絶交

「くそっ、なんでお前ばかり勝つんだよ!」
「いちいちうるせえな!」

 ゲームの勝ち負けをめぐって、二人はまた大喧嘩していた。

「もういい、お前とは絶交だ!」

 片方は怒鳴ると、ゲーム機を机に思いきり叩きつけた。次の瞬間、唐突に大爆発が起こった。

「まずい、逃げろ!」
「でも逃げられない、どうしたらいいんだ!」

 逃げ道も助かる方法もなく、二人はただ慌てふためくだけだった。

「俺たち、もう助からないね」
「ああ、もう手遅れだな」

 二人は悟った。もうすぐ自分たちは死ぬ。謝るなら今のうちしかないと。

「今まで謝れなくて、本当にごめんなさい」
「こっちこそ、ごめん」

 最後の最後でようやく、二人ははじめて謝ることができた。

「来世こそは、ちゃんと仲良くしたい」

 この言葉を最後に、二人は爆風に巻き込まれて死んだ。

「何が仲良くしたいだよ! お前のせいで大爆発が起きて、俺たち死んだじゃねぇか!」
「俺だって、わざとやったわけじゃない!」

 ここは天国。大爆発によって人生というゲームを終了させられたことで、二人はまた大喧嘩になった。

「今度こそは本当に絶交……」
「させないぞ」

 片方が再び絶交と言いかけたところで、神様が止めに入った。

「また喧嘩したとは。二人とも、全然成長していないようだな」

 一旦静まると、神様は二人に説教をはじめた。

「二人とも成長するまでは、本当の意味では絶交させないぞ」

 二人の顔は青ざめた。

「そんな!」
「人生はゲームだ。だが、ゲームとはいえ、好きなことばかりしたり気の合う友達だけと遊んでいては成長できん。少しでも早く成長するためには、嫌なことや気の合わない人とも関わらなければならん。
自分のことばかりを考え、意味もない喧嘩をするのは、まだまだ未熟な証拠だ」

 神様は、二人を来世でも一緒に行動させることにした。

「よし、今度こそ早く大人になって、お前とは絶交してやる!」
「ああ、お前の顔も見たくない!」

 お互いに絶交したい二人だったが、来世でも一緒にいることを受け入れる。前世よりも早く成長して、少しでも早く絶交するために。前世の記憶がすべて消され、二人は赤ちゃんとして現世へ転生した。

 お互いを忘れた二人はお互いを知らずに成長した。ある時、二人は再会し、仲良しの友達同士になった。何も知らないがために、こんな約束までした。

「ずっと友達だよ。死んでも、生まれ変わっても!」

 お互いが前世で絶交を言い渡した相方であること、その出会いが再会であることすら知らずに。

 しかしある日、二人は些細なことで大喧嘩になった。

「なんでお前が!」
「こっちだって知らねえよ!」

おわり

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