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文字どおり八方ふさがりだった! / No way out

ビートルズというバンドを知っているだろうか。なかなかナメた質問だろうか。この間何十年ぶりの新曲が出たりした。
ジョン・レノンとポール・マッカートニーという稀代の天才が二人で作曲をしていたバンドだ。ビートルズのほとんどの曲が「レノン・マッカートニー」というクレジットがされている。顔を突き合わせて二人で書いたものからそれぞれの単独作に少しヒントを与えあったものなどその実はさまざまなようだが。

ところで、平野雄大という男は、やるときはなかなかやってくれるヤツだ。今日はそんな話。

そう、「No way out」という曲について話してみたい。まあこの曲はクレジットを見てくれるとわかるように「作詞:石川平野 作曲:平野」とあり、Kamisadoのソングライター二人の共作となっている。今変換したら凶作って出たわビビるわ。

この曲は今年の2月に平野からまずデモが送られてきた。彼はあらかじめけっこうデモを作りこんでくるタイプなので、例に漏れずこの曲も展開やギターソロ含めてキーが違う以外はほぼ皆さんが聴いてくれている通りだ。
オレが聴いた感触はかなり良く、バンドで手懐けるのが楽しみだった。

しばらくして、「サビのメロディやり直そうかと思って・・・」ときた。ふむ例えばどんなのができたんだろう。新しく変わったサビはメロディの盛り上がりこそあれど繰り返されるようなサビでもない感じ(まあ今思えば最初のサビがかなり耳に残っていたのもあるが)。なんだか決め手に欠けるね。「でも一個目のサビだとなんか物足りない気がするんだよなあ」とヒラノ。神保も含めてどれがいいかモニャモニャ話していたわけさ。
そこで僕がフッと思い浮かんで。

「これ、1個目のをメインにして、最後にだけ新しいメロディを足しちゃえばいいんじゃないのー?」

もともと彼の作るメロディはいい意味で小気味よいので(この曲は特にそういう性格)、ラスサビが続いてもあまりしつこくならなかった。ということでメロディは完成。こういう瞬間が良いよねやっぱり。

こんなことをしているうちにこのメロディがすっかり気に入ってしまった僕は、歌詞を書かせてくれるようにお願いしました。
過去にも何度か一緒に歌詞を書いたり(mischief!ナツ!)、詞曲を分業したり(オークワード)はしたけど、僕のメロディに彼が言葉を乗せるパターンだった。たまには人のメロディに歌詞を書いてみたい!というわがままを聞いてもらいました。


「No way out」というフレーズは、わりとすぐに浮かんだ。メロディをハミングしてたら自然とリズムに乗って出てきた。意味を調べると「八方ふさがり、逃げ場がない」ということらしい。主に戦闘だとか、もっと雄々しい状況での言葉らしいが僕は悲恋の主人公に歌わせてみた。
「フレーズとしてわかりづらい」とか「意味があまり通ってない」とか?知らんね。これが降ってきたならこれでよかったのさ。

そう、ラブソング書いてみたくてね。ちょっと女々しくなりすぎたかもね。
共感するにはかなりの限定された状況を経験していないと難しいかもしれない。この歌に共感できた人はそんな自分に酔ってほしい。

筆者の実体験?それはどうでしょう。歌はあくまでその世界の主人公だからなあ。

ただ、ステージという場所から君たちにある種の求愛をしていると例えるなら、いつかみんながこことは違うところに人並みの幸せを見つけた時に、自分のことなんかフッと忘れてしまうんじゃないかな、という気持ちになるときはあるかな。


さてウキウキで書き上げたわけなんですが、ちょっとちゃちい仕上がりに。
あまりに僕の妄想が爆発してしまった弊害かな?
作曲者のヒラノからは「もっとメロのリズムを重視してみてほしい」と言われ、二人でいろいろ削ったり、つめ込んだり、伸ばしたり切ったり。
「これだ」という実感があまりないまま、歌入れ当日(!)
レコーディングスタジオでも、紙に書いては消し書いては消し。
せっかく自分で書き始めたからには、自分の手で完成させたかった気持ちもあった。しかし最終的にヒラノがどたん場でいくつか言葉を放り込んでくれた。するとなーんともいい感じにまとまったよ。「ブライター」「名前もないくらいの距離」「時がさらした孤独なイノセンス」なんかだね。
こうして本当に(ガチの意味で)ギリギリで完成。無事にレコーディングできた。

つまり「No way out」という曲は、
お互いが持ち寄った素材から、もう片方がアイデアを与え補い合うことで完成した曲だったわけだ。レノン・マッカートニーに並んだなどとは夢にも思わないが、バンドをやっていて、自分じゃない人物と曲を作ることで起こせるマジックが本当にたまらなく好きだね。

元来、「相棒」と呼べるような人がそばにいてくれない人生だったけれど、彼はなかなか良いヤツさ。

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