「タラてん」についての好き勝手な深読み
「タラタラしてんじゃね~よ」は、よっちゃん食品工業株式会社が製造・販売を行っているお菓子です。魚肉のすり身に豆板醤や醤油などを混ぜたもので、オンリーワンのピリ辛風味が多くのユーザーを惹きつけて止みません。
この商品名やパッケージイラストにガ~ンと頭をしばかれた覚えがある方は多いのではないでしょうか。私もそうです。本記事では、このイラストについて私が感じたことを記していくのですが、目標としては「誰がどうタラタラしているのか?」その答えにどうか辿り着きたいと思っています。
これから始まるものを考察と呼ぶのはあまりにおこがましく、「深読み」という言葉を掲げました。基本的には私が好き勝手言っているだけなので、次々に飛び出す屁理屈や矛盾には皆さまどうか目を瞑っていただいて、そうですね、「タラタラしてんじゃね~よ」をお近くの駄菓子屋で買ってきて、片手につまみながら読み進めてくださいね。
予防線を張るのはここまでとします。いくぞ~っ!!
●はじめに呼び名を決めたりします
あらためて、これが「タラタラしてんじゃね~よ(以下タラてん)」のパッケージイラストでございます。絶対に見たことあるはず!!
描かれている5人のうち、左に小さく並んだ4人のキャラクターは、おなじみ「カットよっちゃん(よっちゃんイカとも)」のパッケージにもいらっしゃいますね。初対面でないので、いったんおいときましょう。本記事では便宜上「よっちゃんズ」と呼ばせてくださいね。
右に大きく描かれたあなたはミュージシャンとお見受けしますが、どんなジャンルの音楽をやってはるんですか。あなたのことは「タラくん」と呼ばせて頂きます。ああっぶたないで……
文字情報としては、「タラタラしてんじゃね〜よ」という言葉が大きく書かれています。イラスト左上に小さく「よっちゃん」とありますが、これは何もよっちゃんを名指しして「タラタラしてんじゃね〜よ」と叱責しているというわけではなく、これはよっちゃんシリーズのスピンオフですよ、ということだと思います。よっちゃんが大活躍する本編とは別に、今回はタラくんの物語をお楽しみくださいね。みたいな形。ただし「激辛味」は味を端的に説明しているだけで、サブタイトルではありません。「るろうに剣心 伝説の最期編」みたいなことではないです。
●いつからあったんだろうね
ゴルフプレイヤーの渋野日向子さんが2019年に全英オープンで優勝を果たした際、「タラタラしてんじゃね~よ」をプレイ中に食べていたということも話題になったのを覚えていますか。当時の記事に「(タラてんは)1990年から販売を始めた」と書かれています。しかし「(よっちゃん食品工業株式会社の)ホームページによると」と記述があるに関わらず、私がサイトを閲覧した時にはそれを見つけることができませんでした。そこでまずは、パッケージイラストに「1990年説」を裏付ける要素があるかどうか探します。
タラくんのファッションは、若い頃の奥田民生さんのそれによく似ています。ユニコーンが「Panic Attack」というアルバムをリリースしていた頃の写真にはジャケットを着てパフォーマンスをしている民生さんが写っていたりします。この「Panic Attack」のリリースが1988年です。
日本では80年代後半~90年代前半にかけてバンドブームが起きていて、民生さんに限らず、当時お茶の間に姿を見せた無数のバンドマンの中にタラくんのようなファッションをした人はちらほらいらっしゃったみたいです(私は生まれておらず本や動画などで知るしかない! 曖昧でごめんなさい)。パンク/メタルミュージシャンの典型的イメージというよりは、ジャケット着てますし、バンドブーム世代の流行スタイルが反映されたイラストなのではないかなと私は思いました。「タラてん」と「イカ天」似てるし(絶対関係ないと思う)。
そう考えると、1990年販売開始というのはなるほどね〜という感じです。
いやいやいや、何年とかそういうのはええから、ほいでお前の考えはどないやね。そうですよね。これから色々見ていきます。
●まずここはどこですか
ここに至るまでが既に長すぎるので、同じ画像をここにも貼るしかありませんでした。スクロールするのが面倒な時ってありますよね。ごめんなさいね。
パッと見は、ステージ上にいるタラくんが、フロア(客席)のよっちゃんズに「タラタラしてんじゃね~よ」と檄を飛ばしている図。なのですが、いろんな部分に想像の余地がある気がする。ということでいくつかポイントを挙げつつ、言葉の真意を探ってみたいと思います。
まず状況として、ライブの真っ只中ということは分かります(リハかもしれんけど)。ロケーションとしては、ライブハウスか、コンサートホールか、でっかく東京ドームなのか、あるいはちいちゃく公民館なのか、他の特別な場所なのか……?
