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2021年運 番外編 |蠍の国の王のヴンダーカンマー 残された3つの宝物

「マイカレンダー」冬号に掲載した、12星座12人の先生による2021年運。
蠍座は千田歌秋先生が「蠍の国の王のヴンダーカンマー2021」として、2021年の蠍座の運勢を「蠍の国」の貴重な品々と共に紹介しています。

そこで非公開となっていた、残り3つの宝物をnoteにてご紹介!
※ただし、今回は実物の絵はないので、文章のみでお楽しみください。

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●薬草「ダクリア」

 我が国の主神であり、冥界の支配者でもあるハーデース。闇深く閉ざされた「安息の谷」には、「落涙川(らくるいがわ)」が流れ込んでおり、その川岸にのみ、「ダクリア」という草が叢生している。人の魂は、肉体を離れてすぐ、その川を目指して漂っていくのだと信じられている。
 伝説によると、故人のために流す涙が足りず、嘆息の追い風が吹かず、哀悼の虹も架からないと、つまりは遺族の悲しみの念が少ないと、その魂は迷った挙句、安息地に辿り着く前に力尽きてしまうという。
 そこで人々は、そうならないように泣き女「コレー」を呼んでから葬儀を行うのである。泣き女は「ダクリア」を煎じたものを服用して慟哭(どうこく)し、涙の川を流し、惜別の風を送り、美しい道標の虹を架けることで、魂が迷わないようにするのだ。
※ダクリアは涙、コレーは乙女の意。

2021年の蠍の国の民へ……
 2021年は、過去との決別も一つのテーマである。しかし、単に不要になった物や人を手放すだけでは、心身の整理はできまい。執着や名残惜しさを断ち切る、覚悟と行動が必要なのだ。この薬草を飲んだ時のように、悲しみの感情が強く働くことによって、はじめて浄化がもたらされるだろう。

●楽器「スコターディ」

 西の果ての「死の島」の中央には、冥府の糸杉が聳(そび)え立っている。この祝福された大樹は、茶色い通常の枝に加えて、黒い常闇の枝も生やしている。普段は眼に見えない常闇の枝は、水に触れると黒くなり、そして音が鳴るという特殊な力を持っていることで有名だ。
 常闇の枝で弦を、通常の枝で共鳴胴を、樹幹で支柱を作ったハープ「スコターディ」は、岸辺に置く楽器である。潮が満ちると、海の波が弦に触れて、「死の島」の音楽を奏でるのだ。それは、生者には穏やかな眠りを届け、死者には清らかな挽歌を贈るのである。
※スコターディは闇の意。


2021年の蠍の国の民へ……
 2021年は、行動力を発揮できるからこそ、上質な眠りが必要になるだろう。水を浴びて、その流れと音を全身で吸収することをお勧めする。汝の肉体をこの楽器にして、良い眠りを招き入れるのだ。海やプールはもちろん、温泉やスパに行く、バスタイムを快適に過ごす、滝に打たれるなども良いだろう。

●剥製「ステュムパーリデスの鳥」

 神話によれば、「ステュムパーリデスの鳥」は、英雄ヘラクレスに追い立てられて、北部から逃げてきたとされている。青銅の翼を有する怪鳥だが、剥製を見ても明らかなように、実際には金属ではなく羽毛である。
 幼鳥では白い輝きを放ち、成長すると黄金色に、老いると赤茶けていくことが分かっている。餌に含まれる銅が体内に蓄積することで、羽毛が変色すると推測されており、まさに青銅が、銅の含有量によって白銅色から黄銅色、赤銅色へと変わるのと同じである。生涯を終えると緑青色に変化するので、絶滅した現在、生きている時の色を見ることは出来なくなった。

2021年の蠍の国の民へ……
 青銅は、錫(すず)と銅との合金である。2021年は主に水瓶座にいる錫(木星)は、夏ごろ一旦魚座に移り、その品位と美しさを増す時期がある。そこに重なる5月末からの一ヵ月は、牡牛座にいる銅(金星)もその美しさを誇り、この時期に青銅(木星と金星)の輝きは最高潮に達する。牡牛の対極にある蠍の国の住人は、その輝きを受け取る、つまり美しいもの、美味しいものを貰えるはずだ。

PROFILE

千田歌秋
せんだかあき●蠍座。東京の麻布十番にある、占いカフェ&バー「燦伍」のオーナー占い師兼バーテンダー。ビブリオマンシー(書物占い)の普及にも努めている。
https://khakisenda.wixsite.com/eranos


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