い程美しく洗練されたデッキであるとされる場合がたびたびある。これにも一定の妥当性があるのだが、敢えて真逆の話をここでは紹介した。

おわりに

 以上、2つの視点から『どのような利点があって、「シューゲイザービート」にグレンモルトが搭載されるようになったのか。』という疑問について考察した。本コラムを通して、何か少しでも、読者の中に新しい視点が生まれてくれれば幸いである。

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