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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る③ The Millennium/Begin

今日はソフトロックの名盤「Begin」。失礼ながら最初のころはミレニウムとビギン、どちらがバンド名でアルバム名なのかを混合していた。
ミレニウムのデビュー作だが、この一枚しか出していない。その後未発表曲集やらソロの作品もCD化されていたと思うが、何故かそこまでは食指がいかなかった。

この作品、媒体によってソフトロックと紹介されたりソフトサイケと言われたりで厳密ににはサイケではないのかもしれないが、私はしっかりとこの作品はサイケであると言いたい。

このバンドの特徴は綺麗なメロディと繊細なコーラスワークだろう。私が一番コーラスが好きなバンドはやはりビートルズだが、次を挙げるとしたらミレニウムを選びたい。下手したらビートルズよりもコーラスがすごいバンドかもしれない。この幾重にも重ねられた厚みがあって美しいコーラスが、とても広がりがあって気持ちがいい。
このコーラスと美メロによって得られる高揚感はまごう事なきサイケのアルバムと言える。

曲ごとの感想

01.Prelude
オープニングの役割となるインストナンバー。初見で聴いた時はその60年代とは思えない音の綺麗さに驚いた思い出がある。
そのまま二曲目へと音が繋がっていく。

02.To Claudia On Thursday
一曲目から続けて始まる。私はこういうオープニング曲から流れるように始まる二曲目というのがとても好きで、このアルバムの繋ぎも例外ではない。
はねたようなテンポが特徴的でパーカッションが使われていたりするので南国な雰囲気を感じる。

03.I Just Want To Be Your Friend
ゆったりしたテンポの、ささやくようなボーカルが特徴的な曲。
何気にベースがよく動いていてかっこいい。

04.5 A.M.
アルバムの中ではこれが一番好きな曲かもしれない。
タイトル通り正に朝の静寂を歌っており、そのひんやりといていて落ち着いた雰囲気は本当に朝の5時らしさを感じる。
この曲の歌詞のように朝5時をふらつきながら聴いてみたい曲。

05.I'm With You
イントロから広がっていくようなコーラスがとても気持ちいい。アルバムの中で一番凝ったんじゃないかというくらいのコーラスが多重にかけられている。

06.The Island
アコースティックな曲で、地味に好きな曲。この曲も結構耳に残るメロディで、切ない感じがとても好き。
歌詞が何やら意味深である。

「島は僕の国であり、君の国である」
「島が僕らに言葉を与えてくれる」

「島」が何かを表しており、様々な解釈の余地を与えてくれる。
後半からスライドギターが入っていき、まるで孤島にいるような落ち着いた気分になる。

07.Sing To Me
トランペットが挿入されて、やけに明るい雰囲気の曲。特筆するようなことがなくて恐縮だが好きな曲ではある。

08.It's You
爽やかな曲。最初のバスドラの音が、音が綺麗で迫力がある。
この曲もコーラスがすごく好きで、アウトロの包み込まれていく感じがとても優しいサイケを感じて良い。
地味に風の音のようなものも挿入されていたりと、曲の伸びやかな雰囲気を演出してくれている。
最後はジェット機のような音が鳴り響き、そのまま次の曲に繋がる。

09.Some Sunny Day
バンジョーが使われており、スライドギターも入ってなんだかカントリーな風味を感じる曲。
アウトロの天に昇っていくかのように演奏が続いて、フェードアウトしていく様はややサイケ。

10.It Won't Always Be The Same
To Claudia On Thursday的なこちらもはねたノリの曲。
今作の中では比較的エレキギターが目立っているなと思いつつ、今更このアルバムにおけるエレキギターは結構影が薄いことに気づく。

11.The Know It All
ここからの二曲からはややサイケチックな雰囲気になっていく。アルバムでは珍しくしばき倒すようなドラムのリズムから始まる。前の曲同様ギターが比較的目立つポジションにいて、今作の中で特にロックよりな雰囲気がある。
トランペットのアレンジも結構サイケな感じがする。

12.Karmic Dream Sequence #1
一転して、雷鳴の音ともにダークな雰囲気で始まる曲。このアルバムの中で唯一のマイナー調の曲で、その雰囲気はアルバムの中では異質な存在。
この曲の面白い所は、一旦曲が終わったかのように思った束の間何故か琴のソロが始まり、最後は「Interlude」の1フレーズが流れて終わるというかなり変わった展開をする。
どうやらカートはこういう東洋への興味もあったようで、大胆にも琴を取り入れたのもその影響であることをうかがえる。
この展開の複雑さ、琴による特異な雰囲気がなんともサイケでかつプログレ的で好き。

13.There Is Nothing More To Say
前の曲から一転して平和な雰囲気のバラード曲で、歌詞の内容もシンプルなラブソング。
実質アルバムのラスト曲とも言える。

14.Anthem
歌詞が少ない為ほぼインストのようなエンディング曲。
サウンドコラージュ的な不穏な音が展開されるやいなや、突然ゴスペル調になって「Columbia…」と称えた後、またイントロのような前衛的なパートに戻る…。頭に?が浮かんだままアルバムが終わり、ただ単に綺麗なだけで終わらせないというバンドのささやかな抵抗が見えて取れる曲。

Bonus Track

01.Just About The Same

ここからはボーナストラックとして収録された曲で、プロモーションシングルとして発表された曲らしい。
確かに他の曲と比べるとドラムの音が軽めで、別日録音されたことがなんとなくわかる。
ノリがよくてこれまた南国など暖かい場所を連想される曲。

02.Bright
イントロが洒落てる。アコギが結構目立つ曲で、イントロなどのフレーズもとてもかっこいい。
アウトロで急にドゥーワップのようなコーラスが入ったり、妙に一捻りがあって面白い。

まとめ


ソフトロックの特徴として、ポップにほぼ近いロックであることやピアノやアコギなどのアコースティックな楽器がメインとして使われるなどが挙げられるが、確かにこのアルバムではかなりエレキギターの存在は、いることにはいるものの大体が横らへんで脇役のようにいて存在感が薄めである。

ロックばかり聴いている私としては、最初は少々物足りなさを感じたものの、それを補うようにハモリ、コーラスが複雑に絡み合い、曲に厚みを持たせている。どの曲でも本当にコーラスが素晴らしく、曲によってはもはや神々しさすら感じるレベルの広がりがある。
コーラスアレンジはメンバーのカートベッチャーによって作られており、そのアレンジの鬼才ぶりがよくわかる。薄くシンセがかかっている…?と思ったら「Uh…」と歌うコーラスだったりと、隅々までアレンジを施しているのがとても凄い…。

他に聴いていて気づいたこととして、かなり様々な楽器がアレンジに用いられていることにも気づけた。
様々な曲に入っていたパーカッションから、「Some Sunny Day」でのバンジョー、
「Sing To Me」などでのラッパ類
、更には「Karmic Sequence Dream #1」での琴と、様々な楽器が取り入れられ、それだけじゃなくそれぞれの曲で演奏されている楽器の数もとても多いように聴こえた。
これはこの作品が16トラックで録音された最初期の頃の作品であり、録音できるトラック数が増えたからこそのアレンジができたのだろう。コーラスの美しさも、それ故にたくさん重ねがけすることができたから生まれたアレンジである。確か7人編成のバンドだったが、ライブでは演奏を見せていたのかとても気になる。

これまでは数曲以外は通しでなんとなく聴いていたようなアルバムだったが、一曲ごとの情報はとても多く、聴き込んでみると発見があったりと、まだまだ奥が深いアルバムだと感じた。

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