私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション26『落ち(おち)』




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セレクション26『落ち(おち)』


                                                                                                                                         

「……でね、あいつがさ、そこで何て言ったと思う?」
美紀がそこで一旦話を区切り、試すような目で私を見つめてきた。
(またどうせ下らない落ちなんでしょうに)
私は心の中で大きな溜息を吐いた。
「うーん、わかんないなあ」
と応えた私に美紀は満足げな笑みを見せ、
「『ごめん、美紀に見取れてて見てなかった』だって~!どんだけ綺麗なのよ、私」

何だよ、のろけかよ。

友人達が美紀にきゃいきゃい言うのに苦笑しながら応え、手元の珈琲を口に含む。
冷えきってまずくなった珈琲が、この場の雰囲気にとても良く似合っていて、私は思わず笑い出した。


(254文字)


『落ち(おーち)』
 1 落ちること。
  ㋐地位や階級などが下がること。「十両―」
  ㋑付着していたものが取れること。「―のいい洗剤」
 2 抜けること。
  ㋐あるべきものが入っていないこと。漏れ。「招待客のリストに―がある」
  ㋑怠って、するべきことをしないでおくこと。おちど。手落ち。「手続きに―がある」
 3 行き着くところ。結末。
  ㋐落語などで、しゃれや語呂合わせなどで話の終わりを締めくくる部分。下げ。また、一般に、話の効果的な結末。「この話には―がついている」
  ㋑物事について予想されるよくない成り行き。「断られるのが―だ」
 4 多く複合語の形で用い、ひそかに逃亡する意を表す。「―武者」「都―」
 5 魚が、産卵や冬ごもりなどのために、川の上流から下流へ、または浅い所から深い所へ移動すること。「―鮎」
 6 謡曲で、声調を下げること。また、その部分。
 7 品質が劣ること。また、劣るもの。
  「こいらが―だけれど、これをおめえに買へてったら高々三文だらう」〈滑・浮世風呂・四〉

(大辞林より引用)

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