私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション63『葛(くず)』


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セレクション63『葛(くず)』(300文字)


                                                                                                           

できた。
私は目の前の水を浸した器に浮かんだ5個の餅を見て、にんまりと笑う。
「お、良いじゃない。金魚にしたのね。つぶ餡が川の底みたいよ」
背後から高見先生が覗き込み褒めてくれたので、私は更に嬉しくなる。
「すげ、やるじゃん須藤」
先生の声に反応したのか、隣で作業していた純也が手を止めて覗き込んでくる。
「やだ顔近いって。そっちは?」
「まかせろ、ほら」
純也は自慢げに言うと、自分の器を私の方にスライドする。
中にはやはり餅が5個。
それぞれの中には練り切りで作ったバットやボールが入っていた。
「へえ、こし餡がグラウンドなんだ。やるじゃん」
私が思ったまま口にすると、純也が少年のように、歯を見せてにんまり笑った。


(300文字)

『葛(くーず)』
 マメ科の蔓性(つるせい)の多年草。山野に生え、茎は長さ10メートル以上に伸びる。葉は先のとがった楕円形の小葉3枚からなる複葉で、大きい。秋、紫赤色の花が集まって咲く。肥大している根は葛根といい薬用、また葛粉をとる。秋の七草の一。《季 秋》「あなたなる夜雨の―のあなたかな/不器男」

(大辞林より引用)

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