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挿花家・雨宮ゆかさんに聞く、四季を取り込む花の飾り方。

鼎談
挿花家 雨宮ゆか × LAPIN ART 坂本大/関電不動産開発 中平英莉

都会のマンション暮らしであっても、季節の移り変わりを感じながら暮らしたい。住空間に花を取り入れるだけで、毎日は、彩りにあふれた瑞々しいものになるはずです。
 
今回は、豊かな自然が残る東京近郊で花と緑とともに暮らす挿花家の雨宮ゆかさんのご自宅を訪問。後編では、お部屋の中に四季を取り込む草花の飾り方をうかがいました。

前編


かごを花いけに使って

中平:前編で、部屋のなかに花を飾るための「場」を作ることを教えていただきました。花が引き立つ場所を確保することが、住空間全体をすっきり保つきっかけになるかもしれないと。壁面だとどうでしょう。
 
雨宮:壁のどこか一箇所に目がいくようにするといいと思います。カゴを掛け花のように使って、「場」を作るのも風情があっていいですよ。お手持ちのカゴの使い方をちょっと変えて、針金を使って空瓶を固定するだけ。日常花を楽しむには、気軽さも大切ですね。
 
中平:簡単なのにとても上品です。この植物はなんですか?
 
雨宮:横に流れる枝はシロヤマブキ、白い線の入った葉はシマアシです。庭のクレマチスを加えました。
 
中平:旬の花を一輪だけ、寄せ植えの植物と合わせる気軽さもいいですね。
 
雨宮:寄せ植えから切ったものは、水切りしてすこし休ませてからいけると長持ちしますよ。


花を飾るのに適した「場」とは

中平:雨宮さんは家の中のどこに「場」を作ることが多いですか?
 
雨宮:玄関の壁もよく使いますし、部屋のコーナーお盆を置いたり、リビングの白壁の前にベンチやスツールを置いて花の場所にすることもあります。
 
坂本:ダイニングテーブルには置かないですか?
 
雨宮:キッチンやダイニングは、物の移動が多いスペースですし、うっかり花器を倒してしまったり、食材に花粉が落ちるのも心配なので、置かないようにしています。その代わり、テーブルのそばにある水屋箪笥の中などを活用して(前編参照)、食事をしている時も花を楽しみます。
 
中平:玄関では壁の高い位置にカゴを飾ったように、目線の先に花があるように配置していくと、生活の中の一瞬一瞬が潤っていくのでしょうね。


色が変化する花や草を選ぶ

中平:こちらは、また別の寄せ植えですね。前編でうかがった1.背の高いもの 2.地を這う低いもの 3.小花 4.季節によって色を変えるものという4つのルールが網羅されています。
 
雨宮:背の高いコバノズイナ、地を這う五色カズラ、小花はスミレ、色を変えるものはイカリソウです。草を中心に植えました。
 
坂本:ハート型の葉は何ですか?
 
雨宮:イカリソウです。春から夏は青葉、秋は紅葉、冬の立ち枯れも素敵な草です。長い期間楽しめるし、いけた時のアクセントになって、簡単だけど目を引く花いけになる。鉢植えにしておくと重宝しますよ。


部屋のコーナーに「場」を作る

雨宮:部屋のコーナーに「場」を作るなら、お盆を使うといいですよ。湯のみにコバノズイナやチョウジソウをいけました。
 
坂本:これは東南アジア系の古い盆でしょうか。
 
雨宮:そう。木のテクスチャーが面白くて飾る場としても重宝しています。今回は、裏返して平らな面を使いました。
 
坂本:お盆を床置きにして花台とするだけで、周囲との境界ができてちょっと特別な雰囲気になりますね。
 
雨宮:リビングのように広い空間があると「大きな花を飾らなくては」と思いがちですよね。
 
中平:違うんですか?
 
雨宮:花はコンパクトにした方が、まとめやすいと思います。その代わり、お盆や板を効果的に使って、ふさわしい場を作ってあげる。器に料理を盛り付ける際に余白をとると美味しそうに見えるのと一緒で、余白のある場があると花がおおらかに見えるんです。


花を起点に、空間を広く見せる

雨宮:花を飾る「場」として、私はフレームもよく使います。
 
中平:額縁とかフォトフレーム、木の箱なんかも良さそうですね。
 
雨宮:そう。木の質感は、ドライフラワーを飾るのにぴったりで、花の少ない秋〜冬の時期に外の景色を部屋の中に取りこむのにもってこいなんです。
 
坂本:ガラス瓶は古いオランダのものでしょうか。
 
雨宮:古いガラスの質感って、ドライな草花によく合うと思うんです。公園で拾ってきた枝や実、石でもいい。お子さんがいらっしゃる方なら、遊びながら一緒に飾ってみるのも楽しいですね。
 
中平:アートのようなディスプレイになりましたね。植物を取り入れることを心がけるだけで、空間の捉え方まで変わるなんて! 好きだなと思うもの、美しいものとともにすっきり暮らすヒントをたくさんいただきました。ありがとうございました。

おわり
 
構成・文 衣奈彩子
写真 雨宮秀也

挿花家 雨宮ゆか 
東京都大田区で、日常の花を生ける教室「日々花」を主宰。北鎌倉東慶寺にて、花教室の講師を務める。
植物と暮らしの関わりをおもに、雑誌、本などで活動中。各地で植物に関するワークショップも行う。
日々花 ウェブサイト


構成・文 衣奈彩子
写真 雨宮秀也

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