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 「企て」 スペキュラティブフィクション

割引あり

 「企て」

 「もう少し、時間があれば何とかなるんだ。・・・・・・・お前もっ! ボサッとしてないで、いい知恵を出せっ!」
と、悪徳政治家は、イライラしながら云った。
事務所の中は、政治家の不機嫌がギッシリ詰まってるようだ。
「証拠と、証人を消すしかないんじゃないですか?」
若い、鷹のような目をした秘書は、内心のウンザリを顔に出さないように云った。
自分でも、ひとつくらいはいい案を、スッと出してみてからにしてみろっ! と、云ってやりたい若い秘書。
『いつだって、自分の能力を自慢してるじゃないかっ!
その知恵は、僕が云ったのを後から、自分が考えたように云ってもだっ!』
こう、思ってもいる。
 「だから、時間が欲しいと云ってるだろっ! ━━━こうマスコミが張り付いてちゃ、動くに動けないじゃないかっ!
次の選挙も近いんだぞっ! それくらい、判らんのかバカ者っ!」
と云われて、ムッとはするが、いつもの事だから、自分を抑えながら秘書は云う。
「だったら、入院されたら如何ですっ? そうすれば、アナタ自身への追及は一時止まるでしょう。
その間に、僕が手を打ちますよ」
「それができりゃぁ、そうするさっ! たけど私ぁ頑丈な体なんだっ。院長を金で抱き込んだって、看護師もいりゃあ、他の医者だっておるだろっ!
仮病がバレてみろっ、痛くもない腹まで探られるじゃないかっ! ━━━入院して、同情された奴ぁ、今までおらんのだぞっ!」
こう、年老いたトドのような顔の、目くじらを立ててる。

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