私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション46『殻(から)』


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セレクション46『殻(から)』


                                                                    

こんな夢を観た。




夢の中で私は卵の中に居た。

私は眼を開いて辺りを見回すが、丈夫なに覆われているからか、光が無く何も見えない。
外の様子を聴こうと思っても、生温いどろっ、とした液体が、卵の中全てを、私の口から身体の内部だけではなく鼓膜まで液体が入り込んでいて何も聴こえない。
液体に沈んでいるので方向感覚も失っている。
感じるのは、その羊水のような液体の心地好さだけ。
狭い卵の中で小さく丸まっている私の全てを優しく包んでくれているような感覚に捕われ、強烈な眠気とともに、全身の力が抜けていくのを感じた。






眼が覚めた時、もしや、と自分のお腹にそっと触れてみたが、 





ただのおじさんの脂肪腹がぷるん、と揺れただけだった。


(296文字)



『殻(かーら)』
《「空(から)」と同語源》
 1 動物のからだや植物の実・種子をおおう堅いもの。「卵の―」
 2 動物や昆虫が脱皮したあとの外皮。ぬけがら。「セミの―」「もぬけの―」
 3 主要な部分や中身がなくなって用済みになったもの。「弁当の―」「茶―(ちゃがら)」
 4 外界から自己を守る外壁。その外壁に守られた世界。「―に閉じこもる」「古い―を打ち破る」
 5 「おから」に同じ。
 6 (骸)魂のぬけたからだ。なきがら。
 「―は気疎(けうと)き山の中に納めて」〈徒然・三〇〉

(大辞林より引用)

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