タラくんとよっちゃんズのあいだには明らかに高さの隔たりがありますが、これはつまり両者の立場が異なっているということ。また、高さだけでなく、色による空間分けもされています。
普通に考えたらこう。この場合「タラくん=演者、よっちゃん=観客」という関係が成り立っています。
でもこれって、あくまでもパターンのひとつに過ぎないのではないでしょうか。紫と黄の色分けがそのまま「空間の境界線」になっていることはわかりますが、画面外までこの線分がずっと続いているのかどうかは未確定です。
ためしに装置に焦点を当ててみます。イラストのこの部分を見てください。
モニタースピーカーもしくはアンプ。ともに音を出す装置ですがその役割は対照的で、設置する向きも真逆です。ただ、これがどちらであるにせよ、よっちゃんズに対して垂直に置かれているのが妙です。
①装置がモニタースピーカーである場合
ライブにおけるモニタースピーカー(「返し」とも呼ばれます)は、演奏者が自分達の音を聴くために設置されるものなので、置くポジションがどこであれ、ステージの内側(=演者側。ただし例外あり)に向けて設置されます。これを踏まえると、
こういう間取りになっていることが予想されます。「なんかの空間」については、ロビーとかトイレとか、各々好きな部屋を入れてください。
このケースは、ステージがかなり広くないと成立しません。小さいライブハウスではモニタースピーカーがステージの縁ギリギリに寄せられていることが多いからで、もしこのイラストのロケ地が小規模のハコだとしたらタラくんの立ち位置はこうなってしまうからです。
完全なはみ出をご覧下さい。
昔のディズニーアニメなんかを観ていると、「キャラクターが崖の上を歩いていて、そのまま空中を進んでいってしまって、途中でそれに気付いて落下する」みたいなシーンがよくありますが、タラくんはただちに落ちるでしょう。彼はディズニーキャラクターではないからです。
②装置がアンプである場合
対してアンプはステージの後方(だいたいドラムの横軸上)に、フロアーへ向けて配置されるのが常ですから、この場合の想像図はこうでしょうか。
「なんかの空間」については、楽屋とか物販コーナーとか、各々好きな部屋を入れてください。
タラくんは足をアンプに乗せていますがだいぶがっつり腿をあげております。中学生が自分の部屋で練習する、みたいな小さいモデルではないみたいですが、決して大きくはない。ライブをする空間が広ければ広いほど大きい出力のアンプや音響設備が必要になっていくので、この大きさのアンプだとかなりキャパ(収容人数)の少ないライブハウスになるかと。文化祭かもしれん。
●多分アンプやと思う
結局のところ、装置がなんであるかを断定することは難しいんですが、形状からみるとほぼほぼアンプだと思われます。このサイズのアンプを使う候補地としては、小さなライブハウスや、あるいは地域の公民館とか学校の文化祭、そういう場所ではないでしょうか。
そして(こっちが重要なのですが)「よっちゃんズは観客ではない」ことが判明しました。このまま次行きましょう。
●よっちゃんたちを見てみましょうよ
よっちゃんズがいる黄色エリアがフロアでないとしたら、彼らは観客ではなく別の立場の方々だということです。
これは位置関係だけでなく彼らの様子からも見て取れます。よっちゃんズに思いっきり近付いてみました。そしてそれぞれの表情に合う言葉を添えた。
これは、観客にさせてはいけない表情です。
一番右はまあわからなくもないというか、ビートルズのライブ映像でよくこういう感じになっているファンの方がいらっしゃいますよね。他の三人の顔はかなり困難な状況に直面しているように見えます。
ほならあんたら何モンやねんということなんですが、さっきの図で私はフロアでないエリアとして舞台袖を挙げました。舞台袖にいる人の候補というと……
①よっちゃん=ローディ説
ライブを行うバンドに随行し、機材搬入出や設営、サウンドセッティング等の手助けをする役目をもつ人々をローディと呼びます。
※今あんまりこの呼び方はしないかも。「ロードマネージャー」「ライブスタッフ」などの呼称が一般的かもしれないです。
②よっちゃん=対バン説
対バンというのは、いくつかのバンドがブッキングして開催される形式のライブイベントにおいて、自分達と共演するバンドのこと。
③よっちゃん=師匠説
師匠は、弟子に技術や心構えなどを教える存在(いりますか?この説明)。
②と③はほぼ同じ心境でしょう。袖からこっそりタラくんのことを見守っているよ。おっちょこちょいなところもあるけどいつも元気にしていてね。みたいな。
①については、どうしてローディがこのような顔つきになっているのかを考える必要があります。そこでタラくんの機材を見てみましょう。
●タラくんのEquipment
「タラタラしてんじゃね~よ」という言葉の意図を探りたい、と冒頭で私は書いていますが、今現在浮かんでいるいくつかの仮説の中のひとつが「普通にキレてる説」です。
そしてこれこそがキレの原因なのではないかという思い。タラくんが手にしている楽器を見てください。
新型の三味線か??
