「わからない」っていう感覚をわかろうと努力している話 27.

僕が生徒に少し難しいことを話すと、「よくわかりません」という人も多い。わかりませんと言わなくても、「あ、コイツわかってねえな」ってのはすぐにわかる。
質問すると案の定わかっていないことが多い。
本人はわかっているつもりでも、打たせてみるとできない子もいる。そういう子はたいてい「頭ではわかっているんですけど...。」と言う。

お、コイツわかっているしできているな!いいぞ!と思う子は、僕の感覚で言うと100人に1人くらい。まあ中学生はそんなもの(笑)。

わかっていてできている子の中で、他人にわかりやすいアドバイスができる子は1000人に1人いるかどうか。

さらに他人にアドバイスをした上にその子にコツを掴ませられるような指導をできる人は1万人に1人くらいかもしれない。僕もそこを目指しているが、まだたどり着けそうにない。頑張らなくては。


さて冒頭のタイトルについてであるが、自分ではすごくかみ砕いてわかりやすく話をしているつもりでも、実際に聞いてみると実は理解できていない子が結構いる、ってことはコーチを何年か続けて学んだ。

さてどうしよう。

①さらにわかりやすい例えを出して、理解させられるように頑張る。
②とりあえず見本を見せて、こうやってやるんだよとプレーで示す。
③頭では理解できていなくても、自然とその動きが身につくように練習メニューを工夫する。
④「なんでこんなわかりやすく説明してやってるのにわからねえんだよ」と怒る。


生徒に自分の深い考えを伝えるときは、可能な限りわかりやすいと思う言葉で説明することを心がけている。

それでもうまく伝わらないときはよくあるので、まず自分が手本を見せる。まあたいてい「お~」っていう感嘆がでて、それでその子の理解はストップしてしまうことも多いが。(笑)

次に、とりあえずやってみてと言ってやらせてみる。例えば1つのプレーで3つのポイントを教えたら、その中の一つでもできていればそこを見つけて褒めることを意識している。できていないところを指摘するよりも、ほんの少しでもできたことを褒めてあげると、僕のアドバイスに少し耳を開いてくれるようになる気がする。

ここまでで自分のアドバイスを身につけられる子は、センスがあるなあと感じる。そのような子はほとんどいないけど、たまにいるかなあ。言われたことをすぐにできる子はすごい。

でも僕自身もそういう天才タイプではなかったから、頭ではやろうとしてるけど実際できない、という気持ちはよくわかる。

指導者として僕がこういう時に考えることは、とにかく伝え方の角度をたくさん変えて、その子にあった言葉を探すことかな。

ソフトテニスを例に出すと、「下半身の回転を使ってボールを飛ばしなさい」とアドバイスをする場面があったとする。
たいていの生徒の頭には「?」が浮かぶ。
ある程度ソフトテニスのことを理論的にわかっている人はこれがどういうことかわかると思うが、中学生くらいの子に言葉で説明しても感覚が無いのでわからない。

まず下半身の回転はどういうことかについて考える。下半身の回転を使って打つということを一言で言うなら、僕は「軸足の股関節の内旋運動」と説明する。ここでも生徒の頭には「?」が浮かぶ。

なので中学生に説明するときは、「ひざを曲げて重心を落として、右膝を地面にぶつけるイメージで下半身を使いなさい」という。これは僕が高校生のときに先生から言われたアドバイスで、今でもわかりやすいなと思って使わせていただいている。
さらに、「打つ前にタメを作りなさい。そのために右足の太ももの付け根にしわを作ると上手くタメ(下半身の回転のタメ)ができるよ」とか「回転の力を外に逃がさずボールに乗せるために、左足で壁を作りなさい」とか説明すると、何となくイメージが付きやすいので、中学生も取り組んでくれるようになる。

抽象的な話をいかに具体的な表現に落とし込めるどうかって、結構その指導者の頭の良さとか考えの深さが現れると思う。指導者によって教え方の表現も教える順番も全然違うところが面白いし、奥が深いなあと思う。

指導者としてたくさん考えていることはあるが、それと同時に、「押し付けの指導」にならないようにすることも大切だと考えている。

中学生くらいだと、ただの手投げのフォアハンドストロークをこんなに理論的にやることがつまらないと感じる子も多い。それは当然だと思う。僕だってそれより試合をたくさんやりたい。

だから、そのバランスを取ることを忘れないようにしないといけない。中学生が難しいことを考えながら、基礎練を集中力を保ってできる時間は短いので、少しずつ取り組ませてあげてバランスをうまくとってあげることは日々の練習の中で僕も学ばないといけないところだなと感じている。

楽しい試合と深く考える基礎練のバランスを上手くとって、中学生にとって最大の効果が得られるように工夫するところが指導者の腕の見せ所なのかな。


こういったことを考えるのって楽しい、と思える時点で、僕はこの仕事が向いているんだろうなあと思ったりする。

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