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韓国大学院留学についての話(学部vs大学院編)

noteから、アカウントを作って4周年の通知が来た。noteを4年も放置している間に、いつの間にか日本の大学生から韓国の大学院生になって修士号を取っていた。最近たまに韓国の大学院について質問を受ける事があるので、修士が終わった記念に少しまとめてみようと思う。

なぜ韓国で大学院?

私はソウル大学のとある人文系学科の大学院に通っている。気づけばもう3年目で、9月からは博士課程だ。(ソウル大の人文系の大学院に日本人がほとんどいないので身バレするかもしれないがしょうがない。)

私がなぜ韓国の大学院に入ろうと思ったのか?それは、私の研究分野が韓国以外でほとんど学べるところがなかったからだ。

学部までは日本の大学に通っていたので日本での大学院進学も考えたが、日本の大学に私が研究したい分野の専門の教授がほとんどいないこと、どちらにしても進学費用は奨学金or学資ローンで賄わなければいけないことを考え、留学を選んだ。

日本の大学院は予め指導教員を決めて応募することが多いが、ここで一つ注意すべきことは、基本的に大学では「准教授」「教授」以外の職位の教員が大学院生の指導教員になれないという点だ。

学部のゼミの先生に院進の相談に行ったら、大学院の指導教員にはなれないと言われた人もいるのではないだろうか。
学部生のうちは教員の職位など気にする人は少ないかもしれないが、実は非常勤の講師はもちろん、常勤の教員の中にも職位が「講師」の教員がいる。彼らは昇進すれば「准教授」や「教授」となるが、まだ「講師」のうちには正式な指導教員にはなれない。

そんな場合にも、近い専攻の別の教授に指導教員になってもらい、実際の指導は「講師」の先生や他大学の先生に見てもらうという方法もある。
ただ、書類上の指導教員の専攻が自分の専攻と違う場合、のちに専門学会などでチャンスが回って来にくかったり、毎回説明をしなければいけない面倒さはあると思う。

私の場合、そもそも分野が近い教授もほとんどいなかったので、それが日本での院進の大きな壁となった。

私のような理由でなくても、韓国で勉強してみたいとか、将来韓国で働きたいとか、理由はなんでもいいと思う。

正規留学したい大卒者には大学院がおすすめ

ただ、たまに日本で大卒したのに韓国で学部に通い直す人を見かけるが、全く別の専攻を本気で勉強してみたいとか特別な理由がない限り、学士の学位があるなら大学院に行くのをお勧めする。

理由①就職に有利

日本では文系の専攻で大学院進学する人がほとんどいないので、大学院=難しい、研究者にならなければいけないといったイメージがあると思うが、韓国には欧米ほどではなくても院進する人が一定数いる。

さらに、日本では文系の学位は就職にはなんの役にも立たず、むしろ歳のせいで不利になることさえあるが、韓国で就職するなら、修士の学位がある方が有利だ。

韓国ではほとんどの人が大卒資格を持っているので、大卒であることはアドバンテージにならないばかりか、大学のランクが良くても+αのスペックがないと就職できない。日本人の場合、日本語ができるのがスペックといえばそうだが、外国人であることがそもそもビハインドでもあるので、やっぱり韓国の学部を卒業するだけでは足りず、英語やその他資格を取っていないとなかなか就職先が決まらないと思う。

その点で、修士の学位は資格の一つになりうる。もちろん学位だけで全てが解決するわけではないが、ある程度専門性も生まれるし、韓国語or英語で難しい授業を聞いて論文を書いたというイメージを持たせることもできる。

理由②韓国の学部には留学生が多すぎる

日本では正規留学というとかなりハードルが高いイメージだが、海外では意外とそうでもない。特に国内での受験戦争が厳しい中国の学生は、国内で望んだ大学に入れないくらいならと、地理的にも近くビザや入学の要件も比較的厳しくない韓国を選択することが多い。

これはTMI、本題とは関係のない情報だが、韓国の大学は書類に問題がなければ外国人留学生を入試で落とすことはほとんどない。
なぜかというと、韓国の大学の多くは外国人留学生からの学費が経営の頼りの大きな柱だからだ。

