ブラジル音楽にハマったので最近よく聴くブラジルのアルバム10選

きっかけはというと去年の秋あたりか、だんだんと英米のサイケを掘り進めることにマンネリ感を覚えていた時にたまたま某中古CD屋にてLula Cortes周辺アーティストの曲をまとめたサイケコンピ「Psychedelic Pernambuco」を発見、ジャケ買いをしたところから始まった。

つまりブラジルサイケから入ったため今回選出したアルバムもサイケやトロピカリア関連のものが多く、偏りが多いがそれだけのめり込んだジャンルなのでこの記事を見た人がブラジル音楽というかブラジルサイケにハマってくれればと願う。正直どれも好きなアルバムなのでベスト10ではなく10選ということを踏まえてご覧ください。

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Os Mutantes/A Divina Comedia Ou Ando Meio Desligado

ブラジルサイケの中でもとくに有名なバンド「ムタンチス」の3枚目となるアルバム。ブラジルサイケにハマり始めたきっかけのうちの一つでもあるバンドなので特に気に入っている。

2枚目まではカバー曲も多く、特徴的だったトロピカリア的な煌びやかなストリングスアレンジやサウンドコラージュなどは控えめになりメンバー作曲の曲が多くなりバンドサウンドが中心の作風になっている。これがとてもバンドとしての強いノリを感じられてかっこよくなっているし、音が少なったからと言って地味な印象を感じさせない。曲としてはやはり1曲目の「Ando Meio Desligado」からの「Quem Tem Meso De Brincar De Amor」の二曲がとんでもなくかっこいい。最近特にヘビロテが止まらないアルバムである。

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Caetano Veloso/Caetano Veloso [1968]

トロピカリアの中心人物の一人にして今もなお活動をしているMPBの重要人物であるカエターノヴェローゾのソロとしては記念すべき1stとなったアルバム。

当時かなり影響を受けたというビートルズの「サージェントペパー」のサウンドの影響が色濃く見られる絢爛なオーケストラサウンドを中心に様々な楽器が使われており正にサイケでカラフルで、ジャケ通りの印象を受けたアルバムである。それでいてメロディはキャッチーな曲も多いのでとっつきやすく耳に残る。サイケのカラフルさとブラジル音楽の陽気さが最高にマッチした楽しい作品だ。

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Gal Costa/Gal

上述のカエターノは1stの前に「Domingo」というアルバムをガルコスタとのデュエットで発表していた。こちらはそのガルコスタのソロの2枚目となるアルバムで、混沌としたジャケが表すがごとくとても実験的でサイケな作風となっている。

1曲目の「Cinema Olympia」はカエターノが提供した曲であり、キャッチーなコーラスと高らかに歌うガルの歌声が特徴的だが、以降の曲は深くディレイがかかったボーカルやファズやワウなどを多用したギターなどサイケなアレンジやサウンドの曲が続くかなり実験的な内容。2曲目の「Tuareg」などインド音楽風なメロディの曲もあり、ムタンチスの1stと同じくらいかそれよりも上のサイケぶり。そのぶっ飛び度合いは英米の並みのサイケよりも上だと思う。

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Nara Leao/Dez Anos Depois

「ボサノバのミューズ」という異名もあるナラレオン。デビュー前こそボサノバを歌っていたそうだがデビュー時には当時のブラジル情勢に関心を持ち、プロテストソングなどを歌っていたが、10作目にしてようやく発表した純粋な弾き語りによるボサノバ作品。

ナラの政治活動がブラジル政府に目を付けられ、フランスのパリに亡命せざるを得なくなりそこで制作、録音された作品である。その背景を知って聴くと確かにブラジル的な陽気さよりもフランスやヨーロッパの曇りがちな、乾いた雰囲気すら感じる。収録された曲は「corcovado」「Garota De Ipanema(Girl From Ipanema)」「O Amor Em Paz(Once I Loved)」などボサノバのスタンダード曲を中心に24曲も収録されている。悲しげにも優しげにも聞こえるナラのボーカルとしっとりとしたギターやピアノの伴奏が優しく体に沁みる。中でも私が好きなのは悲しく切ないギターのフレーズが特徴的な「Sabia」。ジャケからの印象もあるが雨の日に家にこもって聴きたいアルバム。

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Antnio Carlos Jobim/Wave

ボサノバを作ったとも言われる最重要人物の一人アントニオカルロスジョビンが1967年に発表したボサノバの名盤。表題曲でもある「Wave」はタイトルを知らなくとも絶対にどこかで聴いたことがあるはず。

8曲目の「Lamento」以外はボーカルが無いインストの作品であり、全編を通して良い意味で力が抜けていて脱力感がある演奏が、聴いているこちらも段々力が抜けてリラックスできる。ボサノバらしいからっとしていて清涼感のある雰囲気は、正に夏に涼むために聴きたい。地味にジャケの赤いキリン(版によっては緑)も、よく考えるとブラジルらしくない(キリンの生息地はアフリカ)のにこのアルバムの雰囲気にすごい合っている気がして不思議だけど好き。

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Os Ipanemas/Os Ipanemas

Os Ipanemasというバンドが1964年に発表した唯一作。

内容はジャズ風味のボサノバだが、多彩なパーカッションや複雑なリズム、ノリを交えておりアフリカンな雰囲気も醸し出している不思議な作品。しかし、演奏の完成度は高く複雑で土着的なノリがとてもクセになる。それでいて「Clouds」や「Java」などでは爽やかでリラックスした演奏を魅せるなど多彩なアルバムでもある。作中で頻出するむさいコーラスもまた土着的な雰囲気があって好き。

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Tom Ze/Estudando O Samba

トンゼーもまたカエターノヴェローゾ、ガルコスタなどと同様トロピカリア関連のアーティストであるが、今作はトロピカリアムーヴメントも過ぎた1976年に発表されたアルバム。

「サンバ学習」という邦題が表す通り、サンバを再構築しミニマルなサウンドで展開されるかなり独特な内容となっている。1曲目の「Ma」ではリズムこそはサンバっぽいがゆっくりとしたテンポで仰々しいアレンジで展開され、もはやシュールな印象すらも感じる。変さも極まり、シュールに片足を突っ込んでいるかのような今作にはきっとサイケ好きも舌鼓を打つはず。

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Os Brazoes/Os Brazoes

ガルコスタやトンゼーなどトロピカリア関連のアーティストのバックバンドを務めた経験を持つブラジルサイケバンドの唯一作。

ファズやワウなど音を変えまくったギターなどサイケ的怪しさと、パーカッションの多用やラテン的なリズムなどワールド音楽に求める土着的な雰囲気をどちらも併せ持ったサイケ好きにはたまらない音楽性のバンドであり、怪しげなコーラスが更に呪術的な雰囲気に輪をかけている。しかし、メロディは結構耳に残るものも多くヤバさ満点のジャケの割に聴いてしまえば曲も短いものも多いので意外と聴きやすいアルバムでもある。

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Lula Cortes E Ze Ramalho/Paebiru

最初に私がハマったきっかけとして挙げたコンピ「Psychedelic Pernambuco」で主に取り上げられていたアーティストであり、コンピにも今作から3曲も収録されている。今作はルーラコルテスとゼ・ハマーリョというアーティスト二名による名義のアルバムで、コンセプトアルバムながら2枚組という膨大な内容の作品。

2枚組LPそれぞれのサイドが「土の章」「風の章」「火の章」「水の章」というタイトルがつけられており、コンセプトに沿った雰囲気の曲がそれぞれに収録されている。歌詞の内容はわからないがサウンドだけ聴いても例えば土の章ではベースやパーカッションなどのリズム隊が中心に出た重低音のあるアレンジ、火の章ではアップテンポの曲調でファズギターなどによる激しいサウンドなど確かにそれと連想させられるアレンジがされておりかなり完成度が高い。アコースティックかつ土着的な演奏で展開されているにも関わらずかなり大きなスケールを感じられるブラジルのアングラサイケの最高傑作と言えそうなくらいの貫禄がある名盤だ。

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Flaviola E O Bando Do Sol/Flaviola E O Bando Do Sol

上記のルーラコルテスが制作に携わっており、楽曲制作や演奏にも参加している作品であり、当バンドの唯一作でもある。その為Paebiruにやや雰囲気は似ているが、こちらはよりアコースティックな演奏となっており、メロディアスな曲が多いのでPaebiruが陽、昼間なら今作は深夜、森の奥深くを感じさせる作風になっている。低めで奥深い雰囲気のボーカルもあって短いながらも世界観に引き込まれる不思議なアルバム。聴いていると本当にジャングルの光も届かないくらい奥深くにいるかのような気分になる。

後にこちらの記事でもっと多めに良さを並べたので是非見ていただきたい。

まとめ

私がサイケに求めるものは高揚感、非現実感もそうだが「ヘンテコさ」「シュールさ」を求めているところがある。ブラジルサイケというのは英米のサイケにブラジル土着のサンバやラテン的なリズム、メロディが混ざり独特な雰囲気を持っているのでそこが私の琴線に触れたのかもしれない。そして、そこからサイケとは関係なしにボサノバもハマったので今回一部挙げている。普段あまり歌詞を重視しないで曲を聴いている私の聴き方もブラジルに対してそこまで抵抗感なく聴くことができた要因でもあるかもしれない。

ワールドミュージックというだけで妙な敷居の高さをおそらく多くの人は感じるかもしれないが、いったん聴いてさえしまえばそこは並みのサイケ作品では味わえない独特な作品、そして上記のような名盤たちを楽しむことができるので是非とも聴いてみてほしい。そして、もっとブラジルサイケやボサノバの名盤を教えていただきたい。私はまだまだここで発掘を進めています...。

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