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ヨックモックの思い出

 先日、デパートの地下をふらふらしていたら、ヨックモックのパンフレットが目についた。幼い頃から親しんでいる、綺麗な紺色である。ヨックモックといえば、やはり綺麗な紺色の缶に入ったシガールが有名であろう。だが、子供の私はあまり好きではなかった。なんというか、他のクッキーと比べて甘く濃い印象をもっていた。今ならバターをふんだんに使っているからだとわかるが、喜んで食べるというより、なんとなく食べるものだった。

 ヨックモックは頂き物のイメージがあり、大人になるにつれ食す機会も減っていた。そんなある日、チームに配属された新入社員の子が、ヨックモックの缶を片手に挨拶に来てくれた。(ご存知の通り、ヨックモックのクッキーは、ひとつずつ品のあるデザインの個包装になっているため、中身が見えない。そうした時、私の脳内は、何があるんだろう、缶に入っているパンフレットを読ませて欲しい、私の前に差し出されたら一瞬でラインアップを把握し決断しなければと、大変うるさい。)
 有り難くひとつ頂戴し、コーヒーと一緒にいただいた。ドゥーブルショコラオレというミルクチョコレートがサンドされたクッキーであった。するとなんだかとっても美味しいのである。そんなのわかっていると言われてしまうだろうが、とってもとっても美味しい。コーヒーが進む。もう一つ食べたい。いただけないかしら。かなり衝撃だったが仕事中であり、なぜこんなに美味しいのか、深く考えることはできなかった。

 そんなこともすっかり忘れていたが、いただいたパンフレットを読みながら、ふと飲み物なんじゃないかと思い当たった。子供の頃は、お菓子と飲み物を合わせる習慣がなく、クッキーだけで食べていた。シガールは牛乳と相性が良さそうだが、あまり牛乳が好きではなく、我が家に常備されていないため、一緒に食したこともない。
 社会人になって、ブラックコーヒーの美味しさを覚え、スイーツと一緒に味わうことを覚えた。だからこそ、久しぶりに食したヨックモックのクッキーは、コーヒーとベストマッチで大変美味しかったのだろう。なるほど、コーヒーのソーサーにシガールが添えられているのはこういうことか。なんて嬉しい組み合わせ。

 ああ、今すぐヨックモックの缶を買って、たくさんのコーヒーと一緒に、全種類味わってみたい。紅茶にも合いそうだ。そういえば子供の頃、祖父母の家で、ヨックモックを食べ、食後に飲む緑茶がやたら美味しかったのはそういうことか。後じゃなくて緑茶と一緒に食べてごらんと幼い私に伝えたい。

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