韓国はもともと日本の半分の人口しかいない上に、出生率は1を切る超少子化社会だ。さらに、受験戦争が厳しいため国内大学の序列を守るため、韓国人学生の定員が政府によって大学ごとに大体決められている。名門大が経営のために学生をたくさん入学させて入試難易度が落ちる事がないように管理されているのだ。そのため、大学が任意に定員や合格者数を変える事ができない。

しかし、留学生の場合はその制限がない。理論上は留学生なら無限に取る事ができるのだ。だから、韓国の私大は書類に不備がない限り留学生は合格させる。ただ、国立大の場合は多少経営が傾いても今すぐ潰れることはないので、たまに落とすこともあるというが、それでもほとんどの学生をとっている印象だ。

留学生が多いことの何が問題かというと、就活する時、韓国の大学の学位がある外国人がそこまで珍しくないということだ。
しかも、現在の韓国では日本語より中国語や英語の方がニーズがあるので、その点でも日本人で韓国の大学卒であることがそこまで大きな武器にならない。

また、慶熙大や成均館大、韓国外大など、特に留学生が多い大学では、そもそも韓国人と留学生のコミュニティが分かれていて韓国に留学に来たのに友達のほとんどが中国人で韓国語もろくに通じない、なんてことがよくある。(上記の大学では、一つの学部の中で留学生が過半数という場合もあるらしい。)

それはそれで楽しい学生生活になるとは思うが、語学力という面では、韓国で大学を卒業したのに、日本の大学で韓国(朝鮮)語専攻した私より韓国語ができない人もいた。

理由③学部より授業が少ない

上でも書いたとおり、大学院というと授業が難しいイメージがあると思うが、授業のハードさでいうと学部の方が大変だと思う。

学部は、1学期に10〜20程の単位を取る必要がある。日本の大学とスケジュールはほとんど同じだが、課題の量や試験のガチさが全く違う。日本の大学は出席日数を満たせば成績は悪くても卒業できるという感覚があるが、大学のGPAが就活の大事な材料となる韓国では、すべての学生が1授業1授業に命をかけている。出席日数だけでは卒業できないばかりか、普通に毎回授業に出て課題をこなすだけでも死ぬほど大変だ。

それに比べて大学院の場合、授業数が少ない。学校や専攻によって多少差があるが、授業は週に3回ほどが普通だ。(1回の授業が3時間)
数が少ないぶん課題は重くなるが、成績を甘くつけてくれるという点も利点だ。
大学院の場合研究がメインなので試験で定量的に成績を測る事が難しい。また、院生は奨学金に応募するとき成績制限がある場合が多いが、学科としても奨学金を取る院生が多い方が実績になるので、ほとんどの教授が公平に皆にA以上をつける場合が多い。実際に私も入学してからAかA+しかもらった事がないが、大学院生のほとんどがそうだと思う。

大学院の授業は思ったより難しくない

「とは言っても授業や論文が難しいんでしょ?」と思う人もいると思うが、私の個人的な意見ではそうでもない。

大学院の授業は、少人数で相互に教授や他の学生とコミュニケーションを取りながら質問できる機会もあるし、学位論文は教授に直接指導を受ける事ができる。
ここら辺は個人差もあると思うが、大講堂で録音と写真をとりながら一生懸命先生の板書を暗記したり、突然連絡が取れなくなる人とグループワークをしなければならない学部の授業より私は楽に感じた。

学部の時と同じ専攻でなくてもいい

最後に、これは日本や他の国でも同じだが、学部で専攻した分野と違う分野の大学院に進学することもできる。

私は学部の専攻とほぼ同じ分野だが、知人の中には日本の大学で専攻した分野と全く違う分野のソウル大大学院に応募して合格した人もいる。
研究計画書で、その分野に十分な関心とある程度の予備知識があることをアピールできれば大丈夫だ。


ここまで、韓国の学部と大学院を比較して大学院がおすすめな理由をまとめてみたが、あくまでも個人の意見として読んでもらいたい。

次はソウル大学の大学院が実際どんな感じなのかについて書きたいと思う。(次回があれば。)

質問や意見があればぜひコメントを。




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