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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る⑦ Surrealistic Pillow/Jefferson Airplane

サンフランシスコのサイケバンド、ジェファーソンエアプレインが発表した2作目のアルバムで、USサイケの名盤として有名な作品だ。

タイトルの由来はというと、このアルバムを聴いたグレイトフルデッドのジェリーガルシアが、本作を「枕と同じくらい超現実的(?)」と評価したことからつけられたそうだ。

ボーカルのグレーススリックが加入してからのアルバムであり、「Somebody To Love」「White Rabbit」と二つのヒット曲を歌ったことで有名。また、女性ボーカルのロックの先駆者的存在でもあり、そのインパクトと功績は大きいものだと分かる。

私がよく観ている音楽系YouTuber「みのミュージック」が先日、「影が薄くなってきた名盤」という動画を投稿しておりそこで丁度今作が取り上げられていたのを観た。
名盤なのは確かだが現在の音楽シーンに未だ影響力があるかと言われると…だが、楽曲のパワーは今聴いても強く、まだまだ古くないアルバムだと思っている。

今作を聴いたのは今年からで、それまではベスト盤しか聴いてこなかったにわかであるがこの数ヶ月でとてものめり込んだくらい好きなアルバムだ。

曲ごとの感想

01.She Has Funny Cars
ボディドリーを連想させるドラムのビートから始まる曲で、ギターのリフが好きな曲。
ボディドリービートのパートと、テンポが少しゆっくりになるパートを行ったり来たりする構成で、早速このバンドの特徴であるコーラスを堪能することができる。

02.Somebody To Love
グレースがボーカルをとる曲で、この曲自体がグレースが以前在籍していたバンドからの持ち曲ということらしい。シングルとして発売されてヒットしたバンドの代表曲である。

もはやハードロックとも言える力強いその歌唱はそのままこの曲の存在感に繋がっている。当然ライブでも定番曲であり、音源もいくつか残っている。私はVolunteersのボーナストラックに収録されているアップテンポなバージョンが特に好き。
何度も聴いていると実はベースがかなり動いていることに気づかされる。

03.My Best Friend
前曲から雰囲気が変わり肩の力が抜けたようなフォークロック曲。この脱力感がとても好きで、コーラスの掛け合いもとても綺麗だ。

04.Today
前曲が明るいフォークロックだったがこちらはしっとりしたフォークな曲。
最初は楽器数が少なく涼しげな感じだが、段々他の演奏やコーラスが入り、壮大な雰囲気になっていく。

05.Comin' Back To Me
こちらもしっとりとした曲だが、こちらは楽器はアコギ2本とフルートのみととてもコンパクト。珍しくボーカルもソロで、じっくりと聴かせてくる。この静けさは是非とも夜に聴きたい。

06.3/5 Of A Miles In 10 Seconds
B面の一曲目で、CDでは前曲から続いて始まるので寝ている所を叩き起こされたようなテンションにびっくりする。
賑やかながら緊張感漂うサイケな雰囲気で、この曲はベースラインが好き。

07.D.C.B.A -25
この曲もコーラスの掛け合いが好き。
ギターのアルペジオが心地よいポップな曲。

08.How Do You Feel
アコギを基調としたフォークロックな曲。
コーラスの存在がフォークロックからサイケロックに雰囲気を変えさせていると思う。

09.Embryonic Journey
2分未満のアコギ2本によるインスト曲。
2本のアコギの響き合うような演奏が聴いていてとても気持ちいい。

10.White Rabbit
グレースがボーカルの曲で、こちらもシングルとして発売されてヒットした。
タイトルに反して緊張感のある雰囲気だが、最後の高らかに歌うパートの一気に開放されていく感じがとても良い。「Somebody To Love」と共にグレースのボーカルの力強さを実感できる曲だ。
歌詞は「不思議の国のアリス」を題材としたドラッグソングであり、ファンシーながらサイケ的。

