私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション10『入り(いり)』





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(作者駐:以下は執筆前日に書いた日記より抜粋)
 今回の「入り(いり)」ですが、この言葉、単独ではあまり使われませんよね。大抵は『入り〇〇』って後ろに何か付け足すことが多い気がします。
 そこで今回は、こんなお題を自分で設定して書いてみることにしました。

以下に列挙する『入り~』という言葉を全て使用し、ショートショートを作成せよ。
 入会(ある地域の住民が一定の場所を共同で利用し、共同で利益を得る事)
 入り相(夕刻のこと)
 入り海
 入り江
 入り口
 入り組む
 入り込む(無理やり入り込む、もぐりこむ)
 入り日(夕日のこと)
 入り浸る
 入り混じる
 入り乱れる
 入り婿

さてさて、どうなりますことやら。


セレクション10『入り(いり)』


入り相も深まった頃、入り日に染まった入り江にある洞窟の入り口に、そこにはかなり不釣り合いの不良学生達がいた。
本来なら立入禁止のこの場所に彼らのリーダーが入り込んだことから、なし崩し的に彼らが入り浸るようになり、今では彼らの根城となっているのだ。

今そこに、隣町の不良学生達が強襲をかけてきた。
狭い洞窟に総勢20名程度の不良が入り乱れ、洞窟内は怒号とうめき声が反響して入り混じり、辺りは凄惨な地獄絵図と化していた。

そこに現れる、新たな勢力。
ただでさえ入り組んだこのタイミングに登場したのは、3人の女性であった。

「あなた!いつまでこんな所で遊んでるんですか!」
「ゆ、ゆきえ?!」

中央の女性の怒号に、地元の不良学生達のリーダーが反応し、直立不動のまま硬直した。

「この辺りの入り江や入り海は、わが相場家が可哀相な土地の方の為に、わざわざ入会として使わせてあげている場所じゃないの!だいたい、入り婿でアラフォーの癖に何の役にも立たないから、やむなく専門学校に押し込められたくせに、遊びほうけているとは言語道断!さあ、帰って家事を終わらせなさい!」

一気にまくし立てながらリーダーを引きずって去って行く女性たちを、不良(専門)学生達は呆気に取られて見ているしかなかった。



『入り(いーり)』
 1 外から、ある場所や社会などにはいること。「仲間―」「楽屋―」
 2 ある物の中にはいっていること。また、その分量やはいりぐあい。「客の―がいい」「ユズ―豆腐」
 3 日や月がしずむこと。「日の―」
 4 (「要り」とも書く)入用。入費。かかり。「物―」
 5 収入。あがり。みいり。「―が少ない」「―のいい仕事」
 6 ある時期・期間などにはいる最初の日。はじまり。「彼岸の―」「土用の―」

(大辞林より引用)

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