コント「努力する人」
東京03さんのリモート単独公演があまりに凄すぎたのでモロに影響を受けまして(笑)、東京03さんをイメージして書いたネタです(トリオではないですが)。
書いてるときにセリフが飯塚さんと角田さんに幾度も脳内変換されてしまい、思ったより筆が進んでしまいまいた。
名前は仮名です。特定の人物を指しているわけではありません。
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〇 中央にテーブル、左右に椅子。椅子にはそれぞれ男が座っている。
〇 村田がビールをあおる。
秋山:おいおいおい、一気に行くねぇ。大丈夫かよ?
村田:(ジョッキを空にする)うるせえな
秋山:気持ちはわかるよ。にしてもヤケ酒は…
村田:お前が飲み行こうっていうからついてきたんだ
秋山:すまんすまん。まぁ仕方ないだろ。お前があまりにも落ち込んでるから思わず声かけちまったんだよ
村田:はぁ……
秋山:(仕方ないという顔)(手を上げる)すいません、生1つ
……お前がこの新商品のプロジェクトに懸けてたのはわかるよ。でもさ、そんなに気負いしてると身体がもたねえだろ
村田:お前になにがわかんだよ
秋山:まぁまぁそう言わずさ。俺ら同期なんだから腹割って話してくれてもいいだろうがよ
村田:……こうやって飲みに連れてってくれるのはありがたいと思ってるよ
秋山:ほらなー、その意気だ! 飲め飲め!
村田:(ビールをあおる)
秋山:まぁそのなんだ、会社っていう組織である以上、一人の力だけじゃどうにもならないこともあるだろ
村田:……うん
秋山:で、そこで俺らがどんなに頑張っても実現できないことはある。そこは認めるしかないだろ
村田:わかってるけど
秋山:いや、お前はわかってない
村田:……
秋山:俺らにとって大切なことはなんだ? 無謀な挑戦か? 上司に歯向かう態度か? 違うだろ。美味しいお菓子をお客様に届けることだろ。そのためには、まずは俺らの商品を社内にいる人間に認めてもらわないとお客様にだって満足してもらえないだろ
村田:……
秋山:俺らがどんなに完璧だと思った商品でも他人から見ればくだらないものにしか見えないんだよ。だから努力するんだろ。俺らには俺らなりの流儀ってもんがあって、それが認められるまでは俺らは前に進むしかないんだよ。な?
村田:……
秋山:周りの人は俺らがどれだけ頑張ってるか知ってるから支えてくれるよ。誰も一人じゃないんだ。俺らのことを少なからず応援してくれてる人もいるんだからさ、もっと俺らは前に進めるはずなんだ。だから……
村田:ちょ、ちょっと、ちょっと待てよ
秋山:……なんだよ
村田:うるせえよ
秋山:…は?
村田:うるせんだよさっきからお前
秋山:……お前、この期に及んでまだわからないのか!
村田:違う違う違う、違うよ。俺らって言うのやめろよ("ら”を強調する)
秋山:はぁ?
村田:さっきから黙って聞いてたら、俺ら俺らってまるで俺とお前が一緒みたいな感じで話してるけどさ、お前なんもやってないだろ
秋山:今関係ないだろ
村田:大ありだろ! お前、お茶汲みしかやってねえだろ!
秋山:……それを言うなよ
村田:言うだろ! なに言われても響かねえんだよ! お茶汲みしかやってないやつに仕事のこととやかく言われちゃたまったもんじゃないわ
秋山:俺だって新商品のアイデアとか考えてただろ!
村田:それ1年前の話だろ。あまりにも変なアイデアばっか出すから先輩からプロジェクト外されたじゃん
秋山:認めない上司が悪い!
村田:無茶苦茶だな! お前さっき言ってたことと真逆だからな
秋山:俺の考えるお菓子は絶対に美味い。それがわからないやつなんてこっちから願い下げだ
村田:いやいやいや、どんなに完璧な商品でも他人から見ればくだらないんじゃねえのかよ
秋山:くだらないとはなんだ!
村田:お前が言ったんだよ! なぁ、もう認めろって
秋山:絶対に美味い。俺の考えたポテトチップスわさび味は
村田:もうあるんだよ! 大ヒットしてんだよ!
