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母についた嘘、母がついたウソ

1,母についた嘘

先週、母と兄弟と実家で食事をして楽しい時間を過ごしたのですが、私は母に嘘をつきました。
「家の改修をするから修理に時間がかかるの、迎えに来るから待っていてね。」
そう言って、母を納得させて私は実家から施設へ母を送り届けていました。
助手席でため息をつく母、もう実家に戻れることはないんだなと
申し訳ない気持ちと寂しさ、悲しさが込み上げてきて、運転しながら泣いてしまいました。

助手席で話しかけてくる母、でも涙で言葉にならなくて
耳の遠い母に合図するために、母の手を握ると温かで大きかったはずの手が
冷たく小さくなっていて、余計悲しくなって更に声をあげて泣いていると
母が手を握り返してきました。

「大丈夫だよ、ゆりな頑張って。」
母はそう言いたかったのかな。

大の大人が恥ずかしいのですが
母が手を握って、励ましてくれたようなそんな気持ちでした。
答えは分からないけど、母が居なくなってしまうことが想像出来なくて
色んな感情が涙となって出てしまいました。


2,揺れる思い

そして昨日兄から連絡がありました。
実はこの一週間、怖くて施設には連絡していませんでした。
母の容態を聞いてしまったら落ち着かなくてどうにかなってしまいそうだったからです。
兄からの連絡はまた消化管から出血しているようだと排尿も少なくなってきているというものでした。

やっぱり在宅介護しよう!!
母はずっと家で死にたいと言ったし
介護休暇取れるかもしれないし
私だって看護師だし
母の喜ぶ顔がまた見たいと思って兄弟に相談しました。

ですが、容態が良くないと言ってもいつまで介護が続くのか
主介護者となる私の体調や寒くなってくる実家の環境などを考え
3年間入所している施設で最期までお世話になろう
その意向は変りませんでした。


3,母がついたウソ

兄からの報告を受け、今日は姉2人と母に会いに行きました。
もちろん玄関先でドア越しの面会です。
車いすに座っている母は手を合わせて「家に連れて帰って、修理できた?」
「家で死にたい」同じように繰り返します。

あれ?母さん?
母も嘘をつきました。
先週、実家で食事したとき
「皆に会えたしやり残したことはない、悔いはない、あの世に早く行きたい。父さん迎えに来て」って言っていたのに・・・
母さん、どっちが本当の気持ち?

お互いに嘘をついて
お互い素直に頷いて、いつものジョークを言って笑わせてもくれました。
いつもなら別れを惜しむ母なのですが、今日はじゃあねって言わんばかりに
意外にあっさりと部屋に戻っていきました。

そして最後はお互いに大きく大きく何度も手を振りました。

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4,見送る準備、旅立つ準備

帰り際、施設の看護師から様子を聞きましたが、母の身体はもう限界なんだと分かりました。最後の力を振り絞って、食事、排泄、歩行、呼吸、自己表現をしています。そして身体も精一杯母を支えてくれているのが分かりました。
何があってもおかしくない状況です。
もう頑張らなくて良いよ、私達は大丈夫だから、準備は出来ているから
自然に悲しい気持ちより、労う気持ちが湧いてきました。
お疲れさまって声をかけてあげたい そんな気持ちです。






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