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母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間【母乳が出ない!にならないために】

先日Twitterで質問を募集した時に、こんな声を複数の方からいただきました。

・母乳が出る仕組みをちゃんと知っていれば、出産直後から授乳したのに!
・「赤ちゃん預かってミルクあげときましょうか?それとも授乳します?」みたいに聞かれて、深く考えずに預けて後から後悔した!

そこで今回は、
「どうすれば母乳がたくさん作られるようになるの?」
という疑問にお答えします。

この疑問にお答えするためには、産後の体の中で各種のホルモン分泌がどう変化するか知っておくことが重要です。

「ホルモンが~」とか言い出すと、「難しくて無理無理無理!!」と拒否反応が出てしまう人が多いのはよく承知しています!

できるだけ分かりやすく、できるだけシンプルに解説しますので、最後までお付き合いくださいね。

【この記事で分かること】
①母乳の基礎量を決めるしくみ
②母乳の基礎量を増やすために必要な行動・支援

母乳の基礎量を決めるのは出産から約1週間

表現に多少語弊があるかもしれませんが、分かりやすく言うと、母乳の基礎量を決めるのは出産後最初の1週間程度です。

その理由は、出産によって激変するホルモンバランスにあります。

妊娠中に母乳がジャージャー出ない理由

⇧母乳の基礎量を決めるのに大事なホルモンの変化。水色のプロゲステロンに注目!

妊娠中に母乳が出る人もいますよね。

特に妊娠後期にお風呂に入って温まると、ジワ~っと出てくることがあります。(出なくてもまったく心配ないですよ)

でも、妊娠中から母乳がジャージャー出ることはまずありません。

それはなぜでしょう?

そのカギを握る正体は、「プロゲステロン」というホルモンです。

「プロゲステロン?はい!ムリ~!」と思わず、もうちょっとお付き合いください!
大丈夫、そんなに難しい話にはしませんから!

他にも母乳生産を抑制するホルモンはありますが、ここでは分かりやすくするために最も重要なカギを握るプロゲステロンの話だけします。

プロゲステロンの役割をざっくり説明するとこうなります。

【母乳分泌を抑制する「プロゲステロン」の役割】
①プロゲステロンは妊娠の維持に必要なホルモンなので、妊娠中ずっと高値が続く。
②プロゲステロンは、母乳を作り出す「プロラクチン」分泌を強力に押さえつける
③プロゲステロンは、プロラクチンを働かせるのに必要な受け皿「プロラクチン受容体」が発生するのを妨げる。

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つまり、妊娠中は妊娠継続に必要なプロゲステロンが体内でたくさん分泌されているために、妊娠中は母乳がジャージャー出ないんですね。

出産によって胎盤が体外に出ることで、母乳分泌のストッパーが一気に外れる!

⇧母乳の基礎量を決めるのに大事なホルモンの変化。水色のプロゲステロン&黒のhPLに注目!

母乳を作り出すホルモンの働きを強力に抑える「プロゲステロン」は、赤ちゃんが誕生して胎盤が体外に出ることで分泌が減ります

プロゲステロンは、胎盤がキレイに全部出ると、分娩後4日で1/10にまで減ります。

【補足】
反対に言えば、胎盤の一部が子宮内に残ったままの状態「胎盤遺残」があるとプロゲステロンが下がりにくくなるために、母乳をたくさん作り出しにくくなります。

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母乳を作り出す「プロラクチン」が作用するためには、上記グラフの黒のライン「hPL(ヒト胎盤性ラクトーゲン)」の低下もカギを握っています。

さぁ!胎盤が出て、母乳分泌のストッパーになるホルモンたちがいなくなりました!
ここから、出産した瞬間からが、母乳の基礎量を決めるのに重要な時期です!

母乳を作り出すホルモン「プロラクチン」濃度を下げないようにすることが大きなカギ!

胎盤が出たことで、プロゲステロン・hPLなど、母乳を作り出すのを阻害するホルモンたちがいなくなりました。

ただ残念なことに、母乳を作り出すのを阻害するホルモンたちがいなくなることだけでは、母乳がジャージャー出るようにはならないんです。
次にカギを握るのは「プロラクチン」というホルモンですよ~。

もし産後すぐから授乳・搾乳をしなかったら

上記グラフのオレンジラインに注目!

母乳を作り出す「プロラクチン」は、放っておくと出産と同時に一気に激減していきます。

つまり授乳や搾乳など、産後に乳頭への刺激をしなければプロラクチンは下降の一途をたどるんです。(なんだか理不尽ですけど!)

もし産後に一切授乳・搾乳をしなければ、分娩後7日までに妊娠していない時のレベルにまでプロラクチン値は低下してしまいます。

つまり、「入院中くらいはとにかく赤ちゃん預けてゆっくりして~」と思って授乳・搾乳をしないでいると、知らない内にプロラクチン値がどんどん下がって、母乳が作られない体になっていくんですね。

もし産後すぐから授乳・搾乳をしたら

今度は、上記グラフの緑のラインに注目!

乳頭への刺激がないと急激に下がっていくプロラクチンですが、産後すぐから頻繁に授乳・搾乳することで、プロラクチンの下降スピードを大幅に遅らせることができます。

授乳・搾乳している場合では、プロラクチン値は分娩後1週間で分娩直後の50%となります。

【まとめるとこう!】
・産後に授乳・搾乳しないままだと分娩後1週間で妊娠していない時のレベルに低下
・産後に授乳・搾乳すると、分娩後1週間で分娩直後の50%に低下

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つまり…産後すぐから授乳・搾乳するかどうかで、プロラクチン値にはざっくり2倍の差があることになりますね。

この2倍の差が、母乳の基礎量に非常に大きく影響してきます。 

母乳の基礎量を増やすために必要な行動・支援

ホルモンのお話しはここでおしまい!

「出産を機にホルモンバランスがこんな風に激変する」ということがお分かりいただけたでしょうか?

じゃあ、具体的にどうすれば母乳を作り出す「プロラクチン」を下げずに、母乳の基礎量を増やせるかについてまとめますね。

【母乳の基礎量をふやすために必要な行動・支援】
分娩台・手術台の上で出産後30-60分以内に授乳できるようバースプランに書いて手伝ってもらう。(手術室での授乳はできない病院が多いとは思います)
初回授乳の後も、赤ちゃんがほしがる度に頻繁に(少なくとも2~3時間毎に)授乳する。
③分娩当日から、昼夜を通して母児同室(赤ちゃんを新生児室に預けるのではなく、同じ病室内で過ごすこと)する。
④分娩当日から昼夜とも授乳する。
⑤頻回授乳実現のため、傷ができて痛くて授乳が辛くならないよう、赤ちゃんに深く吸い付いてもらう(最初は授乳の度にナースコール!)
⑥医学的に必要がない限り、お母さんが疲れすぎていない限り、ミルク・糖水等を足さない。(1~2時間毎の授乳も普通のことです。)
⑦帝王切開での出産で、病院の管理上、出産直後からの授乳が困難な場合。
手術室内で、あるいは手術室からの帰室直後から授乳や乳頭刺激の介助をしてもらう。
⑧帝王切開後、動けるようになるまでは授乳毎に赤ちゃんを病室に連れてきて授乳介助してもらう。

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これらのことを実行するためには、お母さん一人の努力だけではどうにもなりません。

スタッフの助けが必要です。

ただし、どの病院でもお母さんの希望の栄養法に沿って適切な授乳支援ができている訳ではないので、バースプランという形で病院側に自分の希望をはっきりと伝えておくことが重要だと思います。

まとめ

・母乳の基礎量を決める、分娩後最初の1週間程度のホルモンの動き
・母乳の基礎量を増やすために必要な行動・支援
についてまとめてきました。

母乳が作られる仕組みは、難しいことのように感じるかもしれません。

でもその仕組みをお母さん自身が知っておくことは、産後すぐから頻繁に授乳することの大きなモチベーションになると感じていますので、集中できる時にまた読み返していただけたらと思います。

ここまでは「母乳の基礎量を決める、産後約1週間」にフォーカスしてまとめました。

次は、母乳の基礎量が決まった後の母乳が作られる仕組みについて解説していきます。
→「産後9日目からの母乳量は「出した分だけ作る」になる【母乳が出なくなった!にならないために】

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