秋山:ポテトチップス ピザ味も
村田:それもあるよ
秋山:カラムーチョも
村田:もう名前ついてんじゃん
秋山:自分のアイデアに自信持ってなにが悪いんだよ
村田:自信持つことが悪いんじゃないよ。人のアイデアを盗むのが悪いんだよ
秋山:盗んでない。美味しかっただけだ
村田:認めてるねもうそれは
秋山:あぁもういいんだよ! 頑張って這い上がらないといけないんだ俺たちは!
村田:だからその俺たちって言うのやめろよ! なんかこう、虫唾が走るんだよ
秋山:なんでだよ
村田:なんか大学生のときを思い出すんだよ
秋山:はぁ?
村田:いつも一緒にいるグループにいつの間にかいた大して喋ったこともないやつ。食堂とかで席探してるといつの間にか後ろにいんの。なんか、俺この人たちとたむろってますよー仲いいですよーみたいな顔してるやつ
秋山:なんなんだよそいつ
村田:知らねえよ
秋山:一回自分の胸に手当てて考えてみろってんだ。お前は友達を作る努力をしたのかってな
村田:うん、俺さっきからそういうこと言ってるのよ
秋山:そういう他人のふんどしで相撲取るやつ? そういうやつ見ると反吐が出るな!
村田:どういう気持ちで言ってんの?
秋山:俺はそういうやつらとは違うからな
村田:一緒だよ。あのさ、後輩も育ってきてさ、会議でもバンバン意見言うようになってきてんの。上司からも一目置かれてて、下からの追い上げがすごくてめちゃめちゃ焦ってるんだよ。お前にはそういう気持ちわかんないだろ
秋山:わかるよ
村田:わかんねえだろお茶汲みには!
秋山:わかるよ! ……最近、コーヒーサーバーが設置されたから仕事がだんだん減ってる
村田:うるせえよ! 後輩とコーヒーサーバーを一緒にすんなよ!
(スマホに着信が来る)……おっ(ニヤける)
秋山:誰から?
村田:まぁ
秋山:なんだよ、まぁまぁって。女の子?
村田:……まぁ
秋山:おいー! いいじゃんいいじゃん、どんな子?
村田:まぁ
秋山:まぁじゃわかんねえだろ。教えろよ
村田:……会社の子
秋山:マジで!? 俺の知ってる子?
村田:んー……わかんないな。だってお前最近お茶汲みしかやってないもん
秋山:あぁそうか…
村田:俺と仕事が違いすぎるんだよ。……経理のみくちゃん
秋山:えっ
村田:この前、他の部署と親睦会があって、そのときに出会ったんだよ
秋山:親睦会?
村田:新商品のプロジェクトがそろそろ大きく動き出すからって、他の部署とも連携図るためにね
秋山:あぁ
村田:いやー、結構みくちゃんと俺趣味合うんだよね。いろいろ話してたら盛り上がっちゃって。今度の土曜に映画見に行くことになってさ
秋山:映画?
村田:みくちゃん映画が趣味なんだって。んでちょっと飯がてら行こうって話になって。今なんの映画やってたっけなー、ご飯もなにが好きなのか聞かなきゃなー、初デートって場所大切じゃん? そろそろ考えなきゃなーってさー
秋山:……アクション
村田:……え?
秋山:アクションものと中華料理
村田:……は? え、なに?
秋山:正確にはヒーローが出てくるバトルもの
村田:いや、ちょっと
秋山:店の雰囲気はオシャレになりすぎないほうがいい。もしくは下町の居酒屋でも可
村田:可、じゃねえよ! ちょっと待て、お前みくちゃんと仲いいのか?
秋山:……
村田:答えろ!
秋山:……2ヶ月前から付き合ってる
村田:……マジか
〇 2人、沈黙する
村田:出会いは?
秋山:俺が給湯室でお茶淹れてたら、みくちゃんがコーヒー作りに来て、そういうのが何度かあるうちにだんだん話すようになってきて……
村田:(絶望する顔)
秋山:でも! でもな! これは浮気じゃないからな! お前と出会う前に俺はみくちゃんと出会ってるんだからな!
村田:うんうん……それはわかってるけどさ。……なんで?
秋山:なんでって……タイミングだろこういうのは
村田:いや、違うよ。……お前、仕事できないのになんで?
秋山:は?
