夏の思い出.39

最近YouTubeで数年前のインターハイとかの動画を見ている。何か指導で使える材料はないかなあとか考えながら。

自分が現役の頃を思い出す。高校生の頃、ありがたいことに全国上位の選手と練習試合を含めたくさん試合をさせてもらった。今日本のトップで活躍している船水選手や内本選手、そのほかにも当時スタープレーヤーとしてテニスマガジンに乗るような選手たちと試合をさせてもらった経験は今思うととても貴重なことだったんだなと思う。

そういった経験から、ある特別な感覚を得られた気がしている。
実際にそういった強い選手と戦った人にしかわからないんじゃないかと思うような感覚というのかな。

それを言葉にするのは難しいんじゃないかと思うけど、頑張って言葉にしてみようかと思う。

まず全国トップの選手たちは、簡単にミスってくれる気がしなかった。これは決まった!というボールも普通に返してくるから、1ポイント取るのに県大会でいうと3ポイント分くらい頑張らないといけないようなイメージ。

次にテンポ。これは見てる人にはあんまりわからないかもしれないけど、トップ選手はボールにつくのが異常なまでに早く、その分普通の選手よりコンマ数秒早く返球してくる。そのコンマ数秒早いせいでこちらの準備は遅れ、返球が甘くなり、簡単に前衛につかまってしまう。そのコンマ数秒のためにとてつもないトレーニングをしているんだと想像できる。

一番違うなと思うのは、球の質。トップ選手のボールは1バウンドした後に加速して自分に向かってくるのだ。県大会で戦う選手とはまるで違うボール。

僕が一番印象に残っている相手が内本選手。彼と乱打をしたときに全然思うように打ち返せなかったことを今でも鮮明に覚えている。

なぜ県大会で簡単に勝てる選手が全国大会に行って簡単に負けるのかを不思議に思うことがあったが、トップ選手とギリギリ全国に出られるような選手とではレベルが全く違う。「普通」の基準が全く違うのだ。

全国にギリギリ出られるくらいの選手だった僕だけど、まったく勝負ができなかったわけではない。時には勝てることもあったし、1点も取れずに負けるようなことはなかった。

僕がトップ選手と多少なりとも勝負できた理由を自分なりに分析すると、大きく2つの長所が自分にあったからだと思う。

1つは「考えるテニス」を頑張っていたこと。僕なりの考えるテニスとは、自分がその日打てるボールを分析し、相手の得意なパターンと苦手なパターンを分析し、カウントや天候などを含めた時に相手が次に何をしてくるかを予想し続けることだと思っている。

また、相手のフォームを見てどんなボールを打ってくるのか予想するのも得意だったと思う。僕は部内でビリを争うほど足が遅かったけど、「お前の走りはスローモーションに見えるけど、なぜかギリギリのボールにも届くね」と言われたことがある。それはフライングが上手かったからだと思う。相手のフォームを見て上手くフライングできればボールには届く。足が遅かった分予想の力でカバーしようと頑張っていた。それも一つの「考えるテニス」。

二つ目はペアリングだ。高校時代の僕らのペアは個々に能力が高かったわけではないため、「ペアリングだけは日本一を目指そう!」と言って頑張っていた。
何をしていたかというと、自分のペアの打つボールや動きに対しての次にどんな動きをするのが良いか考えることを徹底的にやっていた。

例えば、サーブレシーブのコースは必ずペアで確認し、3本目攻撃をどうするかまで毎ポイント決めていた。自分のペアが打つ場所を必ず話し合い、次の相手の返球を予想して相手よりコンマ数秒早く動けるようにすることを徹底していた。
カバーリングも徹底して練習した。自分の前衛がポーチに出た時は必ずその逆に走ることをクセづけていた。先を通されたら前衛の責任、見て抜かれたボールをフォローできなかったら後衛の責任、というように考えてやっていた。
自分の前衛がスマッシュを追ったときには態勢を見てフォローされた時のことを考えて前に詰めることもやっていた。


「考えるテニス」と「ペアリング」に関してだけはトップ選手に肩を並べるだけの自信はあったし、それが今の指導に生きている気がする。


全国で強豪校と言われる学校の選手で考えてテニスをやっていない学校は無いだろう。それだけ考えることは重要で、考えたうえで練習してそのプレーを考えなくても試合でできるようにすることが「努力」なんじゃないかと思う。

久しぶりにトップ選手の試合をしっかり見ていろいろ思い出すことが多かった。

動画から聞こえてくるセミの鳴き声が懐かしく感じた。今年こそはあの頃の夏のような大会ができることを心から願っている。

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