憧れとイラダチの歌はまだ続いている / 放熱
君に長い手紙を書こう。
っていう書き出しは少しキザすぎるかな?
「閃光」
音楽的にはまあお聴きの通り、オレの思うロックンロールを炸裂させようと思って作った。イントロのアウトロのつっころばされたようなドラムプレイはMO’SOME TONEBENDERの「Green & Gold」から。わかるひとにはすぐわかると思う。
さすがにKamisado史上最も激しい楽曲だろう。どのプレイも使い果たす勢いだよね。
もともと別のサビメロがついていたが、深夜2時に突然今のメロディが降ってきた。「降ってきた」ということはこれが正解なのかなと思ってつけ変えた。後悔はない。
「憧憬」
人間、なりたかったものになれることよりなれなかったことのほうが多い。叶えたかった夢より叶わなかった夢、手に入らなかったもののほうが。20代もなかばを過ぎてくると、それを思い知らされてきた想い出が数多くある。相応の分別だってついてきた。中途半端な理想を掲げて「諦めてはいけないよ」なんて軽はずみに口に出せないよなあって思う。
僕はもうすっかりひねくれてしまったところがあるから、耳に優しい希望の歌には眉を顰めるようになってしまったよ。
でもそれじゃあ、自分はステージで何を歌えばいい?
「僕から君へと虹の橋を架けてくれたんだ」気持ちはわかるけど誠実さが伝わるかな?
「欠けたはずの君の色はいつか染まるよ」うんうん、よくわかった。じゃあオマエはどうなんだい?
オマエは本当は何を叫ぼうとしていた?
「今、光が昇るというならこの痛みを照らしてよ 自分を確かめたいんだよ」
「今、奇跡が起こるというならこの涙を晴らしてよ 自分を抱きしめたいんだよ」
溢れる自意識の中からこのフレーズを引っぱり出すのに何か月もかかった。
「放熱」
結局はなにもないのかもしれない。僕はただステージで生き延びている姿を見せることしかできないのかもしれない。
熱を放つこと。それがすべてなんだよきっと。
たとえたどり着けなくても、報われたい、救われたいと願うことのなにが悪い?
報われない、救われないと感じるイラダチや怒りが残っていてなにが悪い?
それが「今」自分が息を吸う意味ならば。
君もきっとそうなんだろうか。報われない夜、消えたい夜、誰も連れ出してくれない夜に狂い出しそうになっただろうか?僕もそうだよ。
たとえステージの上で全知全能のように振る舞えたとしても、この胸の燻りが消えることはあるのだろうか。それはまだわからない。
きっとこの歌はいつか僕が年老いて、自分の人生に満たされてしまったらもう歌うことはできないだろう。ただそうなってしまったら、自分自身が終わってしまうような気がするね。もう放つ熱がないってことだから。
かつて「白夜」という歌の中で、自分たちを忘れて、離れてしまう人がいることに不安を感じていた。
今は、あの頃より少しだけ君のことを信じていられる。
生命の結晶は今日も何とか放てそうだから、微かでも届いたなら受け取ってくれよ。
「蛇足」
英題「Walk on the Wild Side」はLou Reedという古いロックスターの曲から。
「白夜」の英題をディランの引用で「All along the watchtower」にしたことに味を占めた。
これから二字熟語の邦題があれば、ご期待ください。
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