期待のギャップ
seleckで下記の記事を読みました。
組織崩壊からの復活で話題にもなったグッドパッチのCXに関連する記事。採用担当の小山さんが、離職率40%から8%に至るまでの施策を一つひとつ丁寧に答えています。候補者体験(CX)を作ることが、どれだけ組織に影響を与えるのか。多くの会社が当たり前と思っていることかもしれませんが、社長がOKした候補者をNoと言ったり、忙しい現場に面接トレーニングをするのは思った以上にハード。非常に参考になります。
さて、この記事では採用というエントリーマネジメントの点にフォーカスして説明していますが、今回は入社後のオンボーディング以降に着目して組織を作っていく方法を書いていきたいと思います。
◼︎いったいなぜ?
私は、世界的な大企業から、社員数10名以下の企業まで人事として幅広く経験してきました。転職回数が多い(!?)のは置いておき、外部のコンサルとしてではなく、実際に中に入って業務をしてきたため、どういう人が活躍していくのか、リーダーになりうる人なのか、またその逆も多数見てきました。
一方、上記視点から「この人は間違いなく活躍する」と入社前から期待していた社員が、
・入社後すぐに辞めてしまう
・本来のパフォーマンスを出せていない
なども起こるようになりました。
ハラスメント系上司などの要因は除き、社員の資質以外に何らかの要因が潜んでいるのでは?と思うようになりました。
◼︎早期離職や低パフォーマー輩出の要因
その中で、私が感じた要因は主に二つあります。
一つは採用時のミス。
これを防ぐもっとも効果的なことは、
先のグッドパッチの例のように、エントリーマネジメントをしっかりすることです。(とはいえこれが一番難しいのですが、)入り口をしっかりとしておけば、まず間違いありません。
経験やスキル重視によらず、ハイパフォーマンスを出せる社員はどんな資質を持った人なのか? これをしっかりと定義すること。「自社のビジョン、ミッション、バリューに共感できるか」など中途半端に聞いても正直あまり意味はなく、共感を価値に置かないことです。
そしてもう一つは、期待とのGAP。
「入社前と入社後に思っていたことが違う...」
という理由で退職する人が、転職市場には溢れています。
数年に比べ、明らかな諸条件の差異(提示されていた金額、業務内容、ポジションが違うなど)は減ってきていても、入社前に描いていた候補者の期待と受け入れ企業の期待がズレていることは減っていません。
◼︎期待のギャップの実例
実例をあげて説明します。
あなたが現職でマネージャーとして働いていて、面接受けている企業から、下記のようなメッセージでオファーを受けたと想定してください。
面接官)
「あなたには、リーダーとして引っ張っていって欲しいと思っていますので、よろしくお願いします」
その時のあなたの感じたのはどちらですか?
A)「(あれ?今はマネージャーなのに、リーダーに格下げ?)」
B)「(ついに自分もリードできる立場になれるんだ)」
上記のように、社内用語には定義の違いがあります。
会社ごとに定義が違うのです。一般的には、マネージャーは課長、リーダーは係長でしょうか。しかし、会社によっては、マネージャーは部長だったり、リーダーはビジネスリーダー(事業本部長)だったりと様々。
育ってきた環境が違うと、言葉の定義も変わります。
もし、Aさん、Bさんという候補者がいたとして、マネージャーとリーダーの定義が異なれば、受け取り方も異なるのです。
もちろん、このタイミングの前後で、リーダーの定義を確認する必要はあります。しかし、実際にはここまでわかりやすい定義ばかりではないでしょう。仮に、Aさんの期待で入ってしまったら、早期で辞めてしまうことになるでしょうし、仮に残ったとしても高いモチベーションを持って業務にあたれるかは不透明です。
人は、どうしても自分たちが経験してきた範囲内で未来を想像するため、「リーダーといったら◯◯」と思い込んでしまっている現状があります。だからこそ、社員と対峙する経営者、部下を持つミドル層や人事は、自分が使っている言葉を慎重に選ばなければなりません。
少し余談ですが、、、
北海道では、「ゴミ投げて」という方言があります。
これは「ゴミを(ゴミ箱に)捨てて」という意味なのですが、北海道以外の人にお願いするとゴミを自分に向かって投げつけられます。大学で東京に上京してきたときについ使ってしまって、友人に投げられました...。あの衝撃は今でも忘れられず苦い思い出です(さらに余談だと、ゴミ捨て場は、ゴミステーションと言います...どうでもいい情報ですが)。
これも一方はゴミを捨てて欲しい、もう一方はゴミを投げて欲しい、というお互いの期待のGAPですね。
また、期待のギャップについては、エンプロイー・エクスペリエンスに詳しく書かれています。Chickenの話(ブロイラーと言えば肉用若鶏かシチュー用雌鶏である期待)も非常に参考になりました。
この本は、人事なら必読ですね。
◼︎最後に
転職することが当たり前になり、以前のような長期就業によるキャリア形成というのが難しくなってきています。
十数年前までは、上司とは一蓮托生。
朝から晩まで(夜は飲み)、さらには休日もゴルフとか。
それが数ヶ月ではなく、数年単位で。
ここまで一緒にいれば、お互いの価値観はぶつけあえるし、役割も自然と明確になります。毎日会っていれば日々の変化も見れるし、「いいからついてこい!」とギャップは生まれにくい土壌があったのです。
でも、今はそんな時代ではありません。
だからこそ、会社は価値観や方向性をしっかりと示し、お互いの期待のギャップを調整しましょう。
強いチーム、「ONE TEAM」を作っていくために。