いやギターです。ギターのはずですが、弦が3本しかないばかりか、ペグに固定されるべきところを、かすりさえしていません。当然音は出ない。タラくんはなんとかせねばの気持ちでネックを握りこんでいますが、あまりに強く握りすぎてネックは曲がっとる。木製のネックがこれだけ曲がるというのは相当メチャクチャなパワーです。
あるいは、手の中はこうかもしれません。
チャリでライブハウスに来る途中でこけちゃって……的な。
ただそもそも、ネックが曲がっていようがいまいが、折れてようがいまいが、それを握ろうが握らまいが、シールドが繋がっていないので音は出ません。目に見えるほとんどの部分に問題があり、簡潔に言えば「コンディション最悪のギターをとりあえず持参した」形です。ギターがこんなんだったらそらキレる。
ギターの調整に失敗したのがローディ=よっちゃんズであるとしたら、彼らの表情にも説明がつきます……が、いまいち腑に落ちないのは、よっちゃんが4人もいる点です。
学生バンドのライブに彼らの友達がマネージャーや物販スタッフとして同行しているのを私は何度も見たことがありますが、それが複数人いたことは流石にありません(アマチュアでは稀有だと思います)。スタッフが4人も脇に控えているバンドなら、どこかしらの事務所に所属している可能性が高い。つまり、いざという時のバックアップ体制は万全なはずで、それなのにこんな状態のギターをほったらかすでしょうか? いやほったらかさない。
そうだとすると、よっちゃんズは単純にタラくんに八つ当たりされていたりするのか……?
●ドンドン説を挙げてみよう!!
ここまで、イラスト内の各要素から色々なケースを提示してきたのですが、正味な話くちゃくちゃになってきました。大体の手がかりは掴めたので、これ以上くちゃくちゃになる前に、もう全ての案を出してしまいましょう。そういうことでお願いします。ついに「タラタラしてんじゃね〜よ」の真意に迫る。
①あらかじめ決められたシャウト(▲)
決め台詞、或いはコール・アンド・レスポンス(以下CaR)の要素。台本に織り込まれたシャウトではないかという説。
決め台詞というのは猪木でいうたら「1・2・3、ダ~ッ!!」ですね。
CaRを猪木でいうたら「元気ですか~ッ!! \ウワ~ッ/」です。なんでも猪木でいわんでもいいよね。
ファンはこれを待ち望んでいるわけですから、ものすごくめちゃめちゃどえらい盛り上がります。タラくんの「タラタラしてんじゃね~よ」にも会場は湧くでしょうが、イラストではタラくんの他にはよっちゃんズが4人いるだけで、ファンの反応を窺うことができません。ただ、スタッフと観客の表情にそれほど大きな差があるとは思えませんので、今一度よっちゃんズの顔を思い出してください。
「タラタラしてんじゃね~よ」という言葉に対するよっちゃんズの明らかな動揺は、タラくんの準備不足を示唆しています。このライブで初披露となるCaRであれば、掛け合いを始める前に演者は観客に「これこれこういうやり取りをしようよハイお願いします」とどこかのタイミングで教えなければならず、それを失念したならばタラくんの落ち度です。仮に説明をしていたのだとしても、よっちゃんがあんまわかってなさそうなんでやはりタラくんの落ち度です。その前にギターをなんとかせい。
②悲しいすれ違い……(×)
①と似た状況ですが、違うのはタラくんが己のコンディションに全く気付いていないということでしょうか。よっちゃんズがあたふたしているのはタラくんに原因があるのに、タラくんはよっちゃんズを「ノリの悪い客/頼りにならないスタッフ」だと思って叱責している。これであってはほしくないですね……。
③普通にキレてる
これはかなりBADな状況です。でも「キレ」には種類があります。
[外向きのキレ](×)
これに関しては前の項でよっちゃんローディ説を紹介しています。キレる要因が他者にあり、その人へのアタックということになりますが、理由はどうあれライブ中にこれをするのはかなり最悪です。
[内向きのキレ](○)
自分でやらかして自分でキレる、というのは、ありえないことではないです。というか誰でもそういった経験があるのではないかと思います。
タラくんは本番前にギターの調整に失敗しめちゃめちゃにしてしまった。もしくは、ライブの熱さにあてられつい演奏に力が入りすぎてしまい、ギターのあらゆるパーツが破壊されたり失われた。けれど出演をキャンセルしたりライブを打ち切ることはできないわけで、「(何やってんだ俺は!)」→「タラタラしてんじゃね〜よ(俺)!」と心の叫びが漏れ出てしまった。よっちゃんズはそれに引いている。大体そんなカンジ。結構気持ちわかる……。
④ヒールとしての煽り文句(△)
よっちゃんズがまじで「よっちゃんズ」、すなわち「よっちゃんズという名前のバンド(名前はなんでもええか、、)」である、という仮定のもとでのみ成り立つ説。よっちゃんズのライブに乱入したタラくんが彼らを追い出しステージを占拠した末に吐いた言葉が「タラタラしてんじゃね~よ」。そんな……。
JAGATARAのテレビ出演時にG.I.S.M.のメンバーが殴り込み乱闘騒ぎになったという有名な事件がありますが、タラくんがそこから影響を受けたことは言うまでもない。それはないわ。
⑤別に誰が言っとるとかじゃないんだわ(◎)
結局、誰から発せられた言葉でもないんだよという説。
これまでのどの説にも共通して、「タラくんはあまりライブ慣れしていない」という指摘ができます。つまりタラタラしているのはタラくん自身だった……?
