一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る㉑ Electric Ladyland/The Jimi Hendrix Experience
いよいよこの習慣も21日目に突入し、残すところ11日となった。
今回はジミヘンの3枚目のアルバムである「Electric Ladyland」だ。ジミヘンは以前にも1stを記事にしたことがあるが、このアルバムのボリュームの大きさから自分はまだ聴き切れていないと思い取り上げることにした。
ジミヘンドリックスエクスペリエンスとしてはラストのアルバムであり、全16曲かつ収録曲のうち2曲は10分越えの大作だったりと、当時でもボリュームが大きくレコードでは2枚組で発売された。当時のジミヘンの才能が爆発したロック全体でも大きな爪痕を残した名盤である。
曲ごとの感想
LP1
01....& The Gods Made Me Love
ギターのノイズをコラージュしたインスト曲で、この大作の一曲目らしい緊張感と壮大さを感じるオープニング。ギターノイズによる一曲目ということで前作「Axis: Bold As Love」の一曲目「EXP」を彷彿とさせる。
02.Have You Ever Been (to Electric Ladyland)
スローテンポな曲で、前作の作風を感じさせるアダルトな雰囲気。ファルセトを多用したジミヘンのボーカルもソウルフルでとても良い。
03.Crosstown Traffic
前曲のアウトロの余韻をぶつ切るがごとく唐突に始まるこれまでのジミヘンらしさ溢れるリフもの。王道なかっこよさでとっつきやすいので聴いた当時から好きな曲だ。カズーというフォークで主に使われる楽器をジミヘンが演奏しており、地味ながら特殊なアレンジが光る。タイトルと同じバンド名のトラフィックから、デイヴメイソンがバックコーラスにゲストで参加している。
04.Voodoo Chile
アルバム前半の山場となる15分にもわたる大曲。歌こそあるものの大半がセッションによる演奏で、どんどん曲調が流動的に変わっていく。かなり濃度の濃いブルースで、ジミヘンのブルージーなプレイ、楽器同士の絡み合いをたっぷりと堪能できる。
更にゲストとしてジェファーソンエアプレインからジャックキャサディがベースで、トラフィックからスティーヴウィンウッドがオルガンで参加しており、二名とも中々主張の激しい演奏をするので、終始緊張感溢れる雰囲気となっている。今まではバンドのメンバー三人とオルガンの誰かによる4人の演奏かと思っていたが、まさかベースもゲストだったことに驚いた。それを踏まえて聴くと確かにどことなく演奏の感じも違って聞こえるし、太くゴリゴリなベースでとてもかっこいい。途中スタジオからの拍手の音が聞こえるが、それも納得するレベルの名演だ。
05.Little Miss Strange
今作唯一のベースのノエルレディングが作曲した曲。作曲者は違うものの演奏のせいか他の曲と並んでも雰囲気に違和感がない。フォークロック調だが、ギターもドラムも激しく、ハモるギターのフレーズがとても良い。
06.Long Hot Summer Night
ゆったりとしたテンポのR&B色が強めの曲。コーラスのフレーズが耳に残るので地味に好きな曲。
07.Come On (Let The Good Times Roll)
アールキングの曲のカバー。特徴的な歪んだギターリフがとてもかっこよく、長尺のソロを魅せるなど完全に自分たちのモノにできている感じがある。
08.Gypsy Eyes
バスドラの4つ打ちが心地いい踊れる曲。リズムが中心に出ていてとてもファンキーな印象である。
09.Burning of the Midnight Lamp
レコードでは1枚目のラストとなる。キーボードによるフレーズが耳に残る明るめな曲。特徴的なバックコーラスは女性R&Bグループのザ・スウィート・インスピレーションズによるもので、ソウル感が出て面白い。ワウによるギターが多用されており、だんだんサイケな演奏になっていく。
LP2
10.Rainy Day, Dream Away
イントロからサックスの演奏が入っているなど、ジミヘンらしくない雰囲気を感じる。中間でのギターとサックスの掛け合いがとても面白い。この曲は後にバンドオブジプシーズでジミヘンとバンドを組むバディマイルスがドラムを叩いており、タイトなプレイが渋くてかっこいい。
