コント「娘さんをください」
6月21日は父の日でしたね。
僕は実家のある方角へ二礼二拍手一礼しておきました。
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○ 舞台中央にちゃぶ台
○ そのちゃぶ台の上手側に父親が腕を組んで座っており、下手側にスーツの男(彼氏)が正座し、床に両手をついている
彼氏:お父さん! ゆみさんを僕にください!(土下座する)
父親:君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ
彼氏:(顔を上げて)お父さん!
父親:何度言ってもダメだ!君みたいなどこの馬の骨かもわからん若造に娘をやるわけにはいかないんだよ
彼氏:どうしてわかってくれないんですか……
父親:私にとっては大切な娘なんだ。きちんとした男と結婚してほしいと思うのが親心ってものじゃないか
彼氏:……僕がきちんとしていないって言うんですか
○ 父親、無言で、脇に置いてあった袋をテーブルの上に置く
父親:……これはなんだ?
彼氏:先ほどお渡しした手土産ですね
父親:それはわかってるよ。なんでこんなもの渡してきたんだ
彼氏:美味しいのでぜひ食べていただきたくて。僕がいつも行くお店のお菓子で、おすすめなんですよ
父親:そういうことを言ってるんじゃない。見てみろこれ(袋の中を見る)
ポテトチップス、ポッキー、きのこの里……どういうことだこれは?
彼氏:(ハッとした顔で)……たけのこ派でしたか?
父親:そういうこと言ってるんじゃないよ! 普通持ってくるとしたら菓子折りみたいなちゃんとしたやつだろ
彼氏:いやでもすごく美味しいんですよ!
父親:それはわかってるよ
彼氏:僕がいつも行くパチンコ屋のお菓子で…
父親:(話を遮って)ちょっと待て。パチンコ?
彼氏:はい。今日めっちゃ勝っちゃって
父親:ちょうどいいかなじゃないよ! お前これ、パチンコの景品か!
彼氏:はい!
父親:君、結婚の挨拶に来る前にパチンコやってきたのか!
彼氏:はい!
父親:はいじゃないだろ!私のことバカにしてるのか!
彼氏:バカになんかしてないですよ!
父親:バカにしてなかったらパチンコなんて行かないだろ!
彼氏:いや、ちょっと待ってくださいお父さん。もしね、僕がパチンコで負けてたらこのお菓子は今ここにないんですよ。このお菓子は、僕がパチンコで勝ったっていうなによりの証拠なんです。絶対に勝つつもりで打ったからこそ、このお菓子が手に入ったわけです。そこを評価していただきたい
父親:なにを評価するんだよ! パチンコやる金があったらちゃんとしたもの買ってこいよ!
彼氏:それとこれとは別の話です
父親:別じゃない!
彼氏:もう一度お聞きします。ゆみさんを僕にください!
父親:なんでこの流れでいけると思ったんだ。非常識なやつに娘は渡せんよ
彼氏:なんでですか! 理由を聞かせてください
父親:それがわかってないのがダメだ。どうせパチンコやってるようなやつは結婚しても娘に迷惑をかけるだろうからな
彼氏:そんなことないです! 僕は大手IT会社に勤めていて、ちゃんと休みも取れます。収入面での問題は無いですし一緒にいる時間も確保できます
父親:でもな……
彼氏:しかも安心してください。僕がやってるのは1円パチンコですよ
父親:どこが安心できるんだ!
彼氏:お父さん、聞いてください。1円パチンコって負けてても「どうせ1円だしな」って思えるので心に余裕ができるんです
父親:パチンコの良さを語るんじゃない!
彼氏:ストレスも溜まらなくていいじゃないですか!
父親:こっちのストレスが溜まるんだよ!
彼氏:もうらちが明かないですね
父親:こっちのセリフだ
○ 突然お菓子を食べ始める
父親:なにをやってるんだ!
彼氏:イライラにはチョコですよ
父親:なんでお前がイライラしてるんだ!
彼氏:お父さんがわかってくれないからです
父親:こっちのせいにするな! しかもそのチョコはわしのだぞ!
彼氏:(ハッとした顔で)やっと認めてくれたんですね
父親:あぁぁ違う違う! こんなお菓子はいらん!
彼氏:……はぁ、わかりました。話しててもわかってくれそうにないので今日はもう帰ります
父親:……そうか
彼氏:でも結婚を諦めたわけではないので、また挨拶に伺います
父親:勝手にしろ
彼氏:では失礼します
父親:……まぁその、なんだ、結婚を認めるわけじゃないが、娘のことをちゃんと大切にしてくれるのなら交際は認めんわけではない
彼氏:ありがとうございます
父親:ちゃんと誠意があればいいんだ
彼氏:大丈夫です。ちゃんとゆみさんとの時間は大切にしています
父親:そうか
彼氏:この前も一緒に水族館に行ったんですよ
父親:それはよかった
彼氏:こんな魚の大群見たことないって喜んでました
父親:そうか
彼氏:リーチで人魚も出ましたし
父親:それパチンコの海物語だろ! デートでもパチンコに行くのか!
彼氏:当たり前じゃないですか!
父親:知るか!
彼氏:ゆみさんと出会った場所がパチンコ屋なんですから
父親:なんだと
彼氏:(遠い目をして)あれは2年前。僕がいつにも増して勝ちまくっていた時でした。僕のドル箱から玉が溢れて転がっていったんです。それを追いかけていくと、ある女性が玉を拾ってくれました。それが……ゆみさんです
父親:全然ロマンチックじゃないな!
彼氏:今思えば、あれが運命の出会いだったんだなって
父親:パチンコ屋で運命の出会いなんてないんだよ!
彼氏:なんてこと言うんですか!
父親:ちょっと結婚を許そうかと思ったがやっぱりダメだ! 早く帰れ!
彼氏:わかりました! でも確変が起きるまで諦めませんから
父親:私が認めることを確変って言うなよ!
彼氏:失礼します!(ハケる)
父親:なんなんだあいつは。母さん、お茶を淹れてくれないか……いないのか?(立ち上がり上手側にハケようとする)
痛っ!!(足元を見る)パチンコ玉!!!!
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某有名芸人さんにボロクソに言われたネタなのでここ(note)で成仏してもらいます。ボロクソに言われたときよりセリフも展開も変えてますが。
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