義祖母の家へ遊びに行ったら宗教の勧誘をされた話

それはもう何年も前、妻が会いたがっていたので遠方に住む義祖母の家へ初めて遊びに行った時のこと。

親類のかたと団欒していると、突然に面識の無い人たちがやってきた。
義祖母に用があったのかと思いきや、そうではなかった。

その中の一人はとある宗派でとても権威のある人と紹介された。
そいつは、僕に話があると言った。

嫌な予感。
そこから始まる信仰関係の問答。
案の定された宗教の勧誘。

知らない人たちに囲まれて、しつこく入信しろと迫られる。
一言「はい」とさえ答えてくれればそれで良いようなことを言う。
セリフだけ聞くとまるで物語に出てくる悪魔の契約のようだ。

恫喝や脅しではないにしても、望む答えを聞くまで引く気のないようなやりとり。
僕にとっては勝手の知らない他人の家なので、逃げ場はない。

入信する気は無いことを繰り返し伝えても、引き下がってくれない。
何しろこういう汚いやりかたで入信させるようなやり口なのだ。
何を信じるのも自由だけど、強要はしちゃいけない。

僕は、宗教はこのように対話と圧力で人の支配に使われる、戦争の道具だとも言った。
なかなか帰ってはくれず、何時間も義祖母の家に居座る。
妻も子供も一緒だったので僕だけで飛び出して逃げるようなこともできない。

妻の家系は割と熱心な仏教徒らしい。
それは構わないのだけど、大勢で圧力をかけるようなやり口で勧誘するのは勘弁してほしい。
僕を救うために善意でやっているつもりなので、悪気が無いのがタチの悪いところ。

妻の血縁のやっていることなので、できれば穏便に済ませたい。
土下座をして、お引き取りくださいとお願いした。
しばらく頭を床につけ、それでようやく帰ってもらった。

肯定するような素振りを見せたら、言質を取られて後で何をされるか分からない。
僕は断れたが、年端のいかない子供にこれをやられたらたまったものではない。
あの時「はい」と答えたからお前はもう信者だ、なんて自分や子供たちが言われる未来が容易に想像できる。

どの宗教を信仰するもしないも自由。
ただし、親が入信しているからとまだ良し悪しの分からない子供も入れさせるとか、こういう形で強制するとかはあってはいけない。

本当はすぐにでも離れたかったが、夜の遅い時間に小さい子供を連れて出るのは難しい。
数日滞在する予定だったが、翌日に帰ることにした。
義祖母の家に望んで行くことはもう二度と無い。

あれから数年経つけど、恐ろしい体験だったのでなかなか忘れることはできない。
妻には再度干渉してくるなら許さないと伝えているからか、新たに仕掛けてくる様子は無い。
それでも妻の親戚筋にあたる人と接触する時は常に警戒している。

簡単に縁を切れる関係ではないので、どうやって諦めてもらうか悩ましい。
あの時は僕が頭を下げる方法しか思い付かなかった。
でも、もう一度同じことをする気は無い。

きっとどこにでもあるような話だろう。
ただしその性質上、表面化しづらいものだと思う。
僕のような被害者が一人でも減ることを願う。

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