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送りバントは手堅くない!だけど送りバントをする理由は何か

 こんな記事が日経新聞から発表された。
要約すると
「打率.103以下の打者が打席に立ち、無死2塁か無死1、2塁の状況のみバントをすると得点効率があがる」
というものである。

 これを踏まえると柳田鈴木誠也といった強打者はもちろん、殆どの野手はおろか菅野や西勇輝など打撃が得意な投手すらもバントをする必要が無いということだ。

 しかし正直な所、そんなことは野球をしているものからすれば分かりきっている。投手からしてもバントでアウトを1つくれるのが嬉しい場面だってある。それをひっくるめた上でバントを選ぶ理由があるのだ。そういった場面を紹介していこう。

①無死二塁からの送りバント

 記事の中にあるように無死2塁の走者を3塁へ送るバントは有効的だ。一体何故か。

 それは得点パターンが増えるためである。

1死3塁となれば、ヒットやエラーはもちろん外野フライでも得点が入る。更には内野が前進守備を敷いていればヒットゾーンが通常より広がるし、高く弾んだ内野ゴロでも1点になる。

 ワイルドピッチやパスボールでも1点になるし、それを防ぐためにフォークボールやスプリット等の落ちる球は投げさせにくくなる。スクイズやセーフティスクイズという手段もある。そういったプレッシャーをかけることで、無得点に終わっても相手のムードにさせない。そういった事が大切なのである。

②投手への送りバント

 2つ目は投手への送りバントだ。
 記事によると打率.103以上の選手は送りバントをせず、強行作に出た方が得点が期待できるとされている。

 この表は今シーズンの投手の打率ランキングトップ20である。各チームのローテーション投手の名前が多く乗っているが、全員が分岐となる打率.103をクリアしている。つまりここに名前がある選手は全員送りバントをしない方が得点が入ることになる。

 だが絶対にやめておいた方がいい。野球は攻撃をするだけのスポーツではない。もちろん、バントが苦手な投手は指を詰められても困るしバスターやヒッティングでもいいだろうが、最低限バントが出来るなら送った方がいいだろう。

 無駄にヒッティングしてゲッツーになると、チャンスを潰すだけでなく休む暇なくマウンドへ上がる必要があるし、ランナーに残れば無駄に走り回って足腰への負担も来る長いシーズンを考えると出来るだけ下半身への負担は避けたい。相手を抑えるという仕事を1年間全うする為に投手の送りバントは必要だ。

記事の文中に
「送りバントは極端に打力の乏しい打者を除けば合理的とも手堅いともいいがたい」とある。
これは「得点を取るため」には合理的でも手堅くもないと言うことで、「勝つため」には合理的で手堅い作戦なのである。

③相手へ流れを渡さないため

 最後は相手へ流れを渡さない為のバントだ。

 よく見かけるのは甲子園などで1点リードのチームが試合終盤、主力打者にも送りバントをさせるという場面。
「何故4番にバントなんだろう?」
「この選手のバッティング見たかったな」
などと思ったことのある人も居るかと思うが、ベンチからするとしっかりとした意図がある。

それは上記したように
「相手に流れを渡さないこと」である。

 監督という生き物は常に1番最悪の想定をイメージして采配を振るっていることが多い。
【試合終盤1点リード・無死1塁】
この場面で1番最悪なのはゲッツーでランナーが居なくなること。チャンスを潰したということ以上に、相手が勢いづいて攻撃に回ってくる。これが1番嫌なのだ。それならば4番にバントをさせてでも1死2塁で相手にプレッシャーをかけながら攻撃を続ける。攻めることだけが野球では無いのだ。守備のことも考えて送りバントをする。こういったことを踏まえながら野球を見ると更に面白くなるのではないだろうか。

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