【不幸中の災い】 準探偵短編小説
割引あり
【不幸中の災い】
「如何したもんだろう?・・・・」
と冴えない顔の、皴が目立ち始めた安藤皓正73歳は、このところ考え込んでる。
こう云う呟きは、誰しも嬉しい時にはしないだろう。
『夢のマイホームを手に入れて、もう30年程だが、妻に先立たれて子供はないし、この土地建物を、如何すりゃ良いんだろうなぁ・・・・』
この思いがし始めたのは、仲の良かった友人達が、次々に逝き始めて、もう殆ど残ってないからでもある。
『あんなに元気だったのになぁ・・・・あいつも、脳溢血でアッという間だった・・・・』
と思えば、泣けても来るけれど、現実問題は差し迫ってるようにも思えた。
『誰かに相談するにも、誰が・・・・』
こう思いながら、狭い寝室を見廻してると、ふとパソコンが眼に留まる。
「そうか、こういう調べ物も、こいつでできるんじゃないか!」
と、元気を取り戻すと、近頃遣り始めたばかりのパソコンの前へ座った。
早速検索を始めたけれど、如何調べたものかサッパリ判らないのである。
「肝心な答えは、中々見付からんもんだ・・・・」
こう洩らしながら、時が経つのも忘れて遣り続けてると、リバースモーゲージと云う、聴き慣れない単語が目に留まった。
「なになに。自宅を担保にして、住み続けながら金融機関から融資を受けられる、主にシニア層向けの融資制度です。死んだら自宅を売って、その代金で融資の一括返済をする?
こいつは良い! 年金暮らしじゃ、心細くもあったし、この手で行こう!」
と、元気にはなったが・・・・
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