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明日は燃えるゴミ

つい先日起こったことを話そうと思う。薬でところどころ記憶が飛んでいるのは許して欲しい。コデインと睡眠薬とあとなんかの薬を大量に飲んで、希死念慮おばけと一時的に仲良くなってしまったので本気で死のうと思い、iPadで文字を打ち間違えながらも必死に「首吊り 結び方」と検索した。いきなりトップに「心の健康相談ダイヤル 電話番号0570…」と出てきて死にたさのゲージがグングン上がった。「そんなとこに相談できて解決出来んならこんなんなってねえよな」希死念慮おばけが言っている。本当だよ。もういい、死んでやる死んでやるからな。過去児童相談所で失敗している(この話も今度文章にしようと思う)ので、そういう「心の相談ダイヤル」みたいなのは全く信用していない。「生きてればいいことありますよ」だとか「悲しむ人がいますよ」だとか私のことを全く知らない赤の他人に言われて、わかりました生きてみますってなるか?ああいう人間が一番嫌いなんだ。「親を大事にしなさい」だとか「幸せはみんな平等にある」だとかお前に何がわかるんだよ。寄り添うつもりもないくせに、こちらの抱えてる辛さなんか微塵も理解しようとせず「助言している自分」に酔いながら土足のまま心をズタズタに引っ掻き回す。私のつらさやしんどさをてめえの中の物差しで勝手に測って判断するな。いつだか旅行か何かで行った富士の樹海で、死ぬ人を止めるために作られた看板を何個か見たけどそれでも死ぬやつは死ぬからな。もう遅い。

とりあえずあの結び方はもやい結びと言うらしい。薬で震える手でやってみたけど難しくてできなかった。ええい首が吊れればなんでも良い!輪っかを作って適当に結んで部屋にくくりつけた。首に通して、椅子を蹴れば…あーこれで本当におしまいなんだな。幸せになりたいと思ってたのに。なれなかったな。結果何故か首を吊るのを辞めた。でも辞めたことにまた腹が立ってもう一度試した。腹が立つのと同時に、今まで生きてきて苦しかったことや辛かったこと、この先起こるであろう辛い未来がギュッと凝縮されて頭の中で再生された。次こそ、次こそは死んでやる。「もうこれ以上苦しみたくないでしょ?」おばけが優しく諭して死に誘導する。椅子を蹴飛ばし、脚が宙にぷらんと浮いて瞬間首が締まった。「うわ結構苦しいな」「いや生きるより楽か」とか考える余裕があった。やっとこれで楽になれる…そう思った矢先、バチンッッッと音を立てて紐が切れた。思いっきり床に落ちて悔しくて悔しくてしょうがなくて、せっかく死ぬ勇気が出たところなのに、なんで殺してくれないんだと泣きながら誰かに文句を言った。多分文句の先は希死念慮おばけだと思う。おばけも物理までは操れない。そんなこと言われたって困るよな。ごめんなおばけ。

千切れたから失敗したんだ、そしたらビニル紐を三つ編みにして、少しでも強度を上げて、次こそは。片足で紐の先を押さえ、三つ編みにし強度を上げた。その先の記憶がない。

恋人はちょうどバイトに行っていた。帰ってきたら薬が散乱し、首吊り紐がかかった部屋で私が倒れて寝ていた。薬のせいで意識がいったりきたり混濁しているのを必死に介抱してくれて、離脱症状も正しく出て薬が抜けきりやっとシラフになった時、希死念慮おばけを抱えつつもう一度恋人とあの記憶のない時に何があったか話してもらった。

「首吊るの辞めたとき、死ぬのが怖いって思ったって言ってたよ。まだやりたいことがあるからって」
恋人から聞かされた私の知らないあの時の気持ち。まだやりたいことってなんだ。お店を出すことなのかな。結婚すること?子供を作ること?お客さんと会うこと?うーん…希死念慮おばけはそんなの関係なく私を殺してくるくらい怖いやつだけどな。あと自分でも驚いたのは燃えるゴミを出していたらしい。死ぬってなったら明日のこととか関係なくなるはずだよな。なんでゴミ出しなんてしたんだろう。

今でも希死念慮おばけが私を襲う時「あの時紐が千切れなければ」「あの時太い紐だったら」と思いつらくなる。けど燃えるゴミを出していたってことは、最後の最後まで希死念慮おばけと戦ってたってこと?そうだとしたら、ごめんけどまだお前が私を殺したい気持ちより私の生きたい気持ちのほうがちょっとだけ強いな。あの時は薬でおばけが強力になってたけど、薬を飲まなきゃ私のほうがお前より強い。最近「今度渡したいものがある」だとか「鹿児島から会いに行くね」だとか「また声が聞きたい」「一緒に酒が飲みたい」と生きてなきゃいけない理由がどんどん増えるせいで、今日もおばけが後ろで舌打ちをしている。ざまーみろ。私は今シラフだ。お前に私は殺せないよ。

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