夫に恩を売って、恩が大きくなって帰ってきた話
恩を売って、恩返しされたらめちゃめちゃ大きくなってきた話
人は恩を売ったら、返してほしい生き物なんだと最近、改めて実感した。
その日、私は死にたくなるくらい調子が悪かった。
(…もう嫌だ…生きていたくない…けど…生きねば…)と心の中で戦いが起こるほどだった。
なぜ、その日は調子が悪かったのかというと、心身の不調がトリプルならぬ…クアドラプル(4はこういうらしいよ!)コンボを決めていたからだった。
私にはうつという性質があり、これは中学生からの折り紙つきだ。
何かとすぐこの世を去りたいと思うことが多かった。
その日のうつもそんな感じですぐに逃げる方法を提示してくるタイプだった。
(う…うぅ…ホルモンか…ホルモンだろぉぉおおお…)
心の不調については女性ホルモン(黄体ホルモン)の影響による、PMSだ(たぶん)
体の不調は、昨日からの頭痛と今朝からの腰痛だった。
腰痛に関しては黄体ホルモンの影響もあるかもしれない。
(黄体ホルモン……)
これがクアドラプルコンボ。
これだけコンボが決められていると、もう辛くて辛くて……
毎度、この時期はそんなふうに気持ちが落ちやすいとわかってはいるものの、確実に対処できるわけではない。
さらに気持ちや身体の不調に、ここ最近のがんばりが私に降りかかってきていたのだと思う…
今年は私の家族に会う予定がのちに詰まっており、その計画を立てたり、必要なものを用意したりと忙しく動いていた。
それがもうすぐそこまで近づいているので、焦りもあったり、なんだったり…
急げ、急げ〜!と動いていたのが、この不調に積み重なって私を襲っていた。
それを夫は知らない。
いつも不調の時はただマット上に横になっていれば良かったが、その日はもうお布団で横になりたかった。
(つい先ほど、起きたばかりであったのに…)
それに夫が驚いていたのを見た(気がする。というかまずいという顔をしていたように思う)。
今、思うといつもと違う動きは、人を混乱させる。
その日の夫にはやることがあった。
だから私に構っている暇はなかった。
しかし私は普段と違うことをし出した。
夫はどうにも落ち着かなかったのではないだろうか。
それでもやらなければならないことをやっていたので、特に私に話し掛けてくることはなかった。
昼近くになる。
私は布団から出られなかった。
夫は外食するかと聞いてきたが、「ご飯は…いらない…食べてくる?」と言った。
それほどにメンタルダウンしていて、動けなかった。
夫からしたら普段と違う妻の動きに驚いていただろうし、何より心配だっただろうと思う。
私にご飯は食べないといけないこと、なにが食べたいかと聞いてきたが、食べたいものが何一つとして浮かばなかった。
その後、夫は外食しに出掛けて行った。
「ご飯、食べてくるね。休んでてね、何か買ってくるからね」
その言葉を残して、鍵の閉まる音がした。
私は布団横になり、夫の体調が悪い時のことを思い出した。
夫の調子が悪く、唸っていた時、私はスーパーに買い出しをし、昼食を作ったり、夕食を作ったりしていた。
うちでは休日のお昼は夫の担当、夕食は平日も休日も私担当という決まりがある。
夫の調子が悪いから、心配でスーパーに買い出しに行き、適当に簡単な料理を用意した。
食べたくなるまで、待った。
できるだけそばにいた。
恩、売ってたよな…
私は夫に恩を売っていたつもりだった。
しかし夫は昼食を食べに出かけた。
(いや、食べておいでと言って送り出したんですけどね…わかってますって…)
グッッ……さみじいぃぃぃ!!!!!
人はとても身勝手だ。
そう私は横になって休みながら、あんなに恩を売ったのに!と憤っていた。
怒りは腹を空かす。
いやしかし、私は恩を売りたくて、そんな行動をしたわけではないな…
心配だったから、やっただけで…別に返して欲しかったわけでもないよな…
(それに他でいっぱい返してくれてる、本当に良き夫)
あぁ、こんなことが気になる程、病んでいるのかぁ…
これは明日、自分の機嫌を取りに、どこかへ出掛ける方がいいかもしれんなぁ…
そんなことを考えながら、人のエッセイを読んでいると、扉が開く音がした。
(帰ってきた?なんか買ってくるって言ってたから、それかなぁ…)
帰ってきた夫は、両手にどっさり弁当、ピザ、おやつのドーナツを抱えていた。
「え?」
驚いた。
予想より弁当が多い。ピザは二つもある。
なんで?何があった?
私の想像ではあなたは一人、カウンター席でご飯を食べていたのに…?あれれ?
「ただいま、お昼のお弁当と、夜ご飯にピザ!おやつにドーナツを買ってきたよ!これで外に出掛けなくても大丈夫だよ!ゆっくり休めるよ!」
仏かと思った…
神様だった…
あなたを疑い、クソゥ…と思っていた私を今すぐ土下座させたい。ごめんね…
夫は外食をしていなかった。
電車で一駅向こうのスーパーやお弁当屋さんに行っていた。
ドーナツもそこで買ったらしい。
「一人で食べてもつまらないから。ゆっくり休んで、元気になったら出掛けよう」
やっぱり神様だった。
そのあと、私はとにかく夫にありがとうを伝えまくった。
うるさいほどに伝えた。(たぶん邪魔だった)
心がこんなに弱っている時、人にこんなに大事にされているのが目の前に形になって現れるととても嬉しくなる。
両手いっぱいに袋を抱えた夫の姿を私は一生忘れない。
本当に神様だった。
以下、夫への惚気
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