私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション92『粉(こな)』
作者駐:
『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション92『粉(こな)』(442文字)
「ああもう、これ、粉の量足りなくない?」
私がボウルに入っているお好み焼きの材料を混ぜながら文句を言うと、向かいに座る羽山くんがそうですか?と笑顔で返してきた。
「なんでしたら、僕が混ぜますよ、チーフ」
彼の言葉にかちん、と来る私。
「いいよ、『チーフ』は自分でやるから」
私がやや強めの口調で返すと、彼は苦笑いしつつ、混ぜ終わったボウルを置いて鉄板に手をかざす。
「そろそろ良さそうですよ」
そう言ってボウルの具を鉄板に手際よく敷いていく彼に習って、私も同じように拡げていく。
「ああほら先輩、エビが跳びましたよ」
あたふたとボウルの中味を掻き出す私に、彼の楽しそうなツッコミが飛ぶ。
「分かってるわよ、もう」
私は口を尖らせながら円く敷いた具材から逸れたエビを箸でつまもうとして、――ふと、少し前までの自分もこんな感じだったな、などと言う思いにとらわれた。
「どうかしました?」
手が止まった私に不思議そうに問いかけてくる彼。
私は自嘲の笑みを浮かべながらエビをつまみ上げ、何でもない、と応えて具材の上に乗せた。
(442文字)
『粉(こーな)』
1 砕けて細かくなったもの。粉末。「木炭の―」
2 米や麦、ソバなどをひいて細かくしたもの。特に、小麦粉。「―をまぶす」
粉をかける
女性を口説こうと、気軽に声をかけてみる。「ちょっと―・けてみる」
(大辞林より引用)
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