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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る⑨ Kick Out Of The Jams/MC5

69年に発売された5人組バンドMC5のデビューライブアルバム。デビューアルバムがいきなりライブ盤という異色なバンド。

ライブ盤ならではの魅力が詰まった作品であり、初期パンクと評される男臭くて荒々しい演奏や会場の熱気が見事に閉じ込められており、その狂熱の雰囲気は今聴いても色褪せない。ジャケットは正にこのアルバムを表したかのような混沌さだ。

ちなみにMC5の意味はそのまま「Motor City」の事で、彼らの出身地である。あのモータウンはこのモーターシティの事。

曲ごとの感想

01.Ramblin' Rose
ライブ盤の醍醐味といえば合間のMCがそのまま収録されている事だが、一曲目は正に挨拶の文言がそのまま収録されており、本当にライブに来た気分になる。
リフを3コードの中で反復させるガレージ的な曲で一曲からいきなり気分が上がる。

02.Kick Out of The Jams
二曲目にしてタイトル曲。こちらもリフがメインで展開される曲。更に激しくなったジミヘンみたいな雰囲気だと思った。ちなみにこの曲の前のMCで「マザーファッカー」と発言しており、これが問題となり当初はこの部分を別の言葉に差し替えて収録されていたというエピソードがあり、バンドの暴力性を象徴したかのような曲。とても好きな曲だ。

03.Come Together
ビートルズの有名なあの曲ではない。
前曲から続くように演奏され、休憩の隙を与えないアップテンポな曲。

04.Rocket Reducer N. 62 (Rama Lama Fa Fa Fa)
珍妙な副題は間奏などで歌われるフェイク部からで、この曲もまた特徴的なリフで構成された曲。
コーラス部分は会場でリフレインしたくなる熱苦しさだ。
ここまでずっとアップテンポな曲が続くので本当に休む間がない。

05.Borderline
ここからがB面、やっと一息つくことができる。アルバムの中では2分代と短めだが、アップテンポな部分とスローな部分が交互に展開される忙しない曲。

06.Motor City Is Burning
ここに来てコテコテのブルース曲。暗喩を含んでいそうな意味深な歌詞をソウルフルに歌い上げる。両ギターの交互に絡み合うような掛け合いも聴きどころ。とても泥臭い隠れた名曲。

07.I Want You Right Now
スローテンポの重めのロックバラードな曲。
A面がアップテンポのぶっ飛ばす勢いの曲群と対比するように、B面ではスローな聴かせる曲を中心に収録されている。
中盤のライブ的な掛け合いの後、後半は元の曲調に戻るがこの時のボーカルのシャウトの迫力は凄まじい。

08.Starship
アルバムラストの曲。その名の通り宇宙船が宇宙に向けて飛び立つことがテーマの曲。
前半はアップテンポで、今にも飛び立つかのような高揚感は聴いていてとても気持ちがいい。
カウントが終わり、宇宙船が宇宙に飛び立つ。間奏のパートは本当に宇宙空間に漂っているかのような余白が多い演奏になる。
楽器陣の宇宙を表現した即興演奏が始まり、左右から奇妙な音が飛び交い、とてもサイケな空間が生まれている。きっと当時のライブでさえも会場は異様な雰囲気に飲み込まれていただろう。
そして、最後もテンポが元に戻る事なくそのまま終わってしまう。そのまま宇宙をさまよってしまっているのだろうか…。

今回聴いて改めて良いと思った曲

04.Rocket Reducer N. 62 (Rama Lama Fa Fa Fa)
08.Starship

なんと言ってもラストのStarshipの異質さが忘れられない。大抵のパンクバンドであればライブ盤の最後もアップテンポな曲で気持ちよく終わるわけだが、突如宇宙空間に放り出され、訳がわからないまま終わるという後味の妙さがたまらない。メンバーの表現力に唸らされる一曲だ。
Rocket Reducerは単にリフが好みという理由の選出。

まとめ

69年に発売された作品のはずなのに、今作に記録された熱狂的な演奏の数々は今聴いても当時のライブを想像できるレベルで鮮明に残されている。技術力がそこまで高いというわけじゃないのもとてもパンクらしい。あくまで勢い。荒削りな轟音の演奏に身を委ねている時の高揚感は、サイケと称してもいいのかもしれない。

…なんというか1日一枚という頻度の高い更新なので、昨日や今回ぐらいの文章量が丁度いい気がしてきた。次回からはこれぐらいの軽い量で「あくまで続けること」を目標に頑張っていきたい。
そうなると先週分の記事であんなに力を入れて書いてしまった事を少し後悔…。

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