村田:納得いかねえんだよ。お前、1年前からお茶汲みしかやってないんだぞ! なんでそんなやつが付き合えるんだよ
秋山:知るかそんなこと!
村田:俺はこのプロジェクトを成功させようとずっと努力してきて、やっと軌道に乗れそうなんだよ。そんなときにちょっと仲良くなった女の子がいたら、あぁ俺の努力が少しは報われたのかなとか思うだろ!
秋山:わかるけどさ
村田:それが他の商品パクってずっとお茶淹れてるやつに女の子までとられるなんて……この泥棒茶摘み野郎が!
秋山:おい、言い方ひどいぞ! 静岡の人に謝れ
村田:ひどくねえよ当たり前だこんなもん
秋山:こればっかりは仕方ないだろ
村田:納得できねえよ……だいたいみくちゃんはお前の仕事に納得してんのかよ
秋山:それは…あれじゃないか。経理部って俺らの企画部と部屋違うだろ。だから俺がお茶汲み担当だって、みくちゃん知らないんじゃないかな
村田:はぁ!? 冷静に言うなよ! 少しは恥ずかしいと思え!
秋山:思ってるよ。でも仕方ないじゃんか。こうでもしないと付き合えないんだから
村田:うーわっ!
秋山:みくちゃんさ、デートするたびに「プロジェクトどう?」って聞いてくるんだよ。で、俺はお前から聞いた仕事のことをそっくりそのまま話してる
村田:最低だなお前! お前それ、騙して付き合ってるのと同じだからな!
秋山:うるせえよ! どっちにしろ俺のこと好きなんだからしょうがないだろ!
村田:あぁもうなんかムカついてきた。お前のことみくちゃんにバラしてやる
秋山:おい! そんなことしていいと思ってんのか!
村田:思ってるよ! お茶汲みにはな!
秋山:お前……! 俺のことはなに言ってもいいけどな、静岡の人の悪口言うんじゃねえぞ!
村田:お前の悪口言ってんだよ!(電話をかける)
秋山:おい、ふざけんな! やめろ!
村田:(立ち上がって逃げる)
秋山:(追いかける)
村田:あ、もしもーし!
秋山:(立ち止まる)
村田:ごめんね、突然電話なんかしちゃって。今って時間大丈夫?
秋山:(もどかしい顔)
村田:あのさ、今秋山と飲んでるんだけど、うん……そう、同じプロジェクトの秋山(秋山を上から見る)
秋山:(目をそらす)
村田:でさ、ちょっといろいろみくちゃんのこと聞いちゃってさ。それで電話したんだけど……えっ? 浮気?
秋山:(どうしたんだという顔)
村田:うん、うん……あぁ~……そっか、うん、わかった、また土曜日にね(電話を切る)
秋山:なに? どうしたんだよ
村田:みくちゃん……知ってたわ
秋山:えっ?
村田:お前がプロジェクトに参加してないって……お茶汲みの仕事しかしてないって、知ってたわ
秋山:……
村田:ほら、事務のお仕事っていろいろ情報入ってくるじゃん
秋山:…… あっ、浮気ってなんだよ? それ聞きたいよ
村田:あぁ、今度俺と映画見に行く話か?
秋山:……?
村田:お前が仕事できないやつってわかって、お前が嘘ついて付き合ってたのが嫌だったんだって。だから同じプロジェクトの俺と仲良くなろうとしてたらしいよ。俺とお前が飲んでるって知って、もう全部バレたと思って話してくれたみたい
秋山:……
村田:だからお前はどうせ捨てられる運命だったんだよ
秋山:(膝から崩れ落ちる)最低な女だ……
村田:お前だろ! 最低限嘘つくのはやめようぜ
やっぱ努力は報われるもんだよな~(秋山の肩を叩く)
秋山:(立ち上がる)……俺が間違ってたよ
村田:おう。まずは自分の非を認めて、これからみんなに認められるように努力を……
秋山:転職してお茶汲み専門会社に行くわ
村田:そんな会社ねえよ
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お読みいただいた方々、ありがとうございました!
今までは設定ありきのネタを主に書いていたので、こういうリアリティのあるコントを書くのはどうかなと思っていたのですが、いざ書いてみるとすごく楽しかったです。また書きます。
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まだまだ見習いのため、より私を知っていただこうと、台本などをアップしております。
もし面白いなどと思っていただけましたら幸いでございます。
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