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私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション47『彼(かれ)』

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セレクション47『彼(かれ)』



                                                                    

『……で、まだ彼から連絡無いの?』
受話器から聴こえてくる明美の呆れ声に、私は「うん」と苦笑いしながら電話越しに頷く。
彼が突然証券会社を辞めて世界中の仏像巡りに出発したのが、一年前の夏の事。
『ちゃんと連絡するから』
と出発前にした約束も、最初の国から既に破られていた。
『全くあんたはみうらじゅんか、っての。ハナもさっさと別のに乗り換えたら?』
明美の呆れ声に「ううん」と笑って首を振る私。
「ブログでは人気者なのよ、彼。最近の仏像ブームに乗って、本も出すみたい。だから私も鼻が高くって」
『あのさあ……まあ、良いわ』 


私が何か変な事を言ったのだろうか。
明美は諦めたように言うと、電話越しに大きなため息を吐いた。


(299文字)

『彼(かーれ)』
 [代]
  1 男性をさす三人称の人代名詞。あの男。西欧語の三人称男性代名詞の訳語。「―は君の弟かい」⇔彼女。
  2 三人称の人代名詞。明治時代まで男女の区別なく用いた。あの人。あれ。
   「余はエリスを忘れざりき、否、―は日毎に書(ふみ)を寄せしかばえ忘れざりき」〈鴎外・舞姫〉
  3 二人称の人代名詞。あなた。おまえ。
   「―は、なむぞの人ぞ」〈宇津保・俊蔭〉
  4 遠称の指示代名詞。あの物。あれ。
   「吾(あ)が思(も)ふ君がみ船かも―」〈万・四〇四五〉
 [名]
  恋人である男性。彼氏。「―ができる」⇔彼女。

(大辞林より引用)

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