見出し画像

京大連続講義(4)地域研究・メディア学 ①「メディアとコミュニティ―東南アジアから考える」山本博之先生

京都大学のオンライン公開講義
テーマは、ウィズコロナ時代に必要な「人文学」

7/5(日)地域研究/メディア学①山本博之准教授「メディアとコミュニティ―東南アジアから考える」

【一言感想】山本先生、いかにも東南アジアっぽい!頭の良い人が論理的に話しているのを聞くのは気持ちの良いものだなぁ。

画像1

山本先生のご専門は、地域研究。

東南アジアは11ヵ国。
「特徴を一言で言えないほど多様であること」が特徴です。
東南アジア域内でも、国内でも、多民族がいる。

東南アジアの人たちは「愛し合わなくていい」とういう価値観。
・互いに気に入らないと思っていてもいい
・でも殴り合いや奪い合いはしない
・問題が起こったら協力して解決する

他人との社会的距離を意識するという考え方に、私たちが目覚めてしまった。こういう今の私たちの状況を「コロナ後の世界」という風に言うことにします。
異質な他者どうしで社会を作ってきた東南アジアの経験を踏まえて、コロナ後の日本社会をどうしていくか、考えていきましょう。

災害と社会:自助・共助・公助と外助

阪神・淡路大震災で、救出してくれたのは?
自助:自力 35%、家族 32%
共助:友人・隣人 28%、通行人 2%
公助:救助隊 2%
その他 1%

「公助」の割合は驚くほど少ない。自分で備えるには限りがある。「共助」が大事だということはよくわかっているが、都会では難しかったりする。
でも、通行人に助けられた人が2%もいた、互いに知らない人とも助け合うことができる、ということが希望かもしれない。
通行人を「外助」と考えて、この部分を広げていくのはどうでしょうか。

文化空間の被災と復興

文化空間:個人や社会が風景に意味を紐づけしたもの
 更地になったり、がれきになったり…
復興事業では、被災地の人ではない人が計画を立てる。
 直接の被災者だけでなく、将来その地域に暮らす人のことも…

文化空間を可視化していこう。

きりこプロジェクト(宮城県南三陸町)切り絵で有名
「親の背中を見て育った こども供たちにこの背中を見せる」
だんだら(石川県 輪島):中の七音が二つの異なる意味を持って、上の五音と下の五音につながる構造を持つ川柳。朝市の道沿いにずっと掲げられている風景が見られる。

朝市に
真鯛、石鯛/またいい時代
きっと来る

能登地震
予期しなかった/良き品買った
朝市で

災害によって明らかになった潜在的な課題に対応する

スマトラ島の地震・津波(2007年)で、怒って米袋を投げ捨てて蹴っている男性の映像がニュースになった。
いったい彼になにがあったんだろう?治安の問題か?

その場所は、農園開発されたところで、最初に入植した人たちは内陸に住み船を持ち、豊かになった。あとから来た人は、船を借り、沿岸部に住み漁をして暮らしていた。災害以前から感情的な軋轢がある地域だった。

幹線道路沿いの人たち vs 沿岸部の人たち

内陸に避難してきた沿岸部の人たちに対して、内陸の人が「自分たちの支援物資を横取りした」と言って攻め、沿岸部の人たちは「見下されるぐらいなら棄ててやる」となった。
米袋を蹴ったのは「状況を改善してほしい」というメッセージのための行動だったのです。

災害が起きると、その前からあった課題が浮き彫りにされてきます。
今なら、リモートで会社や学校に行かなくなり、通勤のことや小さい子の保育の問題について考えたりしていると思います。それは、以前から気が付いていたけど緊急じゃないから先送りされてきた問題だったりします。
それぞれの立場で気づいていた問題を出していこう。

異質な他者どうしで社会を作る

マレーシアの人たちは、まるっきり違う民族が一緒にいるので、良かれと思ってやったことが、相手にとって不愉快なことがある。
だから、事前に言葉で説明したうえでやる。
気働きをして先回りしてやってあげることは避ける。
善意が善意として受け取られるとは限らない。

多様性について東南アジアから学んでいきましょう。

全4回、来週の講義も楽しみです。



よろしければサポートお願いします。いただいたサポートは本屋さんの応援、本の購入に使わせていただきます。