11.1983... (A Merman I Should Turn to Be)
アルバム後半を象徴する13分の大曲。こちらもセッションがメインの曲だが、メインのフレーズらしきものが後半にも登場していたりと、ある程度体裁が整っているようにも感じる。ブルージーな演奏だった「Voodoo Chile」に比べてこちらはゆったりとしていてディレイが深くかかったミックスなど、とてもサイケな音像になっている。雰囲気を更に支える特徴的なフルートは、これまたトラフィックからクリスウッドによる演奏。宇宙的とまでいえそうな大きな広がりを感じる演奏で、スケールの大きな曲だ。
12.Moon, Turn the Tides...Gently Gently Away
前曲の余韻をそのまま別トラックにしたかのような1分程度の短いトラック。宇宙にいるような広大な雰囲気を感じる。
13.Still Raining, Still Dreaming
「Rainy Day, Dream Away」とタイトルに繋がりを感じさせる粋な曲。更に演奏は激しくなり、ステレオを飛び交うギターがサイケでカオスな曲。そもそもこの曲自体が「Rainy Day, Dream Away」がフェードアウトした後の続きの部分であるが、演奏の変わりようがすごくて普通に別の曲のように感じる。コンセプトアルバム感があって面白い構成だ。
14.House Burning Down
イントロからハードロック感あふれる激しいギターがかっこいい曲。ドラムのリズムが気持ちいい。アウトロのギターは歪みすぎてもはやバイクのエンジンの音のようだ。
15.All Along The Watchtower
ボブディランの曲のカバーであり、原曲と比べるとその変わりように驚く。しかし、カバーとは思えない貫禄と完成度であり、ボブディラン本人も認めるほどの名演でありかなり人気が高いカバー曲である。12弦のアコギの演奏があるのは元バージョンへのリスペクトからだろうか。ローリングストーンズのブライアンジョーンズがパーカッションで参加しており、イントロなどでの特徴的なパーカッションや、タンバリンなどで曲にポップさを足している。
16.Voodoo Child (Slight Return)
大作のラストを飾る、ジミヘン史上最もヘビーな演奏の曲。リフの重たさが特徴的で、ハードロックの先駆とも言えるだろう。ギターはファズのみならずワウも駆使しており、そのプレイングはギターの出せる最大限の音を詰め込んだかのような名演である。
今回聴いて改めて良いと思った曲
07.Come On (Let The Good Times Roll)
今作では同じくカバー曲のAll Along The Watchtowerの陰に隠れがちだが、こちらのカバーもかなり名カバーだと感じた。やはりリフが物凄くかっこいい...。
まとめ
ジミヘンに限らず2枚組のアルバムはとても好きなアルバムや名盤が多い。ビートルズのホワイトアルバム、ストーンズのメインストリートのならず者、ツェッペリンのフィジカルグラフィティなどなど、これまでの記事の中だとキャプテンビーフハートのトラウトマスクレプリカもである。バンドの制作意欲が爆発して一気に二枚分レベルの量の曲が出来上がるのだから至極当然か。今作も正にその制作意欲が爆発した表れとも言える名演の数々で、演奏楽器こそ少ないもののそれぞれの演奏の複雑さやセッションの流動的な展開などそれぞれの情報量はとても多くて、何度聴いても色々な発見を感じられる。ゲストミュージシャンも多くそして顔ぶれも豪華であり、曲ごとにそれぞれの楽器のプレイを聴き比べるのもとても楽しい。
ジミヘン自身のギターの演奏も最高潮ともいえるテンションの高さであり、2つの長尺セッション曲での演奏でもそうだが、ロックもファンクもブルースも弾きこなし、それらを混ぜこぜにすることでもはや演奏が唯一無二のジャンルと化している。更には「Voodoo Child (Slight Return)」でのこれまでの演奏を更にハードにしたようなギターは後のハードロック流行を予見していたかのようでとても凄みを感じる。
これまでの自身のアルバムの作風を統合したような、ジミヘンの音楽性の集大成を感じられる巨大なスケールの名盤であった。
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