だけどタラくんだけを責めるのは違うかもしれない。
ここで再度色分けの話に戻りますが、黄色が舞台袖である場合、タラくんは(フロアから見て)ステージの左端にポジションを取っています。黄色がフロアである場合、タラくんは右端か中央にいることになる。いずれにせよかなりの空きスペースがあることから、タラくん以外にも演者がいると思われます。バンド形式であれば少なくともドラム、ベースのふたりはいて、タラくんがギタボでない場合はボーカルも必要だし、ツインギターの線も否定できない。
バンドって結局似た者同士が集まるみたいなとこがあります。あんまりうまくないヤツをクビにしたり、ひとりだけうますぎるヤツに他が勝手に萎縮したりして、最終的には同じぐらいの実力を持つメンツになる。ルックスとかファッションも似てくる(スピッツのことを今だけは思い出さないでください)。
タラくんがタラタラしている以上、他のメンバーも同様にタラタラしている可能性は非常に高いと思います。
タラタラしてるな~。
そして、よっちゃんズが客であろうがスタッフであろうが、どのみちタラくんへ駆け寄りそのピンチを救うことはできないわけで、結果だけでいえばよっちゃんズもまたタラタラしている。この場に誰がいたってみんなタラタラしている。
イラストをもう一度見てください。
タラくんの指先と口の形から、「タラタラしてんじゃね~よ」と叫んでいるのは彼であると思いがちですが、よっちゃんズが叫んでいるようにも見えてきました。よっちゃんズからタラくんへの叫びだとしても違和感はないのです(ないよね?)。
吹き出しは、はっきり誰かの口から出てはいません。「タラタラしてんじゃね~よ」の文字もまた、吹き出しを大きくはみ出しています。誰から出て、誰へ刺さっているのか、それは曖昧なままでいい、いえむしろ曖昧でなければいけない気がする。ここにいない誰かだっていいんです。誰もが誰かに、そして自分自身に叫びたい衝動を持っているのだから────。
●結局、全員タラタラしている
みなさんにはここまで、ありえんほど歪曲した理屈に付き合っていただいた形ですが、「描かれている全員がタラタラしており、また、描かれていない人たちも一様にタラタラしている」これが私の結論です。
チコちゃんが岡村に「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と怒るとき、同時に私達も怒られている。岡村と私達を隔てているテレビ画面は、チコちゃんが怒る時にだけ消失し、そこで私は岡村になり、岡村は私になる。みんな同一の「怒られる側という存在」になっている。
同じように、「タラタラしてんじゃね~よ」という言葉がパッケージイラストを通じてあらわれることで、タラくんやよっちゃんズは自己や他者のタラタラを知覚し、それと同時に、私達もまたそれぞれのタラタラに気付き、それぞれに頭をしばかれているのです。私のタラタラは、こんな記事を1ヶ月もかけて書いたことです。
でも、「タラタラしてんじゃね~よ」という言葉は、決して単なる怒りから来るものではないと思います。それは強い気持ちのこめられた、愛のあるエールだと思います。「タラタラしてんじゃね〜よ❤️」かもしれないよ。
このパッケージイラストから私が感じたのは、大体こういうことでした。
みなさんはおそらくあまりタラタラしていないと思いますが、時にはタラタラするのもいいのではないでしょうか。そして、もうタラタラしてはいられないなと決意する時がもしも来たら、心の中で「タラタラしてんじゃね〜よ」と叫んでみてください。ギターが折れますので。
※記事を書くにあたり、実際の商品を購入し撮影したものをペイントソフトで修正することで高画質のパッケージイラストを作成させて頂きました。イラストや商標など、全ての権利はよっちゃん食品工業株式会社様が保有しています。
記事を気に入ったり、ミャの活動を支援したい!という方は、こちらのボタンからサポート機能を利用いただけます。皆様からのサポートは月々の新聞代などに充てさせていただきます。また何よりも心の励みになります。どうぞよろしくお願い致します。