「EPFの歯周病診療ガイドライン」は、ちょっと・・・。

はじめに


「EPFの歯周病診療ガイドライン」がGRADEアプローチを採用しているって聞いたので、原文を確認。

Guideline on treatment of stage I-III periodontitis
https://onlinelibrary.wiley.com/toc/1600051x/2020/47/S22

残念ながら、


GRADEアプローチではありません。GRADEアプローチで行なったとありますし、一見、それっぽいですが、ダメです。

ある推奨を使って解説しよう

R1.6 What is the efficacy of tobacco smoking cessation interventions in periodontitis therapy?
Evidence-based recommendation (1.6)
We recommend tobacco smoking cessation interventions to be implemented in patients undergoing periodontitis therapy.
Supporting literature Ramseier et al. (2020)
Quality of evidence Six prospective studies with, at least, 6-month follow-up
Grade of recommendation Grade A—↑↑
Strength of consensus Unanimous consensus (1.2% of the group abstained due to potential CoI)

結果が正しいとか正しくないでなく、その方法論の説明です。

もとになるSRは?

Ramseier et al. (2020)が根拠となるSRとあります。よって、これのエビデンスの確実性を確認します。
Impact of risk factor control interventions for smoking cessation and promotion of healthy lifestyles in patients with periodontitis: A systematic review
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jcpe.13240
の付録に、3.4 Quality assessmentがあるとのこと。

観察研究なのに、コクランのRoB1.0で評価。もちろん、Adequate sequence generation?は、NR: not reported.。

おいおい、当り前でしょ。もしランダム割付けの方法が、非RCT試験に書いてあったら恐ろしいは!
よって、明らかに、このSRって、いい加減な作り方で、質も低いですね。使っちゃダメでしょ。しかも、その中のエビデンスの確実性も明らかに、「非常に低」(言いすぎかな、少なくても、読まなくても「低」)です。

エビデンスの確実性は、結局、書いてない!


どこをみても、推奨の強さと、その原案のコンセンサスの一致率みたいなのはあるが、肝心要のエビデンスの確実性(質)の記載がない。と言うことは、SRを使っているが、そのSRの中の効果推定値のエビデンスの確実性の評価をせずに、推奨を作っているという、トンデモないCPGとなる。

そもそも、推奨の分類はGRADEアプローチでなかった

一見、GRADEアプローチのようですが、TABLE 4. Strength of recommendations: grading scheme (German Association of the Scientific Medical Societies (AWMF) and Standing Guidelines Commission, 2012)とあるように、そもそも、推奨の分類が、GRADEアプローチと違うと、なっています。

推奨を決めるための要因として、それっぽいのが書いてあるが


このCPGは、3.4.2 Strength of Recommendationsのところに、

relevance of outcomes and quality of evidence for each relevant outcome
consistency of study results
directness regarding applicability of the evidence to the target population/PICO specifics
precision of effect estimates regarding confidence intervals
magnitude of the effects
balance of benefit and harm
ethical, legal, economic considerations
patient preferences

を考慮したとあります。でも、その内容もなく、利益と害のバランスはどこ?
Available evidenceという段落には、SRのまとめが、確実性もRoBも抜きで書いてあるだけでした。

そしてこの例の推奨度は?


そして、この怪しいSRを元にした結果で、エビデンスの確実性を考慮せずに、
We recommend (↑↑)/We recommend not to (↓↓)
We suggest to (↑)/We suggest not to (↓)
May be considered (↔)
に分けた原案を作っています。
この例では、Grade of recommendation Grade A—↑↑と、強い推奨となっている。どうして?

意味不明のコンセンサスの基準

そして、それに対して、コンセンサス委員会の投票で、強くコンセンサスしたか、弱くコンセンサスしたかなどを分けていると言うわけのわからん、方法で作っています(この例では、Unanimous consensus全開一致)。
そもそも、エビデンスの確実性がわからないのに、どうして投票できるのだ。

おいおい!

例のまとめ


怪しいSRの結果で、かつ、明らかにエビデンスの確実性が「非常に低」の根拠で、なぜか、強い推奨という原案を作って、それを、有識者が全員一致でコンセンサスしたという、不思議な推奨を作っているCPGです。

私は、このように読むかな?


残念ながら、このCPGは、単なる、総論文・有識者のコンセンサス集として、診療ガイドラインとして、読みませんね。


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