私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション94『齣(こま)』
作者駐:
『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション94『齣(こま)』(381文字)
「――いやだからさ、『製図』は2齣使うから、この『文化人類学』は取れないんだって」
隆明がテーブルに並べた紙を指差しながら反対側に座る早瀬に指摘すると、早瀬は口を尖らせながら紙を覗き込んだ。
「いやでもよ、『文化人類学』ってただ出てるだけで単位くれるってんぜ。取っとかなきゃ損じゃね?」
「早瀬、お前は俺の話を聞いてたか?授業は齣を被らせて取ることは出来ないんだ、ってさっき言ったよな?」
隆明のドスの利いた声に、じ、冗談だよ冗談、と早瀬は慌ててごまかすが、目が納得してない。
「だいたいお前は『時間貧乏性』にもほどがあんだよ。お前以外に『3時間目空いたからバイト行ってくる』って片道30分かかるバイト先に向かう馬鹿を、俺は見たことねえぞ」
呆れ声で畳み掛ける隆明に口を尖らせる早瀬。
「だってもったいないじゃん」
彼の答えに、私と隆明は顔を見合わせると、深々とため息をついた。
(381文字)
『齣(こーま)』
《区切りの意。もとは中国の戯曲で一段(幕)をさす字》
1 演劇・映画・小説などのひと区切り・一場面。「四―漫画」→齣(せき)
2 物語や事件の中の一場面。「忘れられないひと―」
3 映画のフィルムの一画面。現在は、1秒間に24齣動く。
4 講義もしくは指導に当たる回数。学校、特に大学で、2時間前後を一単位として1週間の時間表を作った場合のひと区切りなど。「週に五―持つ」
(大辞林より引用)
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