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私だけの特捜最前線→8「ナーンチャッテ おじさんがいた!~高杉刑事のシビアなドラマ」

※このコラムはネタバレがあります。出演者は敬称略

特捜最前線には、その時代の世相を反映させたドラマが時々出てきます。第54話で放送された「ナーンチャッテおじさんがいた!」も、当時(昭和53年)都市伝説となった「なんちゃっておじさん」にちなんだ話でした。

電車内で迷惑行為をする者にちょっかいを出し、怒られると大声で泣きわめき、あたふたした迷惑行為者が立ち去ると、「ナーンチャッテ」という意図でベロを出しながら、両手で丸印を作るという中年おじさん。

ある事件の捜査で中年おじさんを探すことになった高杉刑事(西田敏行)。事件は、迷惑行為をしていた3人組を注意した男性が、帰り道に撲殺されるというもので、残された子供のためにと高杉は奮起します。

中年おじさんと出会い、事情を聞くことができた高杉。おじさんの行為は単に正義感だけではなく、同じような事件で殺された息子へのノスタルジーや犯人への復讐という強い意志が込められていたのです。

しかし、おじさんは犯人に返り討ちに遭って殺されてしまいます。高杉はおじさんの遺志を継ぎ、迷惑行為者への「ベロ出し」を実行していき、ついに犯人にたどり着くのです。そして犯人逮捕に導きました。

ストーリー自体も非常に激辛で、遺児もおじさんも全く救われません。それに加え、ドラマの中で「見て見ぬふり」をし、犯行時の状況すら語りたがらない一般大衆の姿も赤裸々に描かれています。

高杉や正義感の強い吉野刑事(誠直也)は憤りを感じますが、紅林刑事(横光克彦)は「武器を持たぬ者に戦えという権利はない」と反論します。捜査の過程で意見をぶつけ合うのも特捜の特徴的なシーンといえます。

この作品では、なんといっても西田敏行氏の素晴らしい演技が光ります。コミカルさが持ち味ですが、人情味あふれたり、感情を爆発させたりと、非常に表情が豊か。短期間で降板してしまったのが残念です。

もう一人、中年おじさん役の今福正雄氏の熱演もドラマを引き立たせてくれました。深い悲しみを胸に秘めながら、表面上は極めて陽気にふるまうおじさんの姿には胸を打たれます。名優あってのドラマですね!

noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!