11.Plastic Fantastic Lover
本編のラストとなる曲。先にベストに収録されていたライブバージョンから聴いていた為スタジオバージョンはそれより少しテンポが抑えめなので初見の時は少し驚いた。
韻をたっぷり踏んだ歌詞をまくし立てるように歌うボーカルがかっこよく、同年にビートルズが発表した「I Am The Warlus」と似たものを感じる。

(Bonus Track)

01.In The Morning
ここからボーナストラック。この曲は同時期に録音されていた未発表曲で、ルーツに忠実な長尺の濃厚なブルースだ。バンドの演奏力の高さをたっぷり味わうことができる。

02.J.P.P. MC Step B. Blues
タイトル的にこっちもブルースかと身構えていると、こっちはとてもポップなフォークロックの曲でハーモニカがのどかさを更に演出している。
雰囲気的には本編に収録されていてもおかしくないクオリティの曲なのに一時は未発表曲だったことが勿体ない。

03.Go To Her (Version II)
1stのボーナストラックに収録されていた曲の別バージョン。未発表曲ながら作品を跨いで何度か収録されたということはメンバーも気に入っていた曲なのかもしれない。

ミックスの問題もあるかもしれないがこちらのバージョンの方が全体的に迫力があって好き。女性パートの部分もグレースが歌っており、力強さは段違い。

04.Come Back Baby
アップテンポな曲で、長尺のギターソロを聴くことができる。ギターの激しさももちろん、ブリブリと這い回るようなベースがとてもかっこいい曲。

05.Somebody To Love (Single Mono Version)
06.White Rabbit (Single Mono Version)

最後の二曲はシングル盤に収められていたモノラル版だが、私はやはりステレオ版の方が好みだ。
メンバーと楽器数が多いバンドなのでステレオで左右に演奏が聴こえる方が音の広がりがあるというのもあるし、こちらはリバーブが抑えられててなんだかこじんまりとしてるように聴こえてしまう。悪いとこばかりではなく、モノバージョンだとステレオバージョンに比べてベースがきいており、よく動くジャックのベースをより鮮明に聴くことができる。

そして、White Rabbitのこのバージョンは曲が終わった後に「D.C.B.A. -25」のインストバージョンが演奏される。本来はこの曲もWhite Rabbitの曲の一部だったのだろうか。

今回聴いて改めて良いと思った曲

Bonus Track02.J.P.P. MC Step B. Blues

ボーナストラックからの選曲となってしまったが、この曲は当時未発表曲だったとはいえとても雰囲気が好きでアルバム本編の曲とも見劣りしない良さを感じた。

まとめ


以前ミレニウムの記事の時に「ビートルズと同じくらいコーラスが好きなバンド」と紹介したが、聴いているとジェファーソンも本当にコーラスが素晴らしい…。この時期のサイケバンドはどれもコーラスが凝っていて、とても甲乙がつけ難い。ただ、これらのバンドとの決定的な違いは男女混成のコーラスである点だろう。特に不思議なのが女性コーラスが低音を担当することが多い所で、芯がしっかりしたグレースの歌声だからこそできるコーラスワークと言える。

アルバム自体は案外ロックな曲とフォークな曲が半々のバランスで収録されており、サイケ的なカラフルな雰囲気よりもこのアルバム全体の雰囲気はとてものどかで自然な風景を想像させられる。
それでも時々くる「3/5 Miles Of…」「Plastic Fantastic Lover」などの曲はインパクトが強く、色彩豊かでサイケ的だ。メンバーの演奏力もかなり安定しており、「Embryonic Journey」などで魅せられるアコギの演奏や「Plastic Fantastic Lover」での不思議なコード感を持たせるベースなど、好きな瞬間を色々見つけることができた。

曲順や曲調の配分が丁度良くて、聴いてて疲れないので、きっと長いことお世話になりそうなアルバムだと思った。これからももっと聴いて良さを味わっていきたい。

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