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笑って読めなかった絵本



息子が鼻風邪を引きました。

鼻水と咳以外は症状がないので数日様子を見ましたが、治る気配がないので病院に連れて行くことにしました。

しかし、その日はちょうど小児科が休診日で、症状も鼻と喉だけであることから、耳鼻科に行ってみることにしました。

初めて行ったので、問診票に記入していると、息子が「あそこに絵本があるよ」と言いました。

息子が指差す方向を見ると本棚があったので、「これ書いたら読んであげるから、好きなの持っておいで」と伝えました。

息子は喜んで本棚のところに行き、「これにする!」と一冊の絵本を持ってきました。

私はちょうど問診票の記入が終わったので、受付に提出し、息子が持ってきた絵本を手にとりました。

そのときは裏表紙が上になっていたのですが、暖かみを感じるやさしい水彩タッチの絵でした。


そして、「◯◯賞受賞作品」と書かれていました。なんだかすごそうです。


どんな絵本なのかな、と思ってひっくり返して表紙を見てみると


「みみくそくん」



という題名でした。

私は一瞬、固まりました。



裏表紙の雰囲気とのギャップが激しすぎる!!!



いや、これ以上ないくらい耳鼻科にふさわしい題材ではあるのですが、ふんわりやさしい絵柄でみみ「くそ」ってびっくりするでしょ!!!


「くそ」ですよ。漢字にしたら「糞」!!!!!


ファンシーな雰囲気でごまかそうとしても、糞は糞なんですよ!!(すみません)


私は絵本を開く前から、笑いが込み上げてきてしまいました。


意を決して最初のページを開くと、「ぼくの名前はみみくそくん」みたいに、自己紹介から始まっていました。



これを息子に読んでやれというのか…


不特定多数の人に囲まれ、シーンとしている耳鼻科の待合室で!!!


私は最初の一文字を読もうとしましたが、笑ってしまって声になりません。


息子はわくわくしながら絵本を見つめています。


でも、私は絵本を開いたまま、震えるばかりです。


何度か「ぼくの名前はみみ…」と最初の一文を読んでみましたが、どうやっても最後の「。」までたどり着くことができませんでした。



できることなら、ひっくり返って大声で笑いたい…


ひとしきり笑ってからでないと、今この本は読めない。



でも、こんな静かな耳鼻科の待合室で、そんなことできるはずがありません。


というか、この「笑ってはいけない」状況が、さらに私を笑わせてきます。

待合室には他に、一人で来ている年配の男性と、息子と同じくらいのお子さんを連れたお母さんがいました。


あのお母さん、笑って絵本が読めないなんてとんでもないとか思ってないかなぁ…

そんな勝手な被害妄想も、私を追い詰めます。



私は最初のページがどうしても読めないので、飛ばして次のページから読もうとしました。


次のページからは、みみくそくんがある小学生の男の子の耳の中に住んでいて、その子に存在を知られていって…と物語が展開していくから、まだいいと思ったのですが、


その男の子がふざけて授業を聞いていなくて、いかにもすっとぼけた様子のイラストなのです。

(だけど、みみくそくんはちゃんと授業を聞いていて、男の子に問題の答えとかを教えてくれて…という風にストーリーが展開していく)



無理!!


もう、何もかも無理!!!(笑)



私は笑いをこらえすぎて、ついに目から涙がこぼれ落ちました。


マスクをしていてよかったと、心から思いました。



私はどうしても絵本を読み進められないので、息子に

「つよちゃん…この本おもしろいねぇ(笑)」

と、息も絶え絶えに言いました。


もともと内気な性格の息子は、初めて来た場所なので大人しくしていて、さらに母親の様子がおかしいのを察知したらしく、余計なことは言いませんでした。


試しに、「みみくそくん」の絵を指差して「これは誰?」と聞いてみたら


「ひよこさん」と言われました。



たしかにみみくそくんは黄色くて丸くて、ひよこに見えなくもありませんでした。



私はもう、何を見ても何を言われても笑いが止まらない状況なので、また声を殺して笑い続けるしかありませんでした。


そうしているうちに、息子が診察室に呼ばれました。


助かった…!と思いながら、私は急いで絵本を片付けました。



私の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃです。


「お母さんもうつったんですか?」って言われないようにしなきゃ、と、全力で鼻をすすり、まばたきをしまくって涙をマスクの中に落としながら、息子を診察室に連れて行きました。



その後はその後で、地獄絵図でした(笑)



息子は初めての耳鼻科で鼻水を吸われたり、リアル「みみくそくん」を取られたりして大号泣。


看護師さんと私に押さえつけられるも必死で逃げようとし、先生を蹴りまくりました。



診察が終わって待合室に戻り、さっきの絵本を持ってきて続きを読ませようとしましたが、息子は「死ぬかと思った」という様子で、とても絵本どころではありませんでした。


なので、抱きあげて「頑張ったから、ドラッグストアでアンパンマン(のお菓子か何か)買おうよ」と言うと、一瞬正気を取り戻しました。

でもまたすぐに「…うえ〜ん(泣)」となったので、「アンパンマン買いに行く人〜!」と息子の耳元でささやいたら、近くに座っていたおば様が黙って手を挙げてくれました。


私が「あっ…」と言い会釈すると、おば様は少しニコッとしてくれました。



帰宅してから「みみくそくん」を検索してみましたが、何ということはないごく普通の絵本のようです。

さっきも書きましたが、やはり耳鼻科で子ども向けに置いておくにふさわしい絵本だと思います。


…でも、私のような心が汚れた人間が、シーンとした待合室で見知らぬ人に囲まれながら息子に読んで聞かせるのは無理でした。
ごめんなさい。

もし図書館とかで見かけたら、結末を知りたいです。



そして約束の「アンパンマン買おう!」ですが



ドラッグストアでたまたま玩具付き菓子(菓子付き玩具?)が在庫処分になっており、3つも買ってしまいました…

半額以下の値段だったので( ̄▽ ̄;)


息子は「耳と鼻、痛かった」と言いつつ、このおもちゃで遊びながら心の傷を癒やしていました。





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