ネットビジネスに勧誘されたときの話を淡々と書く
「あの人、イベントのプロデューサー的なことやってて、俺の知り合いなんだよね」
「将来の目標とかないんですか? そんなんでどうするんですか!!」
「僕の尊敬してる人に今度アポとってみるよ! 自分でカップラーメン作っちゃったりしてるすごく自由な人なんだ(笑)」
これは実際に自分がネットビジネス勧誘者(と思われる人)に言われた言葉です。それぞれ別の人に言われました。自分でカップラーメン作るってなんなんだよ。
この記事では、過去に僕が体験したネットビジネスをやってるっぽい人と会ったときの体験談を書いていきます。
ネットビジネスって?
まずネットビジネスってなんぞ?って人のために。まぁこれは調べれば詳細なり体験談なりがゴロゴロ出てくるのでここでは簡潔に記しときます。
ネットビジネス("ネットワークビジネス"の略)とは、商品を他人に紹介し、それが売れることで生まれる権利収入によって成り立つビジネスのことです。いわゆる口コミで商品を売っていく手法ですね。余計な広告費がかからないのが利点です。
インターネットが普及した今の時代、簡単に個人が大衆に訴求できる世の中となり、口コミの影響力は増大しました。それによりヒットした商品や作品も枚挙に暇がありません。
ネットではアフィリエイトやインフルエンサー等のビジネスモデルがありますし、本当に自分が良いと思っているものを宣伝して誰かに知ってもらってWin-Winの関係になればもちろん悪いことはありません。ミクロなところでは、「あそこのパン屋さんのメロンパンめっちゃおいしいよー」「えーじゃあ今日仕事帰りに買ってみるー」これも立派な口コミです。
ですが、宣伝のやり方や悪質な手法などをするグループが少なからずあり、やられた側は「騙された!」と憤慨するケースが多くて悪評が広まってしまうわけです。
ここで勘違いしてはいけないのが、ネットビジネスの手法はちゃんとビジネスの形として成立しているということ。違法ではないのです。
違法性があるとすれば、個々の勧誘の手口などから判断しなければならないこともあり、勧誘されている人は知識がないとその違法性に気付きません。
あとは「勧誘」という言葉から嫌なイメージを持っている人が多いと思います。私利私欲のために望まない相手の時間を消費させているという時点で悪質なんですがね。まぁそこは仕事として割り切ったとしても、最初に"これはネットビジネスの勧誘です"と明言しないと違法になります。ただ現状は勧誘ですと言ってはいそうですかと答える人も少数だしその時点で逃げられるのでほぼ言いません。
前置きが長くなりました。ここから下は僕の実体験です。
ハマって破産してたら面白かったんですけどね。してないです。
① ダイニングバーの女
当時、サーバーの監視や操作などの仕事をしていた僕は、夜勤ありのシフト勤務だったのでひと月の休日の割合が日勤の会社員よりも多かったんですね。その空いた時間が暇だったので知り合いを増やそうと街コンやらイベントやらに行きまくっていたときに出会った女性の話です。
その街コンはバゲットが有名な小規模のイタリアンバルのお店で開催されました。僕はあいにくバゲット狂ではなかったので別に興奮することもなく食べてましたが。
街コンって主催者や形態によってシステムが異なると思うんですが、テーブルごとに複数人で話したりフリータイム(制限なく自由に話せる時間)が設けられているような、いわゆる立食パーティ的なものはいろんな人と話せるので必然的に出会いが多くなります。逆に1対1の対面で行われるものは主催者によってシステマティックに進行するのでより弱肉強食感が強くなります。僕のような顔面バグリマンにはまったく勝ち目のない戦争になってしまいます。
普通に出会いを求めるならば立食パーティ形式の方が効率がいいと思われますが、不特定多数と繋がることができるので勧誘者にとっても効率がよくなります。
店に行くと、入り口でアルファベットが書かれた紙を渡され、同じアルファベットが振られているテーブルにつきます。そこがスタート位置で、男性陣は時間制で順繰りに他のテーブルを回ります。
後半のテーブルについたときに会ったその女性(以下"A子"とする)は、第一印象は小柄で明るくて話しやすいなという印象でした。
話してて楽しかったので後日A子に食事のお誘いをしました。さて店を決めようかと思っていると、「私の知ってるお店でいいですか?」との返答が。店を決めるのは結構神経を使うところなので、手間が減ったぞラッキーてな心持ちでした。
駅前で待ち合わせていざお店へ。
お店は都内某所にあるダイニングバーで、チョコレート風味のお酒が人気なところ。価格は比較的安かった。開店前にもかかわらず、外まで行列が伸びており「なんだこれ?」と面食らいました。しかも店員が行列待ちの客に対してチロルチョコを配ってて、なんだこの待遇は?となりました。
席についてお酒飲んだりご飯食べたりしてて、段々とA子の話す内容が仕事とか将来のこととかが大半を占めてくるようになりました。
そういう話したいんじゃないんだよな……と内心ウンザリしてたんですが、A子は僕のそんな心境などお構いなしに、さらに「今の仕事で満足してるんですか!?」とか「自分を変えましょうよ!」とかセミナー並みに熱を帯びてきて、うわぁ帰りたい……と困ってしまいました。
遂にはA子に「近々私が尊敬してる人たちが集まる会議があるので一緒に行きましょう!」と言われる始末。この時点で勧誘を確信しました。一応僕は同調圧力などにはすごく敏感なのでそういうのには死んでも行きたくないんですが、そういやゲームも遊びますよ!楽しいですよ!とも言われたな。たぶんキャッシュフローゲームだと思います。(詳しく知りたい人はググってください)
その場を丸く収めるために「うわ~楽しそうですね~じゃあまたあとで誘ってください(笑)」と言って二軒目に誘うはずもなくそそくさと帰りました。その後A子から連絡が来ましたが当然無視。アカウントをブロックしてフィニッシュです。
そのあと誘われた店のことを調べてみたら、なんと店自体が勧誘スポットになっていたらしい。ググるとその店のオーナーもグルみたいなことも書かれてあったので、組織の根城に連れ込まれたようなものです(今はその店は閉店してます)。
めっちゃこわい。
② 設計技師のアニメオタク
「① ダイニングバーの女」に出会った街コンではもう一つ"出会い"がありました。といっても女性ではなく、建築の設計関係の仕事をしているというアニメ好きの男性です。
明らかに僕とは話が合わなそうなのに、妙に話しかけてきてくれる人でした。連絡先を交換してからはちょこちょこ連絡が来て(こっちから連絡することはなかった)、一緒にラーメン食べに行ったり設計技師が幹事の合コンに行ったこともあります。でも場所がインドカレー屋だったので感性はズレてると思います。なぜカレー屋で合コン……
そんなこんなで絶妙な距離感を保っていたのですが、あるとき飲み会に誘われました。わりかし会っていたので特に警戒することもなく僕も友人を誘ってその飲み会へ出向きました。
友人と開催場所である地下の貸し切りスペースみたいなところに行くとたくさんの人が。30人くらいはいたのかな。友達が友達を呼んで大人数になるタイプの飲み会です。受付で誰の紹介ですか?と聞かれたので設計技師ですと答え、中へ。
複数人の幹事で回しているらしく、みんな設計技師の知り合いのようでした。酒と適当な料理(キッチンスペースもあって元シェフ(って言ってた)が料理をふるまっていた)があしらわれ、和気あいあいとした雰囲気が漂っていました。
他の幹事の人たちともいろいろ話したりして(うわべだけの会話しかしてないので疲れましたが)、暇つぶしにはなったなって感じでした。
後日、その飲み会でよく話したある幹事の人が僕と話したいと言っていると設計技師から聞き、僕、設計技師、その幹事と3人で会うことになりました。幹事が忙しいらしく、会うのは1時間半程度の短い時間でした。
ほとんど世間話でしたが、途中から案の定仕事の話になり「やりたいことはあるか」とか「目標としてる人はいるか」とかそういう話題になりました。ただそんなに嫌味には感じませんでしたね。
そして、幹事が「ぼくの先輩に面白いことやってる人がいるから今度会わせてあげるよ!」と言いました。これが記事冒頭に書いた自作カップラーメンパイセンです。内心ツッコみたいのを抑えつつ時間が来たのでその場はお開きになりました。
勧誘は大抵その人の先輩にあたる人物を紹介されてから本格的に始まると知っていたので、怪しいにおいを感じた僕はそこから幹事も設計技師も連絡を取っていません。
幹事の誘い方は僕が会った中では抜群に上手かったです。猜疑心の強い人以外はその後の約束も取り付けるだろうなと思います。根は優しく明るい人なんだろうな(遠い目)。
③ クラブで会ったピュアな20歳
渋谷にあるクラブに行ったときのこと。
普通にカウンターで酒をあおっていたときに、ある男(以下"ピュア男"とする)にいきなり話しかけられたのがきっかけで連絡を取り始めました。ピュア男は彼女連れっぽかったんですが、俺と話してていいのかよと思いつつ話を向けるとなにかはぐらかされてしまい、なんだか微妙な関係性っぽかったのでその場では追求しませんでした。
その後原宿で知り合いの音楽関係者が来るパスタパーティー(パスタ食べ放題イベント)があるから来ないかというので行ってみました。
ある建物の二階を貸し切ったスタンディングバーのようなところで、その主催者を紹介されました。定期的に音楽イベントを開いているというので、僕も音楽は好きなのでなにかしら仕事に繋がるかもなぁと思い、後々の約束も取り付けました。パスタは美味かったです。
夜7時頃に新宿に呼び出され、ピュア男と待ち合わせてからその音楽関係者のところへ案内されたのですが、連れていかれたのは雑居ビルの狭い一室でした。水槽や観葉植物などがありアジアンテイストな部屋でした。
え?なにここ?と思いながらピュア男、音楽関係者と共にテーブルにつきます。音楽関係者の話を聞くと、歌手やバンドのオーディションなどを主催しているというようなことを言っており(会社名やイベント名などの具体的な名称は言わなかった)、なにをやっているのかまったくわからないので意気消沈して帰ろうかと思っていたところ、音楽関係者からある一言を言われました。
「ア○ウェイって知ってる?」
で、でたーーーーーー!!!!!!!!
噂には聞いてたけど、ここで来たか!!!!!!
しかし僕は知らぬ存ぜぬのポーカーフェイスでこう言いました。
「いや知らないですね」
そこから怒涛の会社の沿革から企業理念、どんなことをしているか、商品の説明など、説明書が擬人化したようなまくしたてが始まりました。しかも、音楽関係者じゃなくピュア男が説明するんです。たぶん後輩から説明するように決まっているんでしょうね。
説明を受けている間中、部屋にグループ関係者と思われる人間が出入りしており、部屋にいても会話もなくずっとスマホとにらめっこしててすごく怖かったですね。勧誘を断ったらこの人たちに何かされるんじゃないかという不安がむくむく膨れ上がってきて帰りたいけど帰れないみたいな状態でした。怖かった。
説明がひと段落し、契約の手続きの段階になったので「ちょっと帰って考えてみます」でやり過ごそうと思ったらめちゃくちゃ粘る。「週末は海外旅行行きまくりでサーフィン、スキーし放題だよ?そんな生活憧れない?」憧れねえよアホ。季節感ぶっ壊れてんのか?
こっちも譲らずに帰る雰囲気マンマンにしてたらやっと相手も折れて、じゃあ次の機会にしましょうと(そのとき夜の9時くらい)。
次回の予定を入れるときも、
「この日は?」
「ダメです」
「じゃあこの日は?」
「仕事ですね」
「じゃあこの日」
のように、次々とジャブを繰り出してくるのでガードするので精一杯でした。
帰るとき、貴重な時間+往復の交通費を捻出してしまったことに対して悔しすぎてムカつきました。
ちなみになんでピュア男なのかと言うと、上京したてで友達がいなかったけどア○ウェイをやり始めてから友達が増えたんだ~楽しい~!って純朴な目で僕に語りかけてきたからです。楽しそう。
④ 絶対に普段HUBみたいな空間にはいない男
友人とHUBに行ったときのこと。
HUBはスタンディングバーなのでナンパもただ話すのも自由な空間です。男と元女子プロレスラー(めっちゃかわいい)の2人組と他の男2人組と6人くらいで飲んでました。みんな2人組で来ててなんとなく一緒のテーブルになった感じですね。
お開きの時間帯になってとりあえずみんな流れで連絡先を交換し、後日、"他の男2人組"の1人(絶対に普段HUBみたいな空間にはいない男。以下"絶ハブ"とする)から連絡が来てラーメンを食べに行きました。
別にラーメン食べてるときはなにもなかったんです。俺が聞いたことない大規模イベントの話で絶ハブが盛り上がってるな、くらいで。雰囲気は絶対陰キャなのになんでザ・陽キャなイベントに興味あるんだ?と思ってました。
その小さな違和感は駅に向かう間にも「どんな家に住みたいか」を質問してきたことで増幅されます。なにその質問!?はじめてされた!!!!!!!と内心大興奮だった僕は落ち着けるとこだったらどこでもいいかなとか適当に答えました。
改札前で別れの挨拶を交わした際、絶ハブがさっき話したイベントに一緒に行こうと言い出しました。時間が合えばね~とその場は濁しましたが、後々小さな違和感に気付きます。あれ、このイベント、前にも誘われたことあるぞ、と。
実は「② 設計技師のアニメオタク」で書いた、複数人の幹事がいる飲み会で女性幹事が話していたイベントとまったく一緒だったのです。そのときは、そんな大きな会場を貸し切るイベントを知らないことあるか?と疑問に思ったのですが、「同時期に別の場所で偶然出会った人間に、見知らぬイベントへ招待される」という事実に、脳内に警報音が鳴り響きました。
すぐそのイベントの詳細を調べるとなんだか怪しい噂がちらほら出てきたので、女性幹事も絶ハブもフェードアウトさせていただきました。裏がない興行はそもそもそんな噂立ちませんしね。
割と近しい頻度で謎のイベントに誘われるのはイベント開催時期に合わせて勧誘者が街に繰り出してるんだろうな、と仮説を立てときました(あながち間違ってないと思う)。
勧誘かどうかの見分け方
とりあえずこのような経験をしてきた中で、勧誘者の特徴や共通点がいくつか見つかったので書いておきます。
1. 副業に興味はあるか、今の仕事に満足してるか等の質問をされ、あげく精神論を説かれる
あ、ごめんなさい、見分けるポイント以前にこの質問をされた時点であなたは既にカモになっていました。今なら引き返せるのでよく考えましょう。
2. LINEの名前表記が、ひらがな表記の下の名前
正直これは俺が会った人に限った特徴なのですべてには当てはまりませんが、何故かひらがなで名前のみ書いてある確率が高かったです。
なんでしょうね、本名でやるとマズいことでもあるのでしょうか。後ろめたい気持ちがそうさせるのでしょうか。
調べると、グループによりけりですがあだ名などで呼び合う習慣があるそうです。
そういうやつのアイコンは大抵とびっきりの笑顔やバーベキュー、ナイトプールで撮ったような変にフォトジェニックなものが多いので割とわかります。
単に僕が真性陰キャラだから鼻につくだけなのかも。まぁいいや。
3. LINEスタンプは無料のしか使ってこない
月々のノルマの分だけ商品を買わないといけなくて金がないからです。
たぶん。
4. なんかめっちゃ明るい
明るいです。それはもう輝くほどに純粋で。
HUBの無口な男だけは例外ですけどね。でも明るくなりたいっていう強い思いは会話の節々から感じました。がんばってほしい。
5. 予定を合わせる際に細分化して指定してくる
細分化とはどういうことか。
勧誘に積極的な人は、大勢のパーティやバーベキューなどを定期的に開催しています。20~40人くらいと結構な人数がいます。
だいたい2週間おきか、すごい人は一週間に2回くらいのペースでやってたりします。
とりあえず誘えればいいので、「20日か23日に飲み会やるんだけど空いてるー?^^」のように2つ以上の選択肢を提示してきます。
さらに細分化すると「今週土曜の14:30か日曜の20:00はどうかな?^_^」となります。2時半から40人のパーティとか正気か?
ちなみにこれは心理学のダブルバインドを使ってるのである程度勧誘はマニュアル化されてると思います。日程を2つ提示して選ばせることで相手の意見を引き出したように思わせて絶対に会えるように仕向けている(断る選択をあらかじめ無くす)わけですね。こわ。
6. 店を指定してくる
「① 街コンのチョコバーの女」でも書きましたが、店全体が勧誘スペースになっているお店は少なからずあるようです。普通のお店に擬態しているのでタチが悪い。
予定合わせのときに「この店に行きたい!」と意見を譲らないときは要注意です。
7. 一緒にいる時間が圧倒的に少ない
「会う時間なんだけど12:00~13:30とかでもいいかな?^^」とクソ忙しいですアピールをしてきますが、こんなキツキツのスケジュールなのは他の時間をミーティングか資金繰りに使ってるか他のカモに会ってるかの可能性があります。だって普通そんな時間しか一緒にいられないならリスケするでしょ。短期間でなるべく多くの人間に会う必要があるので効率を優先するわけです。
まとめ
熱に浮かされたように人脈人脈と譫言のように言ってる輩は何か企んでいることが多いですし、人との大切な繋がりを金のためとしか思っていない人種からは距離を置くべき。ネットビジネスに限らずですが。
とりあえず打算で付き合うのは百害あって一利なしです。
また、ネットビジネスをやっている人は、ビジネスはビジネスとして全然やってていいですが、最初に「勧誘です」と付け加えてくださいね。そうしないと特定商取引法で違法になりますし、こっちを利用しようとしているんだ……と悲しくなりますので。
ちなみにこの記事を下書きしている間に、設計技師のアニメオタクから「コロナ大丈夫ですか??(鼻をかむ絵文字)」ってLINEが来たので頭抱えてます。
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