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『学校では教えてくれない生活保護』雨宮処凛|読書記録 11

読書記録11冊目は『学校では教えてくれない生活保護』だ。
生活保護は私の人生にとって身近な存在ではないと感じていた。
どうにも困ってしまったときに救ってくれるサービスが世の中にはあるんだよな、程度の認識だった。

しかし、この本を読んで、生活保護の現状の良さ、問題点も知ることができた。

生活保護はこの社会で生きていく一人の人間として知っておくべき制度であり、また特権的な立場にいる自分が知る責任のあることだと思った。

本作は、生活保護の現状、弁護士による実際の利用法の解説、韓国やドイツの生活保護に値する制度との比較検討、生活保護の今までとこれからについて、14歳でもわかるように解説されている。

ここでは私が生活保護について知る上で特に印象的だったこと5点を残しておきたい。

①外国人に対する冷遇
現在の生活保護は一部の在留資格保持者を除き外国人を対象としていない。
技能実習生や留学生、失職した外国人にも認めないのだ。
日本の中で差別的な対応を受け、言語の壁もあり、苦しい思いをされていてもなお、制度すら見放すならば、どこに希望はあるのだろう、と思ってしまう。

②1990年代のホームレスの方の待遇
1995年に大阪では路上で亡くなる人が2000人いたらしい。
「路上でなくなる」って日本でもあったんだ、あるんだ、と思った。
ホームレスへの差別は1990年前後は根強く、ホームレスは生活保護の対象ではないと、役所で突き放されることが頻発していたらしい。(水際作戦)
住まいがなくて困っている人を生活保護が救えなくて、何が救えるというのか。
今はもちろんそんな対応はされないはず。

③北九州市:生活保護受給者が少ないことを実績としたせいで‥
財源だけ考えれば確かに生活保護の受給者が少ないことは喜ばしいことかもしれない。
以前北九州市が生活保護受給者が少ないモデル市として厚労省の官僚も出向になるほどのことがあり、そのせいで生活保護受給数を少なくすることが目標とされたことがあったらしい。そのせいで、受けるべき人が受けられず、問題が多発したらしい。
何を目標とするか見誤ってはならないなと思う。
生活保護を受ける水準にいる人を減らすための施策をするべきなのは確かだと思うが、生活保護をうける人を減らす施策は問題しか生まない。

④韓国の事例:単給について
韓国では生活保護を一律の水準としない。
教育・医療・家賃・生活でそれぞれ受給の基準を設けて、それに当てはまった場合は支給するという形だ。
メリットは、一律のため生活保護水準とそうでない世帯の間くらいにいる人たちを救えること、生活保護から段階的に抜けるということができることらしい。
この本ではよい事例として取り上げられていた。
ここはさらに勉強せねばいけないと思っているところだが、、
日本でも児童手当、児童扶養手当、住宅補助給付、医療費一部免除、などなど段階的に制度が設けられているはずだ。
これと韓国の制度は何が違うのか。むしろ、日本の方が生活保護にプラスαで上記の制度があるから、日本の方がよいのでは?と思ってしまった。
勉強したいと思うところである。

⑤生活保護をうけることは権利である
最後にやはり生活保護をうけることはすべての人の権利であることを確認しておきたいと思った。
この本自体データの使い方に?と思う部分はあったが、とはいえ生活保護をうけるべき水準にもかかわらず、それに抵抗感を覚えたり、また窓口で追い返されたりしている人がいる。
誰もが一定水準以上の生活を保障された社会で生きたいと私は思う。

最後に、自分が生活保護を知る中で知っておきたいと思うのは、一度生活保護をうけた人はそこからどれくらいの割合が生活保護の水準から抜けるのか、またその後の生活はどうなっているのか、ということである。
活動的に生きることのために、果たして生活保護はどれくらい人をサポートするのだろうか、ここは自分なりの仮説を持